「凄くいい作品です!」ラストマイル じろーさんの映画レビュー(感想・評価)
凄くいい作品です!
以前、大手の物流センターでオーダーされた荷物を箱に入れるバイトをしていたことがある。
私物を持ち込めない現場でどうやって荷物の中に爆弾を入れることができるんだろう?しかも、誰がこの荷物を詰めたか、なんてことはすぐわかってしまうのでどう成立させるのか、とても興味があったのですが、実際観てみるその内容 はペーペーのバイトがパッと思いついてできるような単純な仕組みではありませんでした…。
確かにそんな薄っぺらい方法だったら、この作品の根幹にある、念の深さと決意の重さが変わってきてしまいます。
作品が始まってから終わるまで約2時間、最後の最後までグッとストーリーに胸倉を鷲掴みされ続け揺さぶられました。
物流センターを舞台にした作品なんて地味じゃない?なんて思ってましたがとんでもない、最初から引き込まれっぱなしです。
まず、満島ひかりさんがいい。
凄くいい。
よく変わる表情、答えを探しているようによく動く大きな瞳、人を煙に巻くような台詞で観ている側も不安になる、敢えて言うけど(自分がイメージしてる)満島ひかりさんらしさ全開の演技でした。
対する岡田将生さんは、満島ひかりさんとの対比によって、抑えた演技だからこそしっかりと輪郭が浮かびあがっていました。
「MIU404」、「アンナチュラル」からの出演のみなさんは、もちろん久しぶりに見れてこちらもとても嬉しくて、その繋がっている世界でしっかりお仕事しているので安心しました。
今回はあくまでもストーリーの一部として登場しているので、変に目立ったりすることもなくラストのシーンで主要キャスト一同並んで「犯人捕まってよかったね」みたいなシーンはありませんでした。
もちろん自分的にはそんなシーンはなくて良かったので嬉しく思いました。
ずっと、何故この「LAST MILE」はズシンと心の中に落とし込まれて、観終わって2日も3日も経っているのに、その思いは離れないのか。自分でも不思議な気持ちでいました。
これは、僕なりの感想なのですが、この物語は観てる側、一人一人の物語になっているのではないかと思うのです。
単価150円の荷物を必死で運ぶ人、疲れすぎて自分の誕生日すら忘れてしまう人、上司に手柄を取られてしまう人、誰かと比較され苦しんでる人、愛する人を失った人、自分に与えられた仕事に取り組みながらその仕事に飲み込まれてしまう人、毎日を送るのが辛くなってる人、そんな登場人物の中に僕は自分を見つけて、自分の日々に重ねているような気がしています。
エンディングはハッピーエンドではなく、ただただ、「WANT」にまみれた日常がまた始まっては終わっていく。
映画館でも配信でもテレビでもいいから見てほしい作品です。
他の皆さんの星が多いのが頷ける作品だと思います。