「実は捜査がメインではない」12日の殺人 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
実は捜査がメインではない
実際にあった未解決事件を題材にしたミステリーがスッキリと終わらないことはわかっている。犯人はコイツだろうと匂わせる(もしくはほぼそうだろうと思わせる)が、決め手に欠けて不起訴になり(もしくは逮捕にいたらず)終わることが多い。でも、面白い作品も多いから観てしまう。
若い女性が焼かれて殺された事件の容疑者・参考人はすべて男。しかも全員被害者と体の関係があった。ちょっぴり「ツインピークス」(古い!)を連想させる設定。
未解決事件を扱ったミステリーのはずだが、取り調べや推理、科学捜査がメインとは思えなかった。むしろジェンダーの問題や、捜査する側の心の問題を扱った物語に見える。殺された彼女は被害者。でも彼女が多くの男性から恨みを買っていたんじゃないかと見込み捜査する刑事たちの感覚に同調しそうになってしまう。彼女が悪いと思っていたわけではないが、被害者の友人の言葉にハッとさせられた。そうか、こういう映画なのか。
もちろん事件は未解決のままで終わっていくのだが、実はモヤモヤはあまり残らない。あの刑事たちが少し前向きになれたからなんだろう。未解決のはずなのに。しかも本当はアイツなんだろ!的な余韻も残さないし。
それにしても自分のパートナーが浮気していてもそれを受け入れる感覚がフランスっぽいなと感じてしまった。そこに嫉妬という感情が沸き起こらないと事件にはなりづらい。あの刑事たちの戸惑いに共感してしまった。
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