「フランスにおける黒猫ってどれくらい不吉なのでしょうか」12日の殺人 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
フランスにおける黒猫ってどれくらい不吉なのでしょうか
観終わって「何もかもがスッキリした!」というタイプの映画ではないので、好みの合う合わないは分かれる作品だとは思う。
生きたまま焼かれた少女。怨恨が疑われることから、彼女の異性関係が捜査対象になるが、排除しようとしても、どうしても予断が入り込む。その予断も、刑事一人一人が抱えている状況や、事件そのものへの思い入れによって違う様子も丁寧に描かれる。
やがて、予想以上に容疑者が増えていくにつれて、被害者側を責める論調や、犯人を決めつける者も出てくるのだが、それを見せられている我々観客もそれに共感しかけたところで、被害者の親友から、投げかけられた言葉が強烈だった。
彼女が例えどのような男性と付き合っていたにしろ、生きたまま焼かれなければならない理由にはならないし、親友や両親にとっては、かけがえのない人だったという当たり前のことも丁寧に描かれ胸を打つ。
作品の中で「犯罪を犯すのも男性で、それを捜査するのも男性」という言葉が出てくる。本当にそうだろうかと思いながら調べてみると、犯罪の9割は男性が起こしていた。その割合の多さに、正直驚いた。同時に「本当にそうか?」と思った時点で、自分も無自覚で無反省な男性優位思想にどっぷりだったのだと反省した。
ただ、この映画における性差の問題は大きな柱の一つだが、そこに単純化させていないところがこの映画のよさだと感じる。
例えば、日常生活の中では、明快に何かが解決することばかりではない。モヤモヤを感じていることも、何となくうやむやな着地のまま、次の新たな問題に向かわなくてはいけないことも多い。けれど、解決はしなくても、その問題と向き合ったことで、自分の中に生まれたわずかな前向きな変化を見つけることもある。
その様子が、主人公の趣味としている自転車になぞらえて表現されているところなど、とてもよかった。
また、途中で退場した同僚のその後も、象徴的な描き方で多くを語らない所もよい。
あえて、問題の解決を中心に持ってこないことで、人々の複雑な心の動きを複雑なまま提示する企てにより、味わい深い作品になっていると思う。(ここが評価の分かれ目かも…)
ところで、この映画の中では、黒猫ばかりが登場するのだが、フランスでは、黒猫はガチで不吉の象徴なのか、それとも迷信程度なのか、そのニュアンスにとても興味がわいた。
共感&コメントありがとうございます。
男性の暴力、圧力に関しては終始挿し込まれてましたが、入れ方がコロコロ変わってくどさを軽減してる印象。後半は班長を圧倒する判事と新人の登場で、自分は男ながらもちょっとスカッとしました。
こんばんは。
コメントありがとうございました。筆(?)が滑ってしまった,と思ったけど救われました。
犯罪に限らずセクハラだって男性(役)の加害ケースが圧倒的なようだけど,害をなしている「男」はジェンダーなのかセックスなのか?私の中では,答えは風に吹かれています。