「タイトルなし」侍タイムスリッパー えみりさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
地味だし、役者は下手だし、華もないし、でも、ラストシーンは良かった。これまでのタイムスリップものをひっくり返す哲学的ストーリー。無念に歴史の中で亡くなっていった敗者たちの想いを吸い上げる話。会津の人たちがどれだけ残虐な仕打ちを敗戦後受けたか、武士として生きてきた自分は、単に生計のために生きるだけではなく、無念を新政府方への、自分の生きてきた倫理に沿えば、真剣で勝負を望むのが人として本当に生きる道なのだということを表現した。その点で胸を打つ。だからこそ、その気持ちこそがわかる相手も真剣で臨み、殺されることを望んだのだ。そして、その地点で、今の時代を行き直そうと決心する。何と倫理的な映画なのかと思う。日ノ本はこんなに豊かな国になったのかと涙するシーン。侍の精神は、野蛮だと思われようと、今よりずっと倫理的だったのだということを思わせる。そして、この2人の秘密を他の人達は最後まで知らないのもよい。そこには、時代劇を好きな人たちがいて、二重の世界が構成されているのもいい。
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