ぼくが生きてる、ふたつの世界のレビュー・感想・評価
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ろう者の育児とその子どもの“感動する話”で終わってはいけない
両親、とりわけ母と息子の無償の愛の物語は古今東西、多くの人の心を揺さぶり感動させる。今作は同じ親子の物語でも少し違う。
耳の聞こえない両親と耳の聞こえる息子(コーダ)が、その家族や自身の半生を描きながら、母の深い愛情を再確認していく物語。
元ヤクザという破天荒な祖父、宗教にはまる祖母、耳の聞こえない両親という個性的な家族と大の成長の物語でもある。
2022年・第94回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞(トロイ・コッツァー)、脚色賞の3部門にノミネートされた「コーダあいのうた」も同じコーダを描いた作品だけど、作者が生まれた1983年から現代までの時代背景も感じられる本作は日本人にとってより身近な作品である。
主人公で原作者である五十嵐大さんの誕生から幼少期、少年、青年期と成長していく描き方もよかった。愛情いっぱいに育ててもらった幼少期、外の世界を知るようになり、自分の両親が他とは違う、そして自身はその二つの世界の狭間にいることを知る少年時代。鬱々とした思春期ではその境遇に苛立ち、時には母に当たってしまうことも……。
一筋縄ではいかない障がいを持った人たちの子育ての苦悩や難しさ、差別なども随所に描かれている。
補聴器を20万で買い「何か喋って」っと嬉々として話す母に当時流行っていた「だっちゅーの」で返す部分はおかしかった。
「東京に行け」という父の言葉に背中を押されて、突然上京することを告げる大に最初は相戸惑いながらも、一緒にスーツを買いに行ってやる母の愛の深さにも涙……。
上京前の買い物帰りの電車の中、大勢の乗客がいる中で手話で話す息子にお礼を言う母のシーンでは嗚咽しそうだったし、ここが本作のハイライトだと思う。
ずっと無音の世界にいる母を遠ざけていた大が自分を責める姿に、胸が痛かった。
「母の愛は海よりも深い」その言葉を改めて思い出す作品だった。
ただ、この作品は「感動する」「泣ける」だけで終わらせてはいけない。“マイノリティー”の人たちがどのように感じ、どのように生きるか……そこに本質があると思う。
五十嵐さんのご両親が本作を観てどんな感想を持っているのか聞いてみたいな。
それにしても今年の邦画は良作が多い。
伝えられない思い
…久しぶりの吉沢亮の作品
期待大・・
吉沢の役は五十嵐 大
耳が聴こえない両親から生まれ
耳がちゃんと聞こえる(いわゆるゴーダ)
生まれた時から両親に愛され
屈託なく育つ。何時しか…
自分のことを(気持ち)を
…伝えても
分かってもらえないことが
苛立ちに変わり
母のことをうっとしく感じて
反抗してしまう
家を出て色々な職に着くが
いま一つ続かない
耳の聴こえない両親から生まれたことの
苦しさや遣りきれない思いが
なかなか拭いきれない
そんなとき聾唖者のサークルで
手話で自分の気持ちを話すことは
自然な行為として特別視しないこと
と知る
危ないときとかは助けが必要だけど
手話で伝われば
それでコミュニケーションはとれる
吉沢亮の大の知るふたつの世界
音のない世界と
音のある世界が
少しだけ体現できる
吉沢亮の演技もよかったし
子役たちも吉沢に似た子供たち
だったので特に吉沢になる前の子役
の子が吉沢の演技にそっくりでした。
母親役の忍足亜紀子さんが
息子を包み込む優しさが
とてもよかった
電車の中で母が
大が人目を気にせず
話してくれたことが嬉しいと
言った言葉に感動が込み上げました。
余談…私も
父親が三浦友和さんに
少しだけ似てると思いました
生まれた時から
両親が耳が聞こえなくても、それが普通だとしたら、特に思春期には大きなショックが来るでしょうね。でも、社会人になっても、聾唖の人との関わりは切らずに続けて行っているのはやはり彼の根底にそれがあると言う事ですね。いずれ宮城に戻るのでしょうね。
久しぶりに
胸の奥をぎゅっと締め付けられる、そんな映画でした。
特別しょうがいのある身内などのいないので
当事者感のないまま見ていて、時折はっと
苦が付かせられるシーンがあったり(良かれと思って
やっていることがそうでは無かったり)と漫然と見ていましたが
クライマックスで一気に持って行かれました。
特に子育て経験のある親御さんにとっては身に染みるのでは
ないでしょうか?(私自身は子育てに苦労した父おやです)
しょうがいという部分を除いてもいい映画でした。
障がい者の世界と健常者の世界を「ふたつの世界」として区別する必要はあったのだろうか?
せっかくCODAを題材として取り上げたのに、聴覚障がい者の両親と健常者の息子の家庭ならではの特殊性が、ほとんど伝わってこないのはどうしたことだろう?
息子が母親の通訳をする様子が描かれるのは、幼い頃に魚市場で買い物をする場面の一度切りで、それ以降は、息子が両親の助けとなっているようなシーンは出てこない。
息子は、「親が障がい者で可哀想と思われたくない」と言うが、そんなエピソードが具体的に描かれることもない。
小学生の息子が、うまく話せない母親を恥ずかしく思う気持ちは分からないでもないが、彼が、近所のプランターを壊した犯人として、あらぬ疑いをかけられたのは、別に、両親が障がい者だからではないだろう。
思春期を迎えた息子が、両親を疎ましく思うのも、普通に反抗期だからだろうし、受験に失敗した彼が、「何も相談に乗ってくれなかった」と母親を責めるのも、手話でちゃんとコミュニケーションが取れているので、単なる八つ当たりとしか思えない。
東京で暮らすようになった息子が、俳優のオーディションや就職活動に失敗したり、パチンコ屋でバイトをしたり、雑誌の編集部で働いたりするようになるのも、両親の障がいとは関係がない。
息子は、東京で、聴覚障がい者の手話サークルに参加するが、手話に方言があることや、必要以上の通訳が障がい者の自立の妨げになることを知るものの、そのことが、彼の人生や両親との関係に大きな影響を及ぼすということもない。
ラストで、息子は、公衆の面前で手話で話してくれたことを母親から感謝され、それまでの母親との接し方を悔い改めて涙するのだが、これは「現在」のことではなく、「過去に上京する時」の回想なのだ。
どうして、このような時系列にしたのかは定かではないが、「だったら、東京に出てきた後の話は何だったんだ?」とも思ってしまう。
もしかしたら、作り手には、CODAの特殊性を殊更強調しようという意図はなく、むしろ、障がい者だとか健常者だとかにこだわらない普遍的な物語を描きたかったのかもしれない。
ただ、そうだとすると、どうして、タイトルで、障がい者の世界と健常者の世界を「ふたつの世界」として区別したのだろうか?
結局、そこのところは、最後までよく分からなかった。
ラストが素晴らしすぎる
お母さんの忍足さんが素晴らしかった。最後の親子のシーンにはやられました。皆様のレビュー読んでいると思い出してじわっと来ます。
息子が反抗しても両親夫婦は分かり合っていって包み込み、最後のシーンに昇華されるなと。今週観た侍タイムスリッパーも素晴らしく、邦画豊作でした。
あの頃、あの時、なぜあんな酷い言葉を言ってしまったのだろうって…後悔後を絶たず。
人生で初めて、土曜の昼下がり、映画館のいつもの最後席でひとり、泣きそうになりました。
想定外でした。
最後、唐突に、さらっと笑顔で、思いもしなかった感謝の気持ちを母から伝えられ・・・
オカンに逢いたくなりました。
もういないけど。
会って、謝りたい気持ちでいっぱいになりました。
この人が主役の映画、初めて観ました。
ただのイケメン俳優だと、その程度の認識しかありませんでした。
想定外でした。
観てよかったです。
【”耳の聞こえない母と父は僕を必死に育ててくれた。どんなに僕が酷い事を言っても。”今作はコーダとして生まれた男の葛藤と成長物語で有り、且つ今作がシネコンで上映された意義は大きいと思った作品である。】
■聾者の両親の子として産まれた大(吉沢亮)は、器の大きな父(今井彰人)と明るい母(忍足亜希子)の愛情を受け、優しい子に育つ。
だが、大が年頃になるにつれ、聾者の両親が疎ましくなり、成人すると東京でバイト生活をするようになる。
◆感想
・ご存じの通り、コーダ(聾者の両親を持つ健常者)を描いた映画としては、秀作「CODA コーダ あいのうた」や「エール!」が洋画にはある。
だが、私は邦画でシネコンで掛かるコーダの映画を初めて観た。
その事自体が、画期的だと思う。
・更に、主人公の大を演じた吉沢亮さんが、コーダの葛藤する姿を高校から30代まで見事に演じているのも、魅力である。
そして、吉沢さんが手話を巧みに使う姿には、プロの役者根性を感じたモノである。
吉沢さんと言えば、人気若手俳優の筆頭株である。
そんな彼がこの作品への出演を承諾した事も立派だと思ったし、役者としての幅も更に広げる一作となったのではないかな。
・物語自体は、大の誕生から30代までを一気に見せる為、ややシーンの繋ぎが粗かったり、エンターテインメント要素もやや薄いと思う。
だが、この映画は、聾者の両親の元に育ったコーダの青年の葛藤と成長を丁寧に描いた映画であり、ラストに観る側にとても心に残るシーンを届けてくれるのである。
・大が、第一志望の高校を落ちた時に母に手話で言った言葉。
”こんな家に生まれなければ良かった。”
その時の、母を演じたご自身も聾者である忍足亜希子さんの哀し気な表情は、観ていて辛い。だが、そんな彼女を自身も聾者である今井彰人さん演じる父は、優しく励ますのである。
・大が東京に行って、生きる事の厳しさを経験するシーン。面接には次々に落ち、パチンコ屋のアルバイトで生活する中、母親から届く手紙と食料品の入った段ボール箱。そして、5000円が入った封筒。
大は、徐々に如何に両親が自分を愛情を持って育ててくれたかを理解していくのである。
■大が東京に帰る時に、母はわざわざ駅まで見送りに来る。
そして、大はそんな母の姿を見て小さい頃からの母の表情をプラットフォームの上で次々に思い出し泣き崩れるシーンは、吉沢さんの畢生の演技も有り、涙が出てしまったよ。
<今作は、エンターテインメント要素はやや薄いかもしれない。だが、私は今作を指示する。それは、今作が邦画では貴重な、聾者の両親の元に育ったコーダの青年の葛藤と成長を丁寧に描いた映画であり、母の子を想う姿は心に染み入った映画でもあり、且つシネコンでこの映画が上映された意義は大きいと思ったからである。>
ごめん、ありがとう。
耳が聞こえない両親(五十嵐陽介、明子)の元へ生まれた耳の聞こえる息子(大)の話。
子供の頃、家に遊びに来た友達に「お前ん家の母ちゃん喋り方おかしくない?」と、言われた事を機に母を人前に出すことが恥ずかしくなり、母アキコとの間に溝が出来た五十嵐大のストーリー。
誰しもがあると思う親への反抗期、親に何かを言われ、それ以上の強い言葉で返してしまい、「心の中ではごめん、言い過ぎた」と思っても素直に謝れなかったり…。
本作では、自分の母の声は普通の人とは違う、母へ手話ではなく言葉で喋ると聞き返されるというまどろっこしさ、人前で手話で話してると周りから見られる、同情されるなどから母親との距離をとる様になっていくが。
友達の一言を機に母への違和感を感じ、母親の愛情は子供だったから分からず、親元を離れ東京で仕事をし、手話サークルで出会った仲間の1人の女性から聞いた「耳が聞こえないからって周りから同情されたくない」、父陽介の体調不良を機に戻った実家でおばちゃんに言われた「両親の反対を押し切ってアンタを産んだんだよ」って言葉を聞き、母アキコに対し優しくなれ、子供から大人になり母親の愛情に気づき成長していく大の姿も良かった。
母アキコが息子の大へ120%の愛情で接っする姿、大から言われたことで悲しげな表情だったり、息子の声をちゃんと聞き取りたいで買った補聴器だったりと全て息子への愛情、これは作品だけど母親の愛情って凄いし深いなと作品を通して改めて思った。
感情の回転が素晴らしい!
僕が生きてる、ふたつの世界
宮城県、地元の石巻が舞台というので映画館で観てみました。
ところどころ、馴染みある風景があって嬉しい気持ちになりました。特に踏切のシーンが、45号線の松島と塩釜の間っぽいところな気がします。いつも通るところなので、あそこで撮影が行われていたかと思うと胸熱です!
感情の回転とストーリーの進みがマッチしていて、観ていて心を揺さぶられました。主人公が成長していく様に引き込まれます。
観れて良かったです。
以下、脚本勉強用、アウトプットです。不快にさせてしまうかもしれませんが書き出します。
良かった点
◯始まりから、両親が障がい者という魔法を1つだけ使い、物語が終始、視点を外さずに進めていた。
◯1stターニングポイントは主人公の友達が家に遊びに来たところか。主人公が明確に母親に参観日拒否の意思を示したところ。
◯序盤がすべて。主人公が赤ちゃんの時から高校くらいまでの生活の描き方が上手すぎる。ストーリーが進行しつつ、感情を回転させ続けていて引き込まれる。楽しい、苦しい、嬉しい、悲しいとか、プラスとマイナスの感情の回転。そして、主人公が葛藤しつつ自分がどうしたいのかをエピソードごとに考え成長する話作りと、障がい者の家庭というところをミックスした素晴らしい展開。ミッドポイントまでの作りが完璧。
◯ミッドポイント抜けて、祖父の死までがセットで良いストーリーだったと思う。死のイメージまでしっかり作れてる。
改善点
◯ミッドポイントを早めに持ってきすぎたように思う。あれ、もう映画終わり?って思った。予想以上に楽しかったから、時間過ぎるの早いのかなと思った。
◯東京に出てからはかなりダレる。後半部分。ストーリーが進まないから観るのが苦痛だった。障がい者との関わり合いに、物語的に何の意味もなさない。伏線回収エピソードがやたら多いし、そんなの観せられても物語が進まないからわたしは飽きた。
◯主人公が泣くシーンも意味がわからん。いや、言いたい事はわかるんだけど、時系列を飛び飛びにしてて、やたら過去のシーンが長いから、現在に戻ってきた時にはハテナって感じになった。涙の意味は?こうまでして育ててくれた親への感謝なの?
◯後半の様々な演出が余計に感じた。その演出から時系列飛ばすから、余計に話がわかりにくくなる。
自分が脚本考えるなら
主人公が東京に出る中盤始めまでが完璧な作りで、三幕構成の2ndターニングポイントまでがそこで完結してる。だから、中盤以降が超長い結末みたいに感じて、非常に残念だった。
これ60分映画だったら良かった。後半のストーリーは演出含めて削ぎ落として、主人公が東京に出て苦労して、両親の深い愛に気付くで良いのかも。そうすれば、主人公の駅での涙が分かり易いよね。
総じて素晴らしい作品なのには変わりない。観れて良かった。
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