劇場公開日 2024年9月20日

「こんなにも深い親の愛情。でも、リアルタイムでは気づかない」ぼくが生きてる、ふたつの世界 p.f.nagaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0こんなにも深い親の愛情。でも、リアルタイムでは気づかない

2024年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

悲しい

ラストシーンは、この映画を見事に象徴していて、泣ける。場面設定、カット割り、音の効果もうまいし、吉沢亮、忍足亜希子の演技も最高。
映画全体として吉沢亮の手話はネイティブのようで、違和感がなく、感心した。

ふたつの世界とは、「聞こえる世界」と「聞こえない世界」なのだが、「東京」と「石巻」というふたつの世界で成長していく主人公を描いたようにも思える。「思春期、親に反発した世界」と「愛情を感じている世界」のふたつ、と解釈することもできそう。

母親の無私の愛情がとても大きく、強い。主人公に愛情をそそぐ場面がたくさん出てくる。心から主人公のことを思って最善をつくしていた。
だからこそ、予告編にも出てくる「おまえのかあちゃん、しゃべり方、変じゃねえ?」という場面や「こんな家に生まれて来たくなかった!」という場面は、心が締めつけられて、悲しい。
そして後日、愛情をそそがれた場面を思い出して、その時の母親の気持ちを理解した時の、強い感謝の念と後悔の念に共感する。

父親の方も、主人公のことを信頼して「大は大丈夫」と応えたり、石巻に戻って来ないで東京へ行けと勧めたり、愛情が深い。映画「リトル・ダンサー」では、父親が息子の将来のためを思って自己犠牲の行動をとるのだが、その場面を思い出した。

主人公が挫折したり、つらいことが多く描かれる。主人公も観ている人も嬉しくなるような場面は少なく、映画の展開として盛り上がりに欠けるかもしれない。でも、実際には、この主人公は映画の原作になるくらいの本を書いて、成功しているライターである。ライターになる努力と成功をもう少しポジティブに描いても良かったかもしれない。

p.f.naga