「社会問題」もしも徳川家康が総理大臣になったら ブレスさんの映画レビュー(感想・評価)
社会問題
考えさせられる内容だった。
今作は、過去の偉人達(徳川家康、織田信長など計10名)が現代に蘇り、その偉人たちによって結成された最強ヒーロー内閣の活躍を描いたコメディ映画だ。
コメディ映画ということで、わちゃわちゃと見ているだけで楽しめた。
特に時事ネタや攻めた内容(風刺)多めだったのが個人的に好印象で、
論破王のLIVE配信、居眠りする議員、大衆に流される国民、などなど。
近年話題に上がる内容の数々をみながら、過去を振り返るような感覚を覚えた。
タイトル(『もしも徳川家康が総理大臣になったら』)
に『もしも』とあるように、今作はもしものお話であり、その中でもコロナ禍のifストーリーである。
新型ウイルス(コロナウイルス)が世界中で流行り、将来への不安や混乱を招いたことは、まだまだ記憶に新しく、未だにその影響の余波は残り続けている。
しかし、この物語ではコロナというウイルスを偉人たちによって即座に対処される。
それによって、この物語の序盤部分でコロナ禍はほぼ終息し、平和な世界が訪れる。
現代の社会では何年も残り続け恐怖を与えてきたコロナウイルスが、30日ほどで対処されたのだ。
現実の日本の政府がもしも、すぐにコロナウイルスへの対策を打ちだしていたのなら……ロックダウンや給付金を即決し行動していたのなら……こんな惨事にはならなかったのではないか。
そんな想いをこの映画からは感じられた。
そんな国に対して反抗的であり切望的な想いは、後半、腐った国の姿を如実に描き、映画鑑賞者(ifではない日本に生きる一国民)である、私たちへとメッセージを届ける。
自分の意思を持たず、流行に流される消費化社会。
有権者でありながら政治に参加しない人々(若者)。
作中のラストでは徳川家康(総理大臣)の言葉に、会場に集まった民衆が耳を傾ける。
その中には今まで世間に流されることなく疑問を抱き、時に苦笑いをしていた西村理沙(新人記者)の真剣な姿もあった。
そしてその後、徳川家康のなき今、徳川家康の言葉に動かされ若者の多くが投票に向かうようになり、政治に関心を持つようになる。
西村理沙(新人記者)は、徳川家康の言葉を受け、その意志を言葉を胸に記者を続ける。
徳川家康という偉人の言葉によって、現代の人々は揺れ動き日本は変わっていく。
ハッピーエンド。
面白い映画だった。
役者さんの演技は迫力があり、時代劇のようなシリアスさを感じたし、近代を舞台にしていることを元にしっかり描ききられたストーリーは圧巻だった。
監督や脚本家の方が『翔んで埼玉』の方々によるコメディ映画ということで、終始面白いネタがあることで、楽しめた。
が、1つ……。
題材がなかなかに攻めた内容だったためもう少ししっかりと描ききって欲しいところがあった……。
徳川家康の言葉は時間が経てば風化して、世間は元通りに戻ってしまわないだろうか?
結局のところ、みんな今までと同じく大衆に流されているだけではないだろうか?
主人公である西村理沙さんは今回の件を経て、元々の夢であったアナウンサーを蹴り、自分の意思で記者を続けるという成長をした、でも他の人はどうだろうか?
西村理沙さんの上司は何か変わったのか? 若者が選挙の投票に行くようになった中での個人、個人の気持ちの変化はどうなっているのか、そういったところをもっと写して欲しかった。
もう一歩先に踏み込んだ、答えが欲しかった。
結局、自分たちは何をしたらいいのか。
消費される世界で、織田信長から豊臣秀吉にみんな移り変えたように、徳川家康の言葉が忘れられる日は近いのでは無いだろうか。
(自分としては、ラスト徳川家康たちの話す場所が舞台の上だっただけに、演劇を見ている気持ちになってしまい……話す言葉も行動も茶番に感じてしまったのだが……。民衆の人たちがそれに真剣に聞き入る姿が何度も映され、そして拍手が巻き起こるのをみて、「こんな批判的なことを思っている自分が間違っているのだろうか?」 と思った。大衆に流されてしまった…… 大衆心理から逃れるのは……難しい。)