ラストマイルのレビュー・感想・評価
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ある意味で「ショッキング」な作品に感じた
エンドロールが終わった瞬間、「くらったな」と思った。
体の力がすべて抜けた気がした。足元がふらつきながら映画館を出たのは久しぶりだった。
物流問題・過労・利益重視の企業・尽きない(煽られる)人の欲望などなど…。
これらは現代社会に「現実」で起こっていることである。
改めて、そう真正面から突きつけられた気がした。
野木先生の脚本らしく、誠実で希望を残すような展開で、もちろんうるっときたシーンもたくさんあった。
だからといって本作を感動作という枠に入れていいのかというと、私は首をかしげてしまう。ある意味で、ショッキングな作品だと感じた。
この瞬間も、どこかで誰かが「ラストマイル」を走っている。
全てはお客様の為に。淀みの無い金句であれ
TBS系列で2018年に放送されたTVドラマ『アンナチュラル』と2020年に放送された『MIU404』の“シェアード・ユニバース”。
今映画界で流行りのユニバースが、遂に日本のTV界にも。
つくづく、色んなユニバースがある。
『アンナチュラル』と『MIU404』は実は見ていない。
では何故、このユニバース映画を観ようと思ったか…?
予想以上に大ヒットしている話題作だから…じゃなくて、映画の内容。物流/宅配業界を描いているとか。
もうズバリ、私はその仕事をしている。
ドラマファンやキャストファンや主題歌担当の米津ファンの声の他に、宅配業者への声も。
それらに興味惹かれて、劇場へ。未見のTVドラマの劇場版を劇場で観るのは初めてかもしれない。
11月。物流業界最大のイベント、ブラックフライデー。その前夜…。
宅配荷物が爆発する事件が発生。それは一度のみならず、皮切りに連続発生。
荷物はいずれも関東最大の物流倉庫から出荷されたもの。爆発したのはいずれも世界的ショッピングサイト“DAILY FAST”の商品。
狙った計画的な犯行か、一体どうやって爆弾は仕掛けられた…?
新任のセンター長・舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔と共に対応に当たるが…。
エレナに満島ひかり、孔に岡田将生。てっきりTVドラマからの続投と思いきや、映画本作の新たなキャラ。
事件を捜査する刑事コンビとして、『アンナチュラル』から大倉孝二、『MIU404』から酒向芳が登場。
さらに、『MIU404』から綾野剛&星野源、『アンナチュラル』から石原さとみや井浦新ら主演の面々も登場。ドラマファンならワクワク必至。
両TVドラマからの地続きで、両ドラマのキャラが交錯して話が進むのではなく、あくまで映画オリジナルと新キャラがメインで、そこに両ドラマがサブ的にクロス。
もっと両ドラマのキャラが活躍する話が見たかった…というファンも多いだろうが、未見の者としてはこれが良かった。
映画オリジナルとしてすんなり。両ドラマのキャラが登場してもさほど困惑する事なく。
彼らは“捜査”。映画はエレナと孔を主軸に、危機が生じても止める事が出来ない物流業界の内部に迫る…。
日々フル稼働の物流業界。
それが止まるなんてあり得ない。
もし、止まったら…?
そこに“危険”が仕掛けられたら…?
私は劇中で言う所の末端。火野と宇野の“Wショウヘイ”と同じ宅配ドライバー。もっと正確に言うと、二人は委託で私は正規だけど、やってる事はほぼ同じ。
自分が配達した荷物が爆発したら?…と思うとゾッとする。
それでも止まらない物流業界。例え一日…いや、ほんの一時でも大問題。大損失。お客のニーズもある。
今はネットで何もかも。ポチっと一つで楽々に荷物が届く…と思われている。
しかし実際は…。その“楽々さ”が積み重なったら…?
本元のショッピングサイトにとっては一つでも利益。多くのお客様が利用してくれたら大きな利益。だからどんどんどんどん沢山沢山、ご利用を。
大変なのはその下。物流倉庫で莫大な量の荷物が動く。
全国の配送センターに分けられ、実際に配達する側。これも一日かなりの数。
劇中のWショウヘイは委託なので、配達する個数によって稼ぎが決まる。一日100個でも大したもの。200個なんて…。関東と私東北の違いか…?
私も日によって変動あるが、一日平均は100個以上。つい先日の160個は堪えた…。配達だけじゃなく、荷物を預かる集荷もある。それも合わせると、200個は超える。
それくらいやれば一日の生産性はいい方。
でも、表面上の数と実際の労力は違う。デカ重荷物3個と書類10個ではどちらが大変か。
加えて、時間指定や不在。時間指定して不在だった時のガッカリ感と言ったら…。
アマ○ンとかショッピングサイトを利用する人は不在が多い。利用するのはいい。なら、確実に受け取れる日時や不在なら置き配とか指定して! こちらは不在が分かっていても必ず伺わなきゃいけない。毎日毎日…。
会社がそういうデータを見ているから。会社はデータ上の数しか見ていない。多い数字はいい、少ない数字は悪い。
だけど一日一日の荷物の個数なんて分かりゃしない。思わぬイレギュラーだって発生する。それでも会社は表面上の数字だけ。
お客のニーズより、会社のいちいち細かい徹底管理こそ時々うんざりしてくる。
以上が、実際現場で働いている者の声です。愚痴とも悲痛な願いとも思って貰って結構です。
話の核心部分もそれに近い。
5年前にセンター内で起きた転落事故。
深掘りしていくと、どうやら事故でも事件でもなく…。
その男がロッカーに書いた謎の数字。それは…。
ブラックフライデーが怖い…という台詞があったが、私も全く同じ。期間セールや夏と冬の繁忙期という言葉を聞くと、気持ちがどんよりしてくる。殺人か過労死レベルの忙しさ…。
Wショウヘイが語っていた伝説のドライバー。一日200個配達という記録の一方、昼食事の時間は僅か10分。それ故に…。
一応私の現場では昼休憩は1時間絶対取るように決められているが、その間も配達や集荷の問い合わせが来たりする。さほど気は休まない。
これが、現状。
時々過剰とも思える仕事量。会社からのノルマ。
ボーナスはいいが、基本給は上がらず。
利便性が良くなり、ニーズが増える。荷物が増える。仕事量も増える。
比例するのは超過時間くらいで、反比例するように働く側も辞めていく。ドライバーも減っていく。
渦中の2024年問題。考えれば考えるほど、悪循環。
何か解決策や打開策は無いのか…?
会社や企業は全く当てにならないが、タイムリーな今年に本作が公開された事は、微力でも意義ある。
何かのきっかけになったら…。
映画は配達する側メインではなく(配達の苦しい現状を描いた作品ならケン・ローチ監督『家族を想うとき』がある)、中間ポジションの物流倉庫。
本元の大企業からのお達し。いやズバリ、問答無用のああしろこうしろの命令。
実際配達する側からの声。
板挟みの中間管理職。
そのあれやこれやを巧みに描いていると思う。
物流業界、ネット社会、過剰労働への問題提起。
それと巧く絡めたスリリングなエンタメ・サスペンス。
犯人や動機は…? エレナが何か関与していると思わせて、意外な人物。“代わっての復讐”と言うべきか…。
爆弾仕掛けも内部に精通し、ネットショッピングの盲点を知らないと。目から鱗だった。
データや情報からの犯人特定の鮮やかさ。こういう時は役に立つ。
両ドラマからのリンク。スピーディーでテンポ良く。野木亜紀子の脚本の巧さが光る。
満島ひかりの快演。岡田将生の好演。ディーン・フジオカの憎演。ドラマキャストも含めた豪華アンサンブル。
全てはお客様の為に。
素晴らしい金句だが、魔力の籠った禁句でもある。
お客様の為に企業や会社は無理難題を。
お客様の為に物流は一時も止まらず動く。
お客様の留まる事を知らぬ物欲の為に。
それで社会が回り、金も流れている訳だが、過剰になり過ぎたそれが何を引き起こすか…?
警鐘を鳴らす。
私もこの仕事をして気付けば10年以上。
不満やうんざりや疲労は常にのし掛かる。
その一方、10年以上も続けられてきたのは、不満を抱えながらもやりがいや達成感や充実感も感じているからかもしれない。
ありがとう。ご苦労様。
その一言の為に。それこそ、お客様の為に。
ハッと身につまされ、気付かされ、考えさせられ、改めて実感もさせてくれた。
見て良かった。
そんなに説教くさくはない
宅配業の方、いつもありがとうございます。
面白いが心が痛い
正直期待値低かったけど観た事後悔させないぐらい面白かった!
時間の都合で、これしか観れなかったから見た…ってテンションだったけどめっちゃ面白かった!
設定フィクションだけど、まんまAmazon。笑
子供生まれてから…子供が巻き込まれたかもと思われる描写は本当にきつい…最後とか多分助かるとはおもってたけど、爆発するまで怖かった。
ちょこちょこ本作イメージに全く合わないキャラクター達が出てきたけどTBSの他ドラマからのゲスト出演ってことにエンドロールで気づいた。
ミスリードも上手くて満足!
豪華キャスト
-_-b 外資系にいた時を思い出しました。
余韻冷めやらず
凄くいい作品です!
以前、大手の物流センターでオーダーされた荷物を箱に入れるバイトをしていたことがある。
私物を持ち込めない現場でどうやって荷物の中に爆弾を入れることができるんだろう?しかも、誰がこの荷物を詰めたか、なんてことはすぐわかってしまうのでどう成立させるのか、とても興味があったのですが、実際観てみるその内容 はペーペーのバイトがパッと思いついてできるような単純な仕組みではありませんでした…。
確かにそんな薄っぺらい方法だったら、この作品の根幹にある、念の深さと決意の重さが変わってきてしまいます。
作品が始まってから終わるまで約2時間、最後の最後までグッとストーリーに胸倉を鷲掴みされ続け揺さぶられました。
物流センターを舞台にした作品なんて地味じゃない?なんて思ってましたがとんでもない、最初から引き込まれっぱなしです。
まず、満島ひかりさんがいい。
凄くいい。
よく変わる表情、答えを探しているようによく動く大きな瞳、人を煙に巻くような台詞で観ている側も不安になる、敢えて言うけど(自分がイメージしてる)満島ひかりさんらしさ全開の演技でした。
対する岡田将生さんは、満島ひかりさんとの対比によって、抑えた演技だからこそしっかりと輪郭が浮かびあがっていました。
「MIU404」、「アンナチュラル」からの出演のみなさんは、もちろん久しぶりに見れてこちらもとても嬉しくて、その繋がっている世界でしっかりお仕事しているので安心しました。
今回はあくまでもストーリーの一部として登場しているので、変に目立ったりすることもなくラストのシーンで主要キャスト一同並んで「犯人捕まってよかったね」みたいなシーンはありませんでした。
もちろん自分的にはそんなシーンはなくて良かったので嬉しく思いました。
ずっと、何故この「LAST MILE」はズシンと心の中に落とし込まれて、観終わって2日も3日も経っているのに、その思いは離れないのか。自分でも不思議な気持ちでいました。
これは、僕なりの感想なのですが、この物語は観てる側、一人一人の物語になっているのではないかと思うのです。
単価150円の荷物を必死で運ぶ人、疲れすぎて自分の誕生日すら忘れてしまう人、上司に手柄を取られてしまう人、誰かと比較され苦しんでる人、愛する人を失った人、自分に与えられた仕事に取り組みながらその仕事に飲み込まれてしまう人、毎日を送るのが辛くなってる人、そんな登場人物の中に僕は自分を見つけて、自分の日々に重ねているような気がしています。
エンディングはハッピーエンドではなく、ただただ、「WANT」にまみれた日常がまた始まっては終わっていく。
映画館でも配信でもテレビでもいいから見てほしい作品です。
他の皆さんの星が多いのが頷ける作品だと思います。
間違って爆弾が届いた場合返品しても良いですか?
面白かった
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