「構わないから、生きていてよ」ラストマイル 桜さんの映画レビュー(感想・評価)
構わないから、生きていてよ
やはり塚原あゆ子さん×野木亜紀子さんの脚本からでしか得られない何かがある。。。
物流、配送業という客からは過酷さやシビアな部分の見えないものをテーマに扱ったのは着眼点が面白いなと感じると共に、同じスタッフの作品でありシェアードユニバースで繋がっている「アンナチュラル」でも同じように工場勤務における過酷労働、パワハラをテーマにした回があり、これがまためちゃくちゃ悲しくて何度観ても泣いてしまうのだが、今作でも思わず泣いてしまった。
が、単なる過酷労働やパワハラだけを取り扱うのではなく、品質を求めいい物を作ろうとしたせいで経営が立ち行かなくなり倒産に追い込まれた家電会社の社長と、安月給ながら運送業という仕事に誇りを持ち、休憩時間を削ってでもお客にいち早く商品を届けようとする立派なその父
旦那と離婚をし、養育費も貰えず一日中働きながら2人の娘を育てるシングルマザー
真面目ゆえ仕事に人生を捧げ心も体も壊れてしまい、休職を余儀なくされつつも復帰し挽回を測ろうと必死になる女性など、いくつもある社会問題を取り扱いつつも暗くなり過ぎず、野木亜紀子作品らしい笑いあり涙ありの素敵な作品に仕上がっており、とても満足出来た。
神作品である「アンナチュラル」の続編が見たくて見たくて身震いしている私のような人間にも安定剤になるような要素盛り沢山で、それに加え「MIU404」のキャストもカムバックしてくれててもうそれだけで最高!
バイク便で久部六郎の元に薬を届けた青年は、「アンナチュラル」で同級生から壮絶な暴行障害を受けていた白井くんで、あぁ、頑張って前を向いて生きているんだなと凄く嬉しくてほっとしてしまった。
だが今回の事件の発端である中村倫也演じる男性の意識がもし戻った時、自分のせいで(実際そうではないが)妻が無差別殺人をした上に自ら命を絶ったと知ったらどうなってしまうのだろうととても不安な気持ちを残して、この作品は幕を閉じた。
それでも最後まで展開が読めず、それぞれ抱えていた問題がしっかり解決し、犯人と被害者以外は皆生きていてくれた事が何より嬉しかった。
物流、配送業って前述の通りその過酷さや壮絶さは我々の目には見えず、日々当たり前のように大量の商品を運送し、我々に安全や便利を届けてくれていて、そんな人達に感謝をしなければならないのと共に、そのスピードや利便性は当たり前ではないのだということを再認識させられたなぁと。
そしてお馴染み米津玄師の名曲「がらくた」にも通じる、壊れようがどうなろうが構わないから、どうか生きていて欲しいというメッセージ性はこの天才が創り出した曲だけでなく、作品からも感じられて、本当にいい映画だなと、全てを通してそう感じさせてくれた。
「アンナチュラル」、「MIU404」の続編、いつまででも待っています、、!