「働く全ての人に畏敬の念を」ラストマイル おくとさんの映画レビュー(感想・評価)
働く全ての人に畏敬の念を
この作品から何か教訓を得るとするならば、上記の言葉になるかもしれない。
本作は物流業界に携わる様々な立場の人間のそれぞれを細やかに描写することで、「資本主義」が引き起こす問題を提起する社会派映画だ。
良いサービスの裏には悪い労働環境がある。安いチェーン飲食店の従業員の顔はいつも死んだ魚のようだったことを思い起こした。
「すべてはお客様のために」
これは高尚なスローガンかもしれない。しかし、それは呪縛のように労働者の逃げ道を塞ぐ。消費者はその恩恵を受ければ受けるほど苦しさが巡り巡って(労働者としての)自分自身に返ってくる。
この作品における犯人はこの社会の仕組みなのだ。
しかし、このことの是非について語ること自体は建設的でない。
この映画を通して私は、全ての労働者に敬意を持つことで消費者として経済に関わり、一方で、自身の労働に誇りを持つことで生産者として経済に関わるべきなのだと学んだ。
意義ある問題提起をこのようなエンタメに落とし込めている点で素晴らしかった。
一方で(扱っている題材を鑑みれば、致し方ないが)、登場人物や場面転換の多さから破綻していないとはいえ、出てくる一人一人に感情移入することは難しく、物語としてのテンポが遅いことも気になった。
エンタメ映画としては、あまり面白いものではなかったように感じてしまう。
5.0 人生観を変えられる名作、宝物のような映画
4.5 何十回と見返したい傑作、何年経っても思い出せるほどの感銘を受けた映画
4.0 複数回見返したい秀作、自信を持ってお勧めできる映画
3.5 見返すほどではないがとても面白い良作、観る価値がある映画
3.0 所々ツッコミどころはあるが面白い佳作、観ても時間の無駄にはならない映画
2.5 全体として面白くはないが最後まで観れる凡作、暇であれば観る価値のある映画
2.0 頑張ってなんとか最後まで観れる駄作、観ても時間の無駄となる映画
1.5 寝てしまうほどつまらない愚作、作り手を軽蔑する映画
1.0 論外、話すに値しない映画