「世界最大の「天井のない監獄」・・ 閉じ込められた若者は自由と開放を求めてサーフィンに興じる (ポスター)」ガザ・サーフ・クラブ きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
世界最大の「天井のない監獄」・・ 閉じ込められた若者は自由と開放を求めてサーフィンに興じる (ポスター)
えっ? ガザで?
ええっ?「サーフィン」なんですか?
マジっすか・・・
・・・・・・・・・・・・・
うちの会社(運送業)には
サーファーが何人かいる。
まずは、いったいどうしたことか、せっかくの三重県、=太平洋沿いの海辺の町から引っ越してきた彼、Hクンのことだが、
Youは何しに長野県へ!?
「海なし県で、まさか諏訪湖くんだりでサーフィンをするわけじゃあるまいし w?」と問うてみたところ
「長野県に住めば太平洋と日本海の両方に行けて、好きな波を捕まえられるからなんだ」と。
う〜ん、彼は事もなげに答えるが、驚きの返事だ。目からウロコが落ちた。さすがである。
あとの2人は新潟営業所の所属。
彼らは新潟発で、静岡県(浜松)までの区間を、週に3回、トラックで往復している。もちろん「海が目当て」で。
彼らは、見事に真っ黒に日焼けしている。朗らかで、とてもいい奴らだ。
髪も潮焼けして赤くなり、引き締まった体に、真っ白な歯が眩しい。
サーファーたちは
サーフィンをしたくてトラックに乗り、サーフィンをするために目的地を目指して夜通し走る。
平和だ。
パレスチナで、イスラエルがガザに侵攻し、大規模な地上戦を始めてからすでに4カ月。
テレビでは、壁に取り囲まれた“ゲットー”で、逃げる道さえなく兵糧攻めに遭いながら、爆撃された病院や、土埃まみれの遺体や、絶望的な瓦礫の地平が映っていて、目を覆うばかりだ。
死者はすでに29,000名。
死者の半分は子供。
「ガザ」地区は飛び地だ。
三方をイスラエル軍の壁に塞がれている。開いているところは西に広がる海だけ。
この「ガザ」で「サーフィン」をしている若者たちがいるらしい。
思いもしなかったこの2つの取り合わせを、今回、渋谷の映画館で観て、確かめてきた。
逃れられない運命からの現実逃避の行いでもあるだろうし、
侵略戦争に対する徹底的な拒否。四面楚歌を笑い飛ばす超絶アンチの行動でもあるだろうし、
サーファーである彼らは、国際赤十字の介入で、カリフォルニアから輸入したもののイスラエルに没収されて留め置かれていたボードを彼らは2年かかって取り返し、手に入れる。
爆撃の止まっていた5日間に波に乗り、
その2日前には子供が撃たれた浜辺へとそれでも乗り出し、
自分の子供よりもボードが大切なのさと言いのけて笑い、
娘にもヒジャブを脱がせて板に乗らせる。
それがガザのサーファーたち。
何なんだ、これは。
そもそも、かつて奴隷として虐げられていたヘブライ人たちは、自身、紅海を渡って、強大国家エジプトの支配から逃げおおせて来れたのではなかったか。
あの出エジプトの「海の救いの体験」はイスラエルだけの 占有物なのだろうか。
他民族は、パレスチナ人は、彼らは海を渡ってはダメなのか?
あの日、あの時の戦争では
サイパンの断崖では、
母親は赤子を抱いたまま、奈落の底の岩の浜に身を投げ、
沖縄戦では、島影も見えないのに、後ろから追い詰められた住民は沖に向かって泳ぎ出した。
元安川でも隅田川でも、猛火から逃れるために人々は水の中へ。
沢田教一は川の中の母子「安全への逃避」を撮っている。
パレスチナのガザでは、
若者たちが
それでも、この戦争のさなかにあってこそ、
命の源である水に、そして海に、
人間が遊ぶ。
― この事の圧倒的な《生》の光景に、
僕は帰りの電車で、
まだ言葉化できない衝撃を受けている。
アッ=サラーム・アライクム
اَلسَّلَامُ عَلَيْكُم
(Peace be upon you.)