劇場公開日 2024年8月23日

「時の社会問題を平凡に描いた」ラストマイル phoenix1さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0時の社会問題を平凡に描いた

2024年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

結論から言えば、映画としては平凡だった。
タイトルの「ラストマイル」とは物流の最下流のことだが、事件はもっと上流の物流倉庫内でも起きていた。今、社会問題になっている物流業界の闇を取り上げている。外資系EC物流大手と日本の中小宅配業者という関係性は、この業界でなくとも世界の産業構造の縮図を見ているようで衰退した日本を憂う者の焦燥感をも誘う。離職率の加速や責任の所在が不明瞭な臨時社員を酷使する雇用形態。事件の背景にある社会問題をわかりやすく描いている点では共感を得やすい。

一方で、映画としては、平凡に過ぎない。爆発シーンの迫力こそは臨場感を感じたがそれ以外は普通のドラマだ。役者は、率直に言って満島ひかりが物足りない。主役の重要な役処を演じきれてない。さながら薄っぺらなキャリアガールのノリだ。実績のある女優だけに残念だ。対して岡田将生や星野源は役柄を違和感なく演じきっていて感心した。往年の二枚目(?)俳優の火野正平はこの手の役柄には妙にハマる。そして何と言っても「ラストマイル」を担う運送業者の関東局局長役の阿部サダヲの好演ぶりは微笑ましい。

余談だが、このような社会構造は古くから欧米にあったもので、塚原あゆ子監督には、これを日本に持ち込んだ政治家や経済学者の闇に切り込むようなテーマを題材にした社会派の映画作りに取り組んでほしいと感じだ。

phoenix1