劇場公開日 2024年8月23日

「メジャータイトルとは思えない複雑さ。」ラストマイル たくさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5メジャータイトルとは思えない複雑さ。

2024年8月30日
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鑑賞方法:映画館

TBS主導で満島ひかりを初めとする豪華俳優陣が勢揃い、かつ公開するやいなや大ヒットを記録するという今年随一の大作である本作ではあるが、その語り口というか中身は情報が一度では完璧に処理しきれないほどに複雑だし、その終わり方はスッキリと感動して鑑賞できる類のものでは無い。それ故に、今後のテレビ映画にも少しの期待が持てる出来栄えになっていると言えるだろう。

まず、本作の構造としては主人公が属するECプラットフォーム・それを支える物流会社・事件を調査する警察やUDI・事件を引き起こした犯人側などなど、さまざまな立場の人間がそれぞれの思惑をもって動くため、彼らの役割を把握するだけでもなかなかに困難で、その上で、ストーリーの流れとしても、事件の原因を調査するパートと物流の安全性を確保しつつ運営を進めるパートが並行して行われるので(プラスして犯人の動機や物流業界のかかえる課題も描かれる)、観客もしっかりと集中して映画に臨むことを求められる。しかし、これは映画として制作された本作だからこそ出来ることであって、そういった側面から見れば、本作は映画であることを存分に活かした、ドラマシリーズの『アンナチュラル』『MIU404』とは明確に差別化された作品であると言えるだろう。

次いで、本作のラストについては、通常の刑事ドラマのように犯人を捕まえて大団円という訳では決してなく(ここら辺は『アンナチュラル』に近い?)、むしろ作中最も苦しんでいた「彼ら」の状況は何ら好転してはいない。ただ、だからこそ、この作品を通して我々は社会に対して、自身に対して、今が正しいのかと問いかけ続けることが出来るのであって、それこそが本作の価値であると考える。

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