「テーマはわかるが、ちと説教くさい」もしも徳川家康が総理大臣になったら おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
テーマはわかるが、ちと説教くさい
原作のビジネス小説は未読ですが、奇想天外な設定とノリのいい予告に惹かれて、公開初日に鑑賞してきました。正直言って、期待したほどではなかったですが、それなりに楽しく鑑賞することができました。
ストーリーは、コロナ禍の日本、首相官邸のクラスター発生で総理大臣を失った政府が、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活させた最強内閣を誕生させ、次々と大胆な政策を打ち出す偉人内閣は、懐疑的だった国民から圧倒的な支持を得ていくが、その裏で不穏な動きが見え隠れし始めるというもの。
開幕5分で、AIホログラムによる偉人内閣誕生というありえない設定に観客を引きずり込む強引さは、おみごとです。もちろん観客もそれありきで観にきているので、科学的説明や実現性にほほぼ触れない潔さは嫌いじゃないです。どう見てもそこに実在しているのですが、すべてAIホログラムだと言うなら、まあそういうことにしておいてあげましょうと大らかな気持ちで観ていられます。
そんなことより、偉人内閣誕生後の超強引な政策実施が痛快です。対抗勢力の揚げ足取りやマスコミの細かい指摘を一蹴し、圧倒的なカリスマ性で改革を進める姿がかっこいいです。しかも、それらがことごとく結果に結びついていくのですから、国民が傾倒していくのも頷けます。要所要所で流れるBGMが「大江戸捜査網」のテーマなのもテンションが上がります。「死して屍 拾う者なし」と、偉人内閣の覚悟が伝わってくるようです。現実の政治情勢と重ね、溜まった鬱憤が晴れるような思いがします。
ただし、おもしろさはここがピーク。以降はやや説教くさくて退屈に感じます。言いたいことはわかるし、その通りなんですけど、それを演説で観客に伝えるのはちょっと違うと思います。やはり映画は映像で魅せてほしいし、感じさせてほしいです。作品の方向性もメッセージも大いに共感できるものがありますし、それをありえない設定を通しておもしろおかしく観せる手法もナイスアイデアだと思います。でも、そのテーマを偉人に語らせるのではなく、観客自らが気づき、感じ取るような展開にしてほしかったです。
キャストは、浜辺美波さん、赤楚衛二さん、野村萬斎さん、竹中直人さん、GACKTさん、高嶋政宏さん、江口のりこさん、池田鉄洋さん、小手伸也さん、長井短さん、観月ありささん、酒向芳さん、山本耕史さん、音尾琢磨さんらで、偉人へのハマり具合がなかなかよかったです。中でも、竹中直人さんの豊臣秀吉と山本耕史さんの土方歳三は、もはや鉄板ですね。秀吉の「心配ご無用!」が聞けたのは大満足です。
共感ありがとうございます。
クライマックスがディベートみたいになってしまったのもさる事ながら、聴いてる国民たちがざわざわ・・位しか反応せず投票率が上がった! だけではカタルシスに欠けましたね。
大江戸捜査網は隠密同心バッサバッサのチャンバラ物なのに、あのBGMはちょっととぼけた感じですよね。