「野木亜紀子もっと書けるだろ」ラストマイル Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
野木亜紀子もっと書けるだろ
オープニングかっこいいね。なんか韓国映画っぽさがあった。
それで、でいきなり爆破シーンがくるの。テレビドラマの始まり方なんだよ。
テレビはチャンネル変えられちゃうから、早く事件を起こすのね。
映画は座ってるから、すこしゆっくり始めても大丈夫なの。
テレビの人が映画を作ると、なんか深いこととかテーマ性のあることやんなきゃってなって空回りするんだけど、この作品はテレビのつくりでいいなと思ったんだよね、このときは。
満島ひかり演じる舟渡エレナのキャラ設定がすごくいいね。
アメリカでバリキャリやってましたって感じが出てんの。
宇野祥平と火野正平が親子役で出たりして、遊んでんなあって感じもあるの。
エレナが事件に気付くんだけど、株価優先で警察への連絡を遅らせたり、ギリギリまで自身の出世を優先してくんだよね。
その辺の事情設定が終わって、いよいよ警察が「全ての荷物を差し押さえる」ってなって、エレナが機転で切り抜ける。
予告編にもある『止めませんよ、絶対』あたりがカッコイイ。
この辺が、この物語のピークだったな。
この辺から「え、実はエレナやなやつ?」「エレナ犯人なんじゃ?」ってやってくんだけど、話が停滞したね。誰が犯人かは重要な物語じゃないしね。
そこから《MIU》と《アンナチュラル》の皆さんの活躍もあって犯人も判明し、問題をどうさばいていくかと。
この辺で、この作品の主題が分かってくるんだけど、エッセンシャルワーカーの話なんだよね。あるいは行き過ぎた資本主義の歪みとか。
それで「どうするのか」ってところで、エレナがまあ一つのアクションは起こすけど、弱いね。
簡単な解決がないから社会問題なんだよね。それを克明に描くわけでもなく、解決するでもなく、なんか淡々と終わったな。
野木亜紀子をもってしても、社会問題は描ききれなかったね。でも、もっとやれるだろ野木亜紀子。
エレナは出世に賭けてきてたのに、問題を前にして、出世は捨てる選択をするんだよね。でも、どれだけ出世に賭けてきたかは描かれてないから「ふーん」という話なの。
それで主人公エレナ目線で物語は語られるから、エッセンシャルワーカー側の事情の語りが弱いんだよね。だから、そこと共感して現状に怒るってこともできないの。
そんなわけで後半は「なんだかな」と思って観てたな。
でも脚本はうまかった。そのうまさが際立ってしまうということは、物語が弱いんだよね。
高いレベルできれいにまとめてくれるから、観てて楽しいと思う。
でも、映画だからって振りかぶって社会問題入れてきたけど、うまくいってない気がしたな。