「アクセルとブレーキを踏み間違えたぁっ💥💥🚑!!! 「アメコミ映画史上最低作品」と謗られている様だが、この「可愛げ」こそアメコミ映画に必要なものなのだ!!…多分。」マダム・ウェブ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
アクセルとブレーキを踏み間違えたぁっ💥💥🚑!!! 「アメコミ映画史上最低作品」と謗られている様だが、この「可愛げ」こそアメコミ映画に必要なものなのだ!!…多分。
“親愛なる隣人“スパイダーマンの世界を拡張するダークヒーロー映画「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)」の第4作。
舞台は2003年のNY。救急救命士として働くキャシーは救助中の事故がきっかけとなり、未来予知の能力を手に入れる。
ある日、キャシーが地下鉄に乗り込むと、謎の黒装束に身を包んだ男が3人の少女を殺害するビジョンが目に飛び込んでくる。3人を救うため、キャシーは彼女らを地下鉄から下車させるのだが…。
主人公、カサンドラ・“キャシー"・ウェブを演じるのは『ソーシャル・ネットワーク』『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のダコタ・ジョンソン。
キャシーに救われる3人の少女の1人、ジュリア・コーンウォールを演じるのは『アンダー・ザ・シルバーレイク』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のシドニー・スウィーニー。
キャシーの相棒であるベン・パーカーの義妹、メアリー・パーカーを演じるのは『バレンタインデー』『ザ・ハント』のエマ・ロバーツ。
第45回 ゴールデンラズベリー賞において、最低作品賞/最低脚本賞を受賞🌀🌀
1億ドルの製作費に対し興行収入は1億50万ドルと、大爆死してしまった本作。興行面だけではなく批評面でも総スカンを喰らっており、一部では「アメコミ映画史上最低作品」とまで囁かれている。
本作への出演によりラジー賞を獲得したダコタ・ジョンソンは心が折れたのか「もうスーパーヒーロー映画には出ない」と宣言しており、誰にとっても得をしない呪物の様な映画になってしまった😢
そもそも、「マダム・ウェブを主人公にした映画」なんていう企画からして既に爆死臭が漂っている。
これまで『スパイダーマン』の映画は10本くらい観ているし、「MCU」だって30本以上は観ているはず。PS4の「スパイダーマン」のゲームだってプレイした。それなのに、「マダム・ウェブ」なんてキャラクター知らねーぞ!!
「ヴェノム」を主人公にするというのは良くわかる。『スパイダーマン3』(2007)に登場していたし、それでなくとも人気のキャラクターとして定着している。それに引き替え、マダム・ウェブって誰なのよ。今まで1秒たりとも出て来てないぞこんな人。
こんなアメコミ原作を読んでる人にしかわからん様なキャラクターをなぜいきなり主役に据えてしまったのか。全然知らんという意味では『モービウス』(2022)もそうだったのだが、まだモービウスは吸血鬼という事もあり戦闘描写に華があった。マダム・ウェブなんて未来が見えるだけの普通のお姉さんじゃねーかっ!!
マジでこの企画のどこに勝機を見出したのか、GOサインを出したマーベルとSONYの重役に問い詰めてみたい。
さて、映画の内容はというと。
世間から総スカンを喰らっている様だが、そこまでブーブー言う程ではないだろうと擁護したくなる。というか、ところどころでかなり大爆笑してしまう位にはこの映画を楽しめた🤣
…まぁ製作陣が意図して笑わせようとしていたのかはわからないが、結果として客が笑ってくれてるんだからオーライっしょ。仲間内でビール飲みながら観たりするのには最適な作品だと思う。手元に“ちょっと待てぃ‼︎ボタン“でもあれば尚良し。爆笑ホームパーティーが開けるぞ!
本作の問題点であり、同時にチャームポイントでもあるのは、ストーリーラインがまるで定まっていないところにある。
「未来予知が出来る主人公は、電車に乗り合わせただけの見知らぬ少女達がこの後殺害される事を知ってしまう。さて、主人公は彼女達を守る事が出来るのか…」と、言葉にすれば非常に単純明快なストーリーである。このフォーマット自体はなかなか優秀で、ちょっと中身を変えれば何本でも映画が作れてしまえそう。
問題はフォーマットにあるのでは無い。少女に襲いかかるヴィランがスーパーパワーを持っているのにも拘らず、主人公側にはそれに抵抗する材料が全く無い、という所にある。
構造としては『ターミネーター』(1984)に似ていなくもないのだが、まだカイル・リースはレジスタンスの一員で戦闘に長けた人物なので、ターミネーターに対抗出来る可能性はある。しかし、前述した通り、本作の主人公キャシーはちょっと先読みが出来るだけのお姉さん。彼女が保護する3人の女の子も、全員ミュータントでもなんでも無い普通の少女たち。戦力差で言えば100vs1どころか100vs-100くらいある。こんなん絶対勝てっこないのである。しかも、行き当たりばったりで少女たちを救い出したのだから、当然キャシーには何の策も無い。イエローキャブを乗り逃げしたり、とりあえずどっかの森に逃げ込んだりともうめちゃくちゃ。
ちなみに、この映画のNY市警はポンコツの極みであり、指名手配中であっても、その手配犯がベコベコボコボコのクソ目立つタクシーに乗っていても、どこでも好きな所に移動出来る。なんと国外を離れてペルーに行く事すら可能なのだ!!お前ら、2年前に9.11テロがあったの忘れてんのかっ!?💦💦
キャシーと3人娘が合流した辺りから、映画はカオスの極みを見せ始める。
キャシーはテンパリMAXで五里霧中、少女たちもいきなり命を狙われて五里霧中、ヴィランのエゼキエルもターゲットを取り逃して五里霧中、脚本家はどうお話を転がして良いかわからず五里霧中、監督もこの映画はこれで良いのかわからず五里霧中、役者陣もどう演じて良いのかよくわかっておらず五里霧中、そして観客も「俺たちは今一体何を観させられているんだ…」と五里霧中。合わせて三十五里霧中なゴリゴリ展開へと物語は発展して行くのだ!
みんなどうすれば良いのかよくわかっていないからか、心なしか役者さんたちの動作がゆっくりもったりしている様な気がするぞ!!
今後の見通しが全く立たないキャシー。ヴィランの猛毒攻撃対策として、とりあえず少女たちに心臓マッサージを教える。…やっとる場合かーーッ!致死性の猛毒なんだから意味ねーだろっ!!
母親の手記の存在を思い出し、ベコベコのタクシーで自宅に戻るキャシー。…戻っとる場合かーーッ!いや戻るにしても女の子を置いていったらあかんやろがい。
命を狙われている事も忘れ、ダイナーで踊りまくるガールズ。…踊っとる場合かーーッ!!…と、まぁこんなん言ってたらキリが無いからそれはもう良いとして、我々観客はあのダークスパイダーマンを倒す方法を知っている。そう、少女たちは「スパイダー・ガールズ」として力に目覚め、エゼキエルを打ち倒す運命にあるのだ。
母親が研究していた毒蜘蛛にヒントがあると考えたキャシーは、ペルーへと旅立つ事を決める。ここで当然観客は「なるほど。ペルーで女の子たちがスパイダーパワーに目覚めるのね🕸️」とピンとくる。それでスパイダー・ガールズとなった3人がエゼキエルを倒す、これなら綺麗に物語を終わらせられるじゃん!勝ったッ!『マダム・ウェブ』完!
…ぅおいっ!!女の子は置いて行くのかい💦しかもその子達はベン・パーカーの家に置いていくのかい💦身重の義妹が巻き込まれるかも知れないとは考えないのかい💦
ここが本当に意味不明で、多少無理があったとしても彼女たちにスパイダーパワーを注入してしまえばエゼキエルの見た予知夢の再現は成る訳だし、そうすればダークスパイダーマンvsスパイダー・ガールズというオタク大喜びの一大クライマックスだって描く事が出来た筈。何故そうしなかったのか、私には本当に理解が出来ません。理解不能!理解不能!理解不能!理解不能!
彼女たちのコスチュームだって、衣装さんがわざわざ手間をかけて作ったんだろうし、ちゃんと作中で着せてあげれば良かったじゃんねぇ。勿体ねー。
何故か急にダークスパイダーマンの守備力が低下。看板の下敷きになった程度で死ぬのかお前…。そして“あの“心臓マッサージがキャシーの命を救うという天才的伏線回収っ!これはすごい脚本だぞうっ!!
と、最後までグダグダなヘッポコ映画だったのだが、不思議と読後感は悪くない。キャラクター、製作陣、そして観客と、「どうすりゃ良いのこれ?」という三者の心の声が共鳴する事でグルーヴ感が生まれ、それがこの映画をさらに高いステージへと昇華している…のかは知らんが、連続するとんでも展開はかなり大爆笑!脱力感のおかげでストレス値が下がった様な気がします。
そして何より、鉄人キャシーの殺人的頑張りに拍手を送りたい👏
「アクセルとブレーキを踏み間違えたぁっ〜〜!!💥💥🚑」と言わんばかりの轢き逃げアタック。しかも2度も!事もあろうに盗難車、しかも救急車で!!自分は救命士なのに!!!
必殺技が轢き逃げのヒーローっていうのは新しい。唯一無二。もしかして、これは高齢者ドライバーによる交通事故を揶揄した社会派コメディである可能性が微粒子レベルで存在している…!?
「美女がテンパリまくる系映画」なんてジャンルがあるのかどうかは知らんが、本作は間違いなくその部類に入る。『ファイト・クラブ』(1999)のクライマックスしかり、人が困って右往左往している姿というのはそれだけでなんか面白いし、それが美女なら尚更映像映えする。
2時間少々のランタイム中、常にテンパリまくって我々観客を喜ばしてくれたダコタ・ジョンソン。彼女以外の女優で画が持ったかどうか。素晴らしい仕事ぶりだったと思います。ラジー賞を取っちゃったけど、これに懲りずどんどんアメコミ映画に出演して欲しいものです。
そう言えば、舞台となった2003年と言えばあのアメコミ映画史上最高傑作との誉れも高い『スパイダーマン2』(2004)が公開される前年ではありませんか。
そう考えると、20年前の映画である『スパイダーマン2』の方が映像のレベルが上ってどういう事や一体!!と問い詰めたくもなりますが、まぁこういうヒーロー映画もあって良いじゃあないですか。正直なところ、もう一回観たいかどうかと言われると全然そんな事は無いのですが、このゆるさ、グダグダ具合こそSSUよ!こういう抜け感というか可愛げこそが、今のMCUに足りないものなんじゃないでしょうか。アメコミ映画なんてこんなもんで…まぁ良くはないけど、このくらいの気楽さは大切にして欲しい。
果たして、メアリー・パーカーが産んだ赤ん坊は後にスパイダーマンとなるのでしょうか。いやでも確かこの世界にはスパイダーマンは存在してないんだよな…。じゃああの赤ん坊は一体…?
フフフ、この五里霧中さこそSSUよ!
※コロンビア・ピクチャーズのお馴染みの自由の女神ロゴが100周年記念バージョンになってましたね☺️…いや100周年にこんな映画作っとる場合かーッ!💢