「お母さんの味」スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
お母さんの味
世間の評判は悪いけど、個人的には結構好きな映画シリーズ。映画好きなら誰しもあるはず。自分にとってこの「スマホを落としただけなのに」シリーズがそうで、今のように映画にのめり込む前に見たのが1作目というのもあって、かなり思い入れがある。「それがいる森」「禁じられた遊び」と、近年クソ映画を連発している中田秀夫監督だけど、このシリーズだけはどうしても嫌いになれない。
原作の「〜戦慄のメガロポリス」が発売されてすぐ映画化に淡い期待を寄せたけど、邦画は2作目が作られてすごい方。前作はコロナ直前に公開されたのもあってあまり話題にならなかったから、きっともう3作目はやってくれないだろうな〜と思っていたんだけど、なんとやってくれましたよ!まず、ちゃんと物語を締めくくってくれただけでも凄く嬉しいし、賞賛したい。なかなかこう上手くいくもんじゃないからね。成田凌と千葉雄大も、長いことお疲れ様でした。監督もここまで作ってくれてありがとうございます。
とまぁ雑談はこのくらいにして。率直に言うと、自分好みのとても面白い作品だった。これまでと同様、確かに粗い脚本だしツッコミどころもあってご都合主義的な展開が続く映画ではあるんだけど、それも加味して好きというか、むしろこの雑さがクセになる。なんだろう、雰囲気とテンポ感がすっごいハマっちゃうんだよね。
全3作品に共通して言えることだけど、これほどまでに成田凌の魅力が詰まっている作品は無いし、裏を返せば彼の演技に頼りすぎているなと思うところはあるんだけど、いつだって想像の斜め上を行く恐怖を観客に植え付けてくれるから、成田凌を拝みに行く映画として大好き。
しかも今回は主演であるため、そんな成田凌が全面に出る、ファン歓喜のご褒美映画。シリアルキラー・浦野善治の知られざる本性に迫るストーリーだが、予告とはかなり印象の違う、意外な方向に物語が進んでいく。これはこれで面白く見ることが出来たんだけど、やっぱりもっと狂気的な浦野が見たかったなーと思う自分がいる。
韓国に舞台を移したのはナイスなアイデアで、成田凌と大谷亮平の流暢で違和感が全くない韓国語とクォン・ウンビのおぼつかない日本語が作品をグッといい物にしていたし、ありえそうなシチュエーションで前作よりも緊張感があった。その一方で、これまでの登場人物が大集結する大団円映画でもあるため、浦野を主人公に置きながらさほどスポットが当てられなかったのは、少し残念な気持ちになった。
ロン毛の1、白髪の2、と来て3の本作は黒髪であるため、比較してしまうとパッと見の印象がかなり弱い。その分、成田凌にはこれまで以上の狂気的な演技が求められたわけだけど、これはもうピカイチに良かった。目が怖すぎる。まるで獲物を見つけた時の野良猫のような鋭さ。1を彷彿とさせるその表情に背筋が凍ってしまった。身体は必要最低限にしか動いていないにもかかわらず、何故か怯えてしまうほど恐怖を感じる。目の演技ができる、稀有な存在。今回もまた、成田凌の良さがぎっしりと詰まっていた。
あと欲を言うなら、せっかくファイナルハッキングゲームと題名を変えたんだから、もっとサイバーテロ的な面での見応えが欲しかった。相変わらず衝撃的な場面が多く、今の技術ではそんなことも出来るんだとあっと驚かせるネタも随所にあったんだけど、日本政府側に昇進した千葉雄大演じる加賀谷の活躍が薄く、2のような心理戦的な面白さは無くなってしまったなと。せっかくお友達と遊べたんだから、浦野ももっとぶちかましてくれたらいいのに。意外と控えめなんだね。いやそれでもすごい発想だけど、笑笑
想像以上にクォン・ウンビがいい味出していて、成田凌に負けない力強い演技のおかげで2時間すごく楽しかった。もっと磨けば、もっといい役者になるだろうし、俳優の魅力を引き出すという意味では中田監督は見る目があるなと思う。
このシリーズを通して語られている家庭内暴力についてもしっかり掘り下げられ、今回はその先にある、愛を越えた依存も興味深く描かれていた。愛することってなんだろう。愛されるってなんだろう。答えのない問い。愛は幸せを呼ぶことも、不幸を誘き出すこともある。うー、怖い。にしてもキンパ、すっげぇ美味しそう。
あとビックリしたのは、白石麻衣の演技力。前作「〜囚われの殺人鬼」はお世辞にも上手いとは言えないもので、そのせいで作品が若干安っぽくなってしまっているんだけど、今回は見違えるほど上手くなっていて驚いた。頑張って勉強して、努力したんだね...😭
色々と思うところはあれど、やっぱり大好きな映画シリーズ。いいオチだったし、何せよ主題歌が最高。躍進し続けるimase。いい曲書くよね...。これで終止符を打ってしまったのは結構悲しいけど、気持ちよく終われたから良しとしましょう。賛否が分かれることは十分に分かる。だからあんまりオススメは出来ない。でも、それでも、わたしは浦野善治がたまらなく好きなのです....😄