「犯人の行動理念に不可解な部分が多く、完全決着していないモヤモヤは残っている」ラストマイル Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
犯人の行動理念に不可解な部分が多く、完全決着していないモヤモヤは残っている
2024.8.23 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(129分、G)
ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」と同じ世界線で起こった連続爆破事故に巻き込まれる物流センターを描いたミステリー映画
監督は塚原あゆ子
脚本は野木亜紀子
物語の舞台は、東京の西武蔵野市(架空)
そこにはグローバル企業「デイリーファスト」の配送を担う「関東センター」があり、そのセンター長として舟渡エレナ(満島ひかり)が就任することになった
彼女の案内役としてチームマネージャーの梨本孔(岡田将生)がつくことになったが、そのセンターの正社員はわずか9人で、残りは派遣社員を含めた非正規雇用者で成り立っていた
エレナの就任早々、デリファスが発送した荷物があるアパートで爆発を起こし、それによって警察の捜査が始まってしまう
関東センターと配送業務を請け負っている羊急便にも捜査官がやってくるものの、関東センターでは私物の持ち込みが不可能に近く、センター内で爆発物を設置することはできないと考えられていた
捜査にあたるのは西武蔵署の刑事・毛利(大倉孝二)と捜査一課の刈谷(酒向芳)だったが、有力な証拠を得られぬまま、次々と関東センター発の荷物が爆発騒ぎを起こしてしまう
事故現場の調査にて、二種類の化学薬品が蓋を開けた時に入るスイッチで混合し爆発をすると結論づけられた
また、薬品が入っている筒は化学反応を起こして、起爆スイッチを押さなくても衝撃で薬品の混合が起こることも懸念された
そこで、全ての流通を止めて、目視で荷物を検査することになったのだが、それができるはずもなく、エレナはセンター出荷時に警察が調べて、問題がないものを配送すれば良い、と彼らをも巻き込むことになったのである
この事態は日本支部の統括本部長・五十嵐(ディーン・フジオカ)の耳にも入り、さらにアメリカ本部から吊し上げを喰らってしまう
当初爆発したのはデリフォンと呼ばれるデバイスだったが、その後は不特定多数のものが爆発を起こしていく
そんな折、エレナは見慣れない自社の広告を見つける
それはデリファスが発注したものではなく、ある人物によって発注されていたもので、関東圏のウェブにばら撒かれたものだった
そこにはブラックフライデーで販売されるセール品が掲載されていて、それが爆発を起こした商品と一致していた
そこで、該当する商品を探し出すものの、倉庫内にあるものもあれば、配送されて羊急便の倉庫にあるものもあるし、さらに配達中のものもあった
エレナは羊急便内の荷物に関してはそこに丸投げし、それが配送現場を混乱させることに繋がるのである
映画は、二つのドラマのキャラクターが登場するものの、捜査に入る警察、死体を解剖する解剖医などとして登場するだけで、彼らの活躍はほとんど描かれない
別の作品に出演している刑事2名が合同捜査をしているという部分がファンに受けているものの、彼らが活躍して事件が解明されるということもない
あくまでも、今回の主人公であるエレナと孔が真相にたどり着く中で、末端の配達員である佐野親子(火野正平&宇野祥平)が巻き込まれる、という構図になっていた
犯人とその関係者にあたる人物はシークレットキャストになっていて、パンフレットでもこの二人のページは袋綴じになっている
なので、公開初週での言及はネタバレレビューでも御法度なのでシークレットにしておく
とは言うものの、犯人の動機や行動原理は不十分なものが多く、問題の人物が飛び降りることに至った心理的な葛藤は読めない部分が多い
その人物が残した「謎のメッセージ」に関する謎解きもキャラクター内の理解で留まっていて、鑑賞者の全てが理解できるものでもない
想像の世界になるが、コンベアの速度とコンベアの止まる重量が数式化されていて、その実践を行ったように思える
それでコンベアが止まるかと思われたものの、そんなものでは止められず、投身体は脇にどけられたまま、コンベアは無情にも動き出してしまう
これが世界の物流の現実であり、人が一人死んだくらいでは、何も変わらないと言うメッセージが込められているように思えた
いずれにせよ、映画とドラマはほとんど関係がなく、他局であることを承知で言えば、科捜研とタカ&ユージでも成り立つような登場の仕方になっている
これでドラマのファンが納得するのかはわからないが、映画によってプチコラボができたことは喜びなのかもしれない
映画のラストはあっさりしたものだったが、後始末をさせられる孔は少し気の毒なような気がするし、責任を取らされる五十嵐も後を追いそうで怖い
あの時に五十嵐がコンベアを止めたらどうなっていたのかはわからないが、おそらくは何も変わらなかったのだろう
それがある人物の後悔の言葉にもつながっているので、根深い問題なんだろうなあと感じた