「満島ひかりが素晴らしい!適役!大切な荷物を届けるラストマイル。 配送業者の誠実な想いVS大企業利益追求の弾圧。 世界規模の大手外資系インターネット・ショッピングサイトといえば…。」ラストマイル ITOYAさんの映画レビュー(感想・評価)
満島ひかりが素晴らしい!適役!大切な荷物を届けるラストマイル。 配送業者の誠実な想いVS大企業利益追求の弾圧。 世界規模の大手外資系インターネット・ショッピングサイトといえば…。
ショッピングサイトの荷物が次々に爆発する連続爆破事件が発生。
センター長に着任したばかりの舟渡エレナが危機に立ち向かう。
誰もが実在の企業を想定する【世界規模の大手外資系インターネット・ショッピングサイト】「デイリーファスト」。
その巨大な発送センターに、次々に出勤する大勢の社員たちを描く高揚感、心地よいワクワク感。
そこに、新任の若い女性のセンター長が登場。
いかにもやり手であることがわかる段取りの良い、歯切れのいい仕事の進め方が、観ていて実に気持ちいい。
満島ひかりの個性と演技が実にぴったりです。
冒頭の登場から物語に一気に引き込まれます。
そして突如起きる、事件ものの定番ともいえる連続爆弾事件を通して、物流業界の仕組みや内幕、問題点、それらを支える多くの人々が描かれていく。
二転三転する犯人捜し、ミスリードもサスペンスとして面白い。
ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」のメンバーが登場するユニバースも、本筋に邪魔することなく、それぞれが見せ場があって、作品に色を添えている。
「すべては客様のために」という、いかにも善意に満ちた企業のスローガンも、結局はすべて巨大企業の利益追求に言い換えられるという皮肉。何とも外資系らしい。
これに対して「ラストマイル」という物流業界の用語の持つ意味の重さ。
荷物を受け取ったお客様の笑顔のために、休憩時間をも削って、黙々と一つ一つの荷物を届ける配送業者の気持ち。
これを演じる火野正平の演技がいい。
いかにも日本らしい美徳も、大企業に有利な条件を押し付けられて、疲弊していく問題を、娯楽映画に昇華していて実に見事です。
そして、虐げられた人々が団結して反抗する展開も盛り上がる。
最後は、高品質の日本製白物家電と、倒産したその電機メーカーに勤めていた元社員で今は見習い宅配担当者がヒーローという結末。
様々なすべての要素をここまで完璧にまとめ上げる、製作、演出、特に脚本の力!
さすが、野木亜紀子、お見事です!
壮大な事件も最後は、一つの荷物の小さな幸せで気持ちよく締めくくる。
良い意味で、連続ドラマ的な終わり方が爽快でした。