「フランスで高い評価を得ている映画」12日の殺人 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
フランスで高い評価を得ている映画
この映画を最後まで楽しむことができた。フランスでは、随分高く評価されたようだ。きちんと細部まで作りこまれていたからだろう。これまで知らなかった彼の地のこと;
一つは、殺人事件が起きた時、警察が担当する場合と、憲兵隊に任せる場合がある。都市部は警察、周辺部では憲兵隊。警察の担当になったのは、あの美しいグルノーブルの都市部と周辺部のボーダーの辺りで事件が起きたということ。入れ子の国だから、内務省の管轄する警察の事件であったとしても、国防省直下の憲兵隊も横目でみていることになる。例外も多いのだろう。ある種の緊張感がある。
美しい女子大生クララが焼死した事件そのものは、昇進したばかりのヨアンとベテランで家庭に不安のあるマルソーが活躍したが、迷宮入りし、捜査チームも一旦解散した。フランスでは、年間800件に及ぶ殺人事件のうち、2割が未解決とか。
ところが、クララの3年目の命日を前にして、予審判事からヨアンに呼び出しがあった。これが、二つ目のポイント。もう日本では、とうになくなってしまった予審判事の制度があるのだ。日本だと、美しい検事が活躍するドラマはあったが、法廷外で判事が出てくるなんて。予審判事には、捜査の指揮権がある。実際、資料をよく読みこんでおり、捜査の方針をアドバイスして予算を工面する。その再捜査の過程も非常に魅力的だった。あらたなキャリア出身の捜査員も投入される。捜索する警察と、本来ならば裁判をすればいい判事が交錯して捜査が進む。そうしたところがフランスで評判を呼んだ背景か。
不思議なことに、フランスと日本の警察制度には共通性がある。東京とパリには、警視庁があり、パリの方は最近変わったみたいだけど。日本の警視庁の捜査第一課長はキャリア出身でないこと。幕末、フランスの制度が導入されたことが関係しているのか。
自転車の好きなヨアンがベロドローム(競技場)でのルーティンの訓練から、チームを去ったマルソーのアドバイスに従って、ツール・ド・フランスに出てくるような山道に挑戦するところがよかった。その昔、ビートたけしがドラマ「張込み」で、ベテランの巡査部長を務め、若手エリート警部の緒形直人と共演したことを思い出す。女性ヒロインの鶴田真由が魅力的だったことも忘れられない。