「良い意味でも悪い意味でも期待していたアイドル物とは違った。」トラペジウム うんぴさんの映画レビュー(感想・評価)
良い意味でも悪い意味でも期待していたアイドル物とは違った。
原作があることは鑑賞後に知った。映画館で軽い予告だけを見て鑑賞。
予告から推測した内容は、女子高生がアイドル活動をやる為に東奔西走してメンバーを集めてアイドルとして成功していくと言った物でしたが、実際見てみるとメンバー集めまでは合っていたもののまるでアイドル活動をしない。
おいおいこんなんでどうやってアイドルやるつもりなんだと呆れていたら、徐々に主人公の策士っぷりが出てきて今まで撒いてきた種が芽吹いてアイドルをやらされると思ってもいなかったメンバー達が知らず知らずのうちに主人公と一緒にアイドルをやるハメになる。
ここまでで割と自分としてはドンデン返しっぽくて面白かった。
主人公がアイドルオーディションでアイドルなれなかったからって一般人の美少女を集めて策を弄してアイドルとして仕立て上げ、自分がアイドルデビューする為の駒にしてると言う事が明らかに描写された時は心の中で「この主人公やべぇww」「この映画もやべぇwww」と笑わずにはいられなかった。
こんなアイドル物今まで見たことない(笑)
その後の主人公と周りが壊れていく様とオチについては、まぁ割と想定の範囲内と言う事もあってそこまでの驚きはなかったけれども話の内容には筋が通っていたと思う。
映像も綺麗で話も全く予想できなかった方向から来てくれて自分は楽しめたので星4。
【ちなみに……、主人公以外の3人があまりにも優しすぎ問題や主人公が謝れば許してもらえる事に違和感を覚えている人が多いようだが……よく考えてみると割とそれらに違和感を覚えなくなる。何故なら、観客は主人公にどんな想いや思惑があるのか見せられてある程度理解しているが主人公以外の3人は最後の最後まで自分達がいったい何がどうなってそうなったのか分かっていないのだ。
主人公以外の登場人物の視点からすれば「なんかアイドル好きの子が自分と偶然友達になって、ボランティア活動に誘われて一緒にやってたらなんかテレビに出ないかと誘われて、あれよあれよと言う間にアイドルとしてデビューさせられた」程度の認識しか無いのだ。
だから主人公に対してあまり強く出られないのも(主人公に誘われたからでは無くあくまでなり行きでそうなったと思っているから)そこまで不自然では無い。
そう……。この作品の真の恐ろしさは最後の最後の最後まで主人公以外の登場人物が自分達が主人公の手のひらの上で踊らされていた事に気づかず、そして主人公も言わずに上手く撮れた写真を見て「トラペジウム」なんてエモい感じを醸し出している事である。
そしてその主人公と言えば、本来であればアイドルオーディションに受かる事すらできなかったレベルの人間だったのが、美少女3人を使って自分を売り出す事に成功して見事アイドルという野望を達成している。
それがオチの……綺麗な写真で映し出される「トラペジウム」。
これはアイドル物に見せかけたホラー作品なのです。】
唯一見ていて思ったのは、恐らくこの作品は映画作品では無く1クールアニメとして作った方が作品の出したかった表現や話のカラクリを上手くできたのではないかと言う事。
と言うかもしかすると、本来は1クールアニメとして制作予定だった企画が何らかの事情で映画作品として作られる事になってしまったのでは無いかとも思う。
そこら辺は分からないけれども、正直映画としては若干アニメの総集編的な雰囲気があり、ダイジェストみたいな部分があったり、個々の登場人物やイベントに対して掘り下げをしきれていない感が否めなかった。
しかしそこはやはり恐らく何か大人の事情ありきな話でもあると思うので、恐らく色々な制約があったであろう中でも作品の見せ場や構造を壊さず良く観客に見せられるようまとまっていると思う。
なーんかてきとうな映画見るかなぁで入った自分としては全く想像もつかなかったアイドル物を見る事ができて面白かった。
現実のアイドルも主人公と同じぐらいには手段を選ばずに使える手を全て使うぐらいの勢いがないと売れないのかもしれないとも思った。
見ている間、この主人公は天才軍師か何かの生まれ変わりだろ!ってずっと思っていた