「企画の大勝利」ラストマイル 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
企画の大勝利
観賞前にとても驚かされた。俺は日々映画チケット作品販売数監視サイトを眺めている。「今、流行っている作品は何か?」「注目のあの作品の興収成績はどんな感じ?」という情報をウオッチしている。特に金曜日は新作の動きを興味深く見守っている。 23日もいつものように眺めていたら、朝から本作が凄いスタートダッシュだった。その勢いは夜まで衰えず、土日もそのまま持続!
近年、大ヒットはアニメばかり、実写映画の興行成績は厳しい状況にある、キングダムのような人気が確立したシリーズや、今旬のスター主演作品等20億円を超えるようなヒットは極々限られる。主演の満島ひかりは、(俺は好きだが)さほど集客力がある女優ではない。岡田将生だって。「誰か旬のアイドルのキャスティングでもあったか?」と再確認したけど、それも無し。 俺の常識では、大ヒットの要素の何も無い。
「なんで?」
謎を抱えたまま、公開初日の晩に観賞。
観てやっと謎が解けた。
【物語】
流通業界が繁忙期を迎えるブラックフライデー前夜、舟渡エレナ(満島ひかり)はグローバルネットショッピングサイト会社の巨大物流センターの新センター長として赴任。しかし、赴任直後にその物流センターから配送された段ボールが爆発する事件が起きる。さらに同様の爆発があちこちで連続して発生するが、爆発したのはいずれも赴任した物流センターから出荷された段ボール箱だった。
警察が捜査のために物流センターに乗り込んで来るが、エレナは商品発送を止めないためにチームマネージャーの梨本孔(岡田将生)と共に奔走する。彼らは犯人に繋がりそうな不信な偽ネットCMを見つける。偽CMは12個の爆弾を仕掛けたことを暗示していた。彼らは独自に犯人を特定すべく動き出すが・・・
【感想】
純粋な作品の感想を先に。
ストーリー的には「犯人は誰?」を追い続けるミステリー作品。
それに付加されるのは、“爆発”というスリル・恐怖でヒヤヒヤさせられるサスペンス要素、犯人像に絡むヒューマンドラマ要素。さらには昨今の物流業界で問題となっている人出不足、過重労働問題を描く社会問題要素が加わっている。
ストーリー、脚本・演出に破綻は無く、高レベルで纏められているし、満島ひかりは期待どおりに魅力的だし、岡田将生他共演、脇役陣が超豪華で、確かな演技なので、作品として満足できるレベルに仕上がっている。
が、本作で一番印象的なのは企画、プロデュースだ。
それが冒頭の俺の驚き「こんな作品がなぜ大ヒット?」の答だった。
後から宣伝を見れば確かに書いてあったが、俺が観賞するまで気づかなかったのはTVドラマ「アンナチュラル」「MIU404」、両方観ていなかったからで、情報をスルーしてしまった。唯一予告編で気付いていたのは、石原さとみらしき人が一瞬見えて、「あれ、脇役で出てるの???」と思っていた。
ヒットTVドラマの劇場版は“踊る大走査線”の大成功以来多数作られて来たが、このパターンは無かったはず。話題になったドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の設定を作品のほんの一部に使う。それでも両作のメインキャストがちょい役にも関わらず勢ぞろいして、超大作並みの超豪華キャストに。それが実現できたのはプロデューサー・監督・脚本家つながりがあったからだろう。言って見れば過去見たことの無い“大友情出演陣”の実現だ。
大観客動員はこのキャストが両ドラマファンを引っ張った結果だろう。一方、両ドラマファンでない俺の立場から評価したいのは、ストーリーとメインキャストは両ドラマの続編でも何でもないので、TVドラマを観たか否かに関係無く楽しめる作品に仕上がっていること。
興行的成功と作品としての質の高さの両立に成功していると思う。