劇場公開日 2024年8月17日

「起承転結の転がおもしろすぎる」侍タイムスリッパー 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5起承転結の転がおもしろすぎる

2024年9月10日
iPhoneアプリから投稿

画作りについて は、
緻密なレイヤー分けをしているのかのように、
時代と現代がフレーム内で鮮やかに対比されている。

例えば、伝統的な建物のフレームの中に、
ピンクや緑の公衆電話が置かれたり、
時代劇の街並みで殺陣師のジーパンが唯一の現代の物、
かと思えば、
現代の家の食卓ではちょんまげが唯一の時代の物、

両側に建物、建具を配置するのは小津安二郎のフレーミングのようでもある。

手前に格子、
全体にグリッド線の意識、
パースの構成、

この一見すると不釣り合い、
あるいは一定の法則に基づいた組み合わせが、
観客の視点を誘導し、
登場人物のセリフに気持ちにシンクロしていき、
なおかつ、タイムスリップという、
物語の世界観を豊かにしている。

加えて、

主人公が自身の姿勢や襟を正したりする姿や、
些細な動作が、

異質な世界の中で懸命に生きようとする彼の心の揺れ動きを静かに表現しており、
観る者の心をじわじわと掴んでいく。

音楽も手でたたくボンゴやジャンベのような、南米やアフリカのような、
遥か地球の裏側の雰囲気と、

太鼓を太いばちで叩くような純和風の雰囲気とか、
細かくシークエンスによって使い分けられていた。

精密に計算された制作作業である。

精密で膨大なアイデアを具現化するためには、
キャストやスタッフとの綿密な打ち合わせと、
リハーサルと準備と試行錯誤が不可欠だ。

その綿密な全カットは、1枚1枚が丁寧に作り込まれており、
その凄さを全カット説明したい気にさせるが、
百聞は一見にしかず、ぜひ劇場で。

余計なお世話だが、
海外向けの英題は、すでに決定しているのだろうか。

ちなみに「蒲田行進曲」の英題が「フォールガイ」だったように、

「ラストサムライ」とか、
「サムライダンディー」
画作りと異世界に飛ばされるので「OZ」とか・・・

色々と勝手に考えたくなる作品だ。

蛇足軒妖瀬布