劇場公開日 2024年8月17日

「映画への情熱に溢れている、上級の自主映画。」侍タイムスリッパー kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映画への情熱に溢れている、上級の自主映画。

2024年9月23日
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鑑賞方法:映画館

『SFソードキル』みたいにはならないだろと思ってはいたが、太秦の撮影所が舞台となる時代劇愛の物語だったとは、意表を突かれた(予備知識ゼロだったので)。

手作り感満載の小品で、主演の山口馬木也と冨家ノリマサのほかは撮影所長役の井上肇くらいしか見覚えがない役者たち。その主演二人でさえ、脇役か2時間サスペンスの犯人役などが定位置の俳優だ。
普段は主演俳優たちを脇で盛り立てている実力派俳優を真ん中に据えてスポットを当てられるのも、自主制作映画の存在意義なのかもしれない。出演した俳優の側も心意気を映画ファンに示す良い舞台になるのだと感じた。

安田淳一監督の未来映画社作品は、話題は耳にしていたものの観たことはなかった。本作が拡大ロードショー公開されたのは過去作品の評価が高かったからなのだろう。

エンドロールで監督以下のスタッフがいろんな役割を兼務して少人数で制作したことが判り、作品の主題が映画作りの現場にあったことと合わさって、初めてエンドロールで感動した映画となった。
特に、ヒロインを演じた沙倉ゆうのはスタッフロールで何度名前が出てきたか…。

ストーリーは〝アイディア勝負〟の面が強く、下手をすると楽屋オチで空回りしてしまいそうだが、関西の達者な俳優たちが器用に回してくれて、上手く作品としてまとめられていた。
侍がすんなり斬られ役にはまっていくのも、真剣で殺陣を演ろうというのも無理矢理な展開だが、主演二人が力でねじ伏せた感じだ。

殺陣師役の峰蘭太郎が山口馬木也に殺陣の稽古をつける場面が一番笑えた。今まで見てきたどれよりもシックリくる「なんでやねん!」だった。

kazz