劇場公開日 2025年12月12日

「傷つけられる事、傷つける事」Black Box Diaries La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

未評価 傷つけられる事、傷つける事

2025年12月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 自らの性暴力被害を自身の名前も顔も公表して糾弾した結果、各方面からの心無い誹謗中傷、いわゆるセカンド・レイプに晒されながらも闘い続けた伊藤詩織さんが自身の経験と思いを記録したドキュメンタリーです。本作は、日本人監督初の米アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞候補にも選ばれながら、その制作過程での法的・道徳的逸脱の指摘がそれまで彼女を支えて来た弁護士や支援者の中から次々上がり、日本での公開が暗礁に乗り上げていました。もう、これは観る事ができないのだろうと諦めていたところ、日本でただ1館のみでの上映が急遽発表されました。しかも、監督舞台挨拶付きです。支持するにしても批判するにしても、まずは観てからとすぐさまチケットを購入しました。正直言うと、作品そのものもの以上に、伊藤監督が何を語るかを直に聞きたかったのです。

 作品で語られる性暴力・警察の官僚的対応・彼女の懊悩には確かに胸が潰れる思いがした。SNSなどを通じての嫌がらせに立ち向かわねばならないのは耐えられない苦難であったろうし、それでも前を向いた彼女には敬意を表します。

 しかし、元支援者の人々から彼女に向けた批判への明確な意思表示は舞台挨拶ではやはりありませんでした。自身のHPで今回の公開に向けて声明を出しておられるのですが、作品を多くの人に届けるにはやはり、記者会見を開いてあらゆる疑問に対して答えるべきだと思います。犯罪を受けた上にセカンドレイプに晒され、それは辛いかもしれませんが、ジャーナリストを名乗るならば、報道や表現が人を傷つけうる危険への姿勢もしっかり示す責任があるのではないでしょうか。

La Strada
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