「コンベアーを止めるな」ラストマイル よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
コンベアーを止めるな
野木さん✖️塚原さん✖️新井さんの作品の魅力がなんなのかをようやく理解できた。それはズバリ「題材への敬意」である。緻密な脚本の作品は数は限られるが他にもある。ただ題材とする職業への敬意だったり感謝を感じられるのはこのトリオの作品が随一であろう。
その敬意が最も表れてるのはタイトル。ラストマイルは物流の最後の区間。ドライバーが商品をお客さんのところに届ける区間。24時間365日この世界のどこかでドライバーさんがラストマイルを駆け抜けている。そんなラストマイルをタイトルに掲げていたり、ラストシーンで子供に爆弾が入ってない商品を届けるのがエレナではなくドライバーの佐野親子である所も日夜駆けずり回っているドライバーさんへの感謝と敬意を感じる。
その上で物流を支える人として上層部にも敬意を感じる。「全てはお客様のために」というマジックワードに上層部も追い詰められている様が見てとれる。おそらく物流問題について綿密に取材して考察を重ねた上でドラマに落とし込まれたのだろう。そういう誠実さが伝わってくる丁寧な作品であった。飛び降りた社員の後ろで淡々と流れるベルトコンベアに胸が押しつぶされそうであった。この闇の原因はなんだったのか?
そんな疑問を我々に考えさせてくれる丁寧で優しい映画だった。
野木さんの脚本は相変わらず緻密で隙がない。前半のミスリード用の話を最後のオチで回収して行く華麗さには思わず笑みがこぼれてしまうほど。とはいえ、耐熱性の洗濯機は流石に無理がすぎるようなというか振り切ってギャグの領域まで行ってる。
MIU404やアンナチュラルの面々にもちゃんと事件解決の鍵となる活躍の場面が設けられていてシェアードユニバースムービーとしての隙のなさも実感。ただ、世界観を共有してスペシャルゲストとして登場させてお祭り騒ぎを演出しましたというだけでは無いところが素晴らしい。