「殺陣の迫力を堪能」侍タイムスリッパー 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
殺陣の迫力を堪能
侍が現代(と言っても15年以上前みたいですが)にタイムスリップするという、ありがちなストーリーでしたが、実に面白い作品でした。これまで数多擦られ続けてきたテーマでこれほど面白い仕上がりになったのは、侍がタイムスリップした場所が京都の時代劇撮影所だったという建付けの新鮮さをはじめ、タイムスリップしたのが会津藩士の主人公・高坂だけでなく、会津藩の宿敵長州藩士だった風見もタイムスリップしており、しかも30年のタイムラグがあったこと、幕末時代の敵同士という関係性が、物語の最後になって綺麗に清算されることと言ったメインストーリーの秀逸なところにあったのは言うまでもありません。
でも何と言っても素晴らしかったのが、高坂を演じた山口馬木也と、風見を演じた冨家ノリマサの二人の演技、特に迫真の殺陣シーンが凄かったことに収斂すると思います。通常の殺陣は、当たり前ですが真剣を使いませんが、最後の殺陣では真剣を使うという流れに。勿論実際の撮影で真剣を使うことはなかったでしょうが、本当に真剣で切り合いをしているかのような大迫力で、しかもその結末の見事さには、痺れました。
また殺陣シーン以外でも、高坂新左衛門という侍の泥臭さ、田舎臭さ、実直さなど、山口馬木也の演技のリアリティが凄すぎて、本当に素晴らしかったです。テレビ時代劇の「剣客商売」に出演していた当時の山口は、主演の藤田まことの息子役ということもあって”好青年”という役回りでしたが、年を重ねて一層侍らしい武骨さを全身から醸し出す存在になっており、今後も時代劇で活躍して欲しいと感じずにいられませんでした。
ちょっと気になったのは、本作の舞台が2024年ではなく、2010年代ですらなく、2000年代だったこと。これは中盤で「幕末から140年」というポスターが写されたことから分かりましたが、何でその時代設定にしたのか不思議でした。またこの時代設定にしたことを強調したかったのか、高坂が入院した病院の看護師がナースキャップを被っていたこと。最近は不潔だからというような理由で殆どの病院で廃止されたナースキャップでしたが、2000年代にはまだ残っていたのかと思ったところ。でも個人的なイメージでは、ナースキャップは1980年代くらいまでじゃないのかなと、本筋とは全くことなるところが気になったところでした。
ナースキャップの話は疑問ですが、ストーリーや役者陣の活躍が素晴らしかった本作の評価は★4.5とします。
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私、10年程前から、キネマ旬報、kinenote、yahoo検索などに映画レビューを投稿しています。現在の目標は2回目のキネマ旬報採用です。こちらのサイトには2022年2月に登録しました。最近、100共感以上のレビュー件数が12件に達しました。
宜しくお願いします。
本作、インディーズ作品とは思えないクオリティーの高さでした。
本作の脚本を読んだ大手映画会社が格安で京都にある時代劇撮影所を貸してくれたのも納得できる出来映えの作品でした。
ラストの殺陣が始まる前の長い睨み合いは、黒澤明監督の椿三十郎を思い出しました。全編、時代劇愛に溢れた時代劇ファンには堪らない作品でした。
では、また共感作で
ー以上ー