「これは紛れもなく〝映画〟だ!」ラストマイル kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
これは紛れもなく〝映画〟だ!
テレビ局が制作する映画、特にTVドラマ起点の劇場版というやつにはガッカリすることが多くて、その理由はたいてい映画的スケール感に欠けるというものだった。
だが、本作はその点において立派な劇場用映画だった。
冒頭、多摩都市モノレールの車内で、ガラスに映る反対側に座っている満島ひかりにスコープを当てて見せるところから、TVドラマとは違う映画的な丁寧さが表れている。
連続爆弾事件が題材で、犯人捜査と並行して残りの爆弾を探さなければならないという構成。
この、いつ爆発するかというハラハラドキドキの演出が秀逸だ。
編集は板部浩章という人で、編集の力もあると思う。
物語はほとんど満島ひかりが引っ張っているのだが、前半と終盤にこのスリル溢れる演出があるから、緊張が緩むことなくサスペンスを楽しめる。
監督の塚原あゆ子はTBS系の制作会社に所属している演出家らしいが、『コーヒーが冷めないうちに』など何本か映画の監督もしている人。
どうやら、荷物が爆発して物流が混乱する初期アイディアは監督によるものらしい。
爆弾を探すために物流を止めるか、販売を中止するか、しかしビジネスは守らなければならない。厳しい状況に追い込まれた主人公が畑違いの犯罪捜査に乗り出すのではなく、自身のビジネス環境の範囲内で事件解決=業務遂行を図るというストーリーにも好感が持てた。
利益至上主義に疲弊する人、下請け業者・孫請け業者・ひ孫請け個人事業主のヒエラルキー、運送業界の労働環境などの社会的題材を背景に、あくまでもエンターテイメントに徹した野木亜紀子の脚本の物語構成も上手い。
離婚して二人の子供を抱えたシングル・マザーや、会社が倒産して老父の運送業を手伝っている中年男が、どこでこのサスペンスに絡んでくるのか、このとんでもないまとめ方。
製作者・監督・脚本家の三名の女性が共通のTVドラマ「アンナチュラル」「MIU404」とのシェアード・ユニバースだというが、ドラマのキャストはゲスト的な扱いに過ぎない。知らずに観ても“ちょい役が豪華だなぁ”と感じる程度で楽に観られた。
公開がロングランしているのも頷ける、気楽に楽しめて、スケール感も味わえる良作である。
面白かった!
共感ありがとうございます♪
この作品…ホント面白いですよねー。私は、この作品…リピートしてきました。😌 何度観てもイイ感じでした♪
またよろしくお願いします。