「白い手帳を買えるだろうか」ラストマイル 佐伯彼方さんの映画レビュー(感想・評価)
白い手帳を買えるだろうか
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この時代、この国で働く私たちは、自分に白い手帳を買ってあげられるだろうか。
職歴の空白に眉を顰められる時代に、誰にも何にもとらわれない自分のためだけの時間を作ることの出来ないひとは多いと思う。
2.7m/sの早歩きで向かう通勤路、通勤電車で職場へ運ばれる私たちは、あの倉庫の中の荷物と変わらない。
それでも、そのベルトコンベアから外れればそこで全てが止まってしまうことが多い。劇中の山崎のように。
義務教育が始まれば定年まで空白を許されない風潮の中で、白い手帳を買うにはそこそこの勇気がいる。
この物語の最大のメッセージは、映画の本当に一番最後、真っ黒な画面に映し出された文章の、最後の文なのだと思う。
スマホやPCの液晶でよく見かけるようになった文章だけれど、この物語を経験したあとのそれは、白い手帳を買いにいく背中をほんの少しだけ押してくれる気がする。
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