映画 ◯月◯日、区長になる女。のレビュー・感想・評価
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古い政治を変える立場になるために古い選挙戦を戦う
杉並区の市長選挙を、舞台演出家で杉並区在住のペヤンヌマキさんが追いかける。ペヤンヌさん自信は、政治への関心が薄かったが自宅が道路拡張計画で立ち退きを迫られ、政治に関心が向くように。政治を自分ごととして捉えること、思想やイデオロギーよりも生活の実感レベルで捉えていく姿勢が作品全体に漂っている。
候補者の岸本さんは国際的に活動するシンクタンクNGOなどに所属していた方で、日本の選挙運動は不慣れである。この選挙制度や慣習が立ちはだかる様がやはり見どころである。旧態依然とした政治を変えたいと立候補しているのだが、変える立場になるためには選挙を勝たないといけなく、そのためには旧態依然としたやり方に乗っからないと支持が広がらない。この矛盾をどう解決するかが選挙戦は難しいということなんだろう。
選挙や政治のドキュメンタリー映画は近年増加してきているように思える。いずれも日々の報道とは異なる視点を見せてくれるので、学びが多いし、ドラマチックな要素が多い。政治はつくづく、(いろんな意味で)人間の営み何だなと思う。
映画のファーストショットはペヤンヌさんの飼っている猫だ。猫が随所にインサートされるので猫好きにもおすすめだ。
地方に住んでいる人には?のドキュメント
CSで録画視聴。
監督が杉並区出身ということもあり、杉並区長選挙の密着ドキュメントを
撮影。岸本氏が女性区長になる舞台裏をしっかり描いていたなと感じた。
いわゆる観察映画っぽいのか。
東京に住んでいる人なら納得できるが、では地方に住んでいる人ならピンと
こないドキュメントなのかもしれない。
女性でなくては変えられない?
自分たちの街が壊されて行くと感じていた杉並区の人々が2022年の区長選挙に押し立てたのは、それまで海外で環境・人権問題に取り組んでいた岸本聡子さんでした。本作は彼女を中心とした人々の選挙への取り組みを記録したドキュメンタリーです。
この度の衆院補選で自民党が全敗しても、日本の政治・国民の意識に僕は希望など持てませんでしたが、本作を観て「なるほど、こうして蟻の一穴が空くのかも」と僅かな希望の火が灯りました。まず、意思を固めて立ったリアリストの岸本さんが何といってもカッコよく、それが様になってるのが更にカッコいいのです。自民党に担がれて出馬した芸能人落下傘候補とは一味も二味も違います。そして選挙結果は、それこそフィクション映画としても出来過ぎたお話でした。
近年、選挙を取り上げたドキュメンタリー映画を幾つか目にするようになりましたが、多くの大人があらゆる物を背負ってぶつかるガチンコ勝負は、やはり単純に面白いなぁ。
それにしても区長候補も、選対事務局長も、一人街宣で応援する人も、新区長誕生に励まされて区議に立候補する人も殆どが女性というのが印象的でした。そう、我々は既得権益にしがみついているジイサン達にはもうウンザリしているのです。
対話の大切さ
2022年6月の杉並区長選挙を記録したドキュメンタリー。人口57万人、有権者47万人の首長を選ぶ選挙でわずか187票差で現職区長を破った岸本聡子と、彼女を選び、ベルギーから呼び、支えた住民たちの様子を映した作品。
東京都杉並区在住のペヤンヌマキ監督が、自分の住んでいるアパートが道路拡張計画で立ち退きの区域だと知り、止めさせる方法を調べ始めた。地域運動に参加し、区議会も傍聴したところ、田中区長が居眠りしたり、質問の途中にスマホをいじっていたりと、がっかりしたため、区長選挙まで半年を切った時から、それまで無縁だった選挙や政治の世界の取材を行い、候補者や支援者たちと合意形成のため対話を積み重ねていった様子を映像に収め紹介している。
主題歌には、杉並区民で昨年の選挙で区議となったブランシャー明日香がつくった応援歌「ミュニシパリズム」を使っている。ミュニシパリズムとは、地域に根付いた自治的な民主主義や合意形成を重視する考え方の英語だそう。
ペヤンヌマキ監督と弁護士・三輪記子さんのトークショー付きの回をシネマ尾道で鑑賞。
区長だけ変わっても区議が変わらないと、って思って観ていたら、作品の最後に23年4月の杉並区議選挙の結果も紹介され、48名の定員に対し、24名の女性議員構成となり、現職が12名も落選したとのこと。区長就任の所信表明に対して誹謗中傷してたしょうもない区議など減ったのかな、岸本区長も多少区政運営がやりやすくなったのかな、って思った。
今回はうまくいった例だけど、うまくいかないことの方が多い、って言われていたが、その通りだと思う。現に、今年の都知事選では応援していた候補は落選だったそう。
同級生で友人の弁護士・三輪記子さんが司会的にトークショーを仕切られていたが、彼女は自分が7回司法試験に落ちた事を紹介され、続ける事、あきらめない事の大切さを語られていた。ほんとそうだなぁ、って思った。
監督が、岸本さんの素直な感想として、民主主義を取り戻すと公言し、私利私欲を追求しない人、当選しても涙ひとつ流さなかった、こんな人に初めて出会った、らしい。
そんな政治家が多くなれば良いな、って思った。
なるべく多くの人に観て、考えてもらいたい、そんな作品です。
民主主義の勝利
民主主義が勝利する素晴らしい映画でした。政治にとって対話が大切なことも教えてくれます。私自身、R3.3まで6年7か月杉並区に住んでいましたので、杉並区は第2の故郷と言っても過言ではありません。この映画では、岸本聡子さんが当選した瞬間と大きな木が映し出された瞬間、胸が熱くなりました。杉並区には大きな木がたくさんあります。私は大きな木に対して尊敬の念を持っています。長い間、文句を言わずしっかりと根を張るという行為をしていることに対してです。この映画を見て現在も杉並区の方が自分らしくイキイキと生きている姿を見て嬉しくなりました。この映画を製作された監督及びスタッフの方に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
元気が出ました
新区長誕生の裏側で多様な人と意見が交錯して昇華してゆく過程が垣間見れました。
自分もいい歳ですが、岸本さんを見習って考えをきちんと言葉にして発信して行動しようと勇気づけられました。
ペヤンヌマキ監督さんはとても話しやすくて、何でも相談したくなりそうな方ですね。老婆心ながら、あまりため込まれぬようご自愛ください。
187票差で当選。勇気・元気・希望をもらえました!
特に最近の政治状況を見聞きすると、何一つ先に希望の持てない事ばかりで「諦める」という感情に押しつぶされそうになっていました。
地方に住む私も、2022年の東京都杉並区の区長選挙戦の情報を聴いてしばらくSNSで追いかけていました。選挙結果は岸本聡子さんが当選。
その選挙戦の様子がドキュメンタリー映画になるということで楽しみにしていた作品。
監督は杉並区在住の劇作家・演出家ぺヤンヌマキさん。たまたま彼女が長年住むアパートが道路拡張計画により立ち退きの危機にあることを知り、止める方法を自身で調べ動き始めたのが本作制作のきっかけ。政治に全く興味も関心も持たなかった彼女から見た選挙を追った映像も新鮮でした。
もともと杉並区は市民活動が盛んな地ではある様だったけれど、今まで自分たちの手で区長を送り出すことは残念ながら出来ていなかった。内心、今回も無理かもしれない?との思いも持ちつつの選挙戦が、日を追う毎にもしかすると行けるかも!と思えるくらいに雰囲気が変って行く。応援に入る区民の皆さんの熱量に比例しているのが良くわかり面白かったです。
岸本聡子さんは欧州で20数年間国際政策シンクタンクNGOトランスナショナル研究所の研究員として活動。「ミュニシパリズム」(地域に根付いた自治的な民主主義や合意形成を重視する考え方)を身に付けた岸本さんだからこそ出来ることが多く有るのではないかと。
今までの20年間は色んなことを勉強して来て、これからの20年間はこの日本を良くするために頑張る・・(というような事を話していたと思う)と強い思いを語っていたのが印象的かつ、杉並区がどんな風に変って行くのか楽しみでもあります。当選後の初登庁日に颯爽と自転車で登場するのもらしくて恰好良かったですね。
映画中でも一人街宣を楽しそうにやっていたけれど、2024年7月の東京都知事選でも岸本さんは一人街宣をして、街行く人たちに「選挙に行こう!投票率アップ!」と楽しそうに訴えかけています。こんなことが出来る政治家って今まで居なかった、新しいタイプでますます期待が増します。
素晴らしかった
杉並区長選挙のドキュメンタリーで、枡野書店がある南阿佐ヶ谷の場面がたくさんある。自分にも所縁があるので引き込まれる。今現在、東京都知事選を来月に控えており、自民党候補が地方の補選や市長選などで立て続けに負け続けていて、この映画のように政党の支持がなくても本気の市民が当選させる運動が各地で起こっている。杉並区は投票率が高まったことも勝った原因なのだけど、地方の選挙は投票率が低いままで自民党候補が負けていることだ。これまで漠然と支持されていた自民党がいよいよ見限られてきている感じだ。9月にある自民党の総裁選は萩生田あたりが総裁になって今以上に自民党がボロボロになったらいい。
岸本さんが区長になって、議会でおじさんに意地悪されていてどうなることかと思ったら、岸本さんを応援していた人たちが区議会議員に当選しまくって、素晴らしかった。希望の光のような素晴らしい選挙だ。
「○月○日、見て元気になる映画。」
2022年の杉並区長選挙の過程を追った、というか伴走して駆け抜けた短くも熱い日々の記録。
そのポスターや題名からトンガッた映画かと思って見たら、極めてしなやかな感触の作品だった。
そして、杉並のランドマークとしてドローン撮影もされ住民から愛されている大樹のように、すっくと一本スジが通っている。
選挙の立候補者と支援者の関係は候補擁立に尽力した支援者のほうへ発言権の比重が傾くように私は感じていたが、ここでは対等に議論がなされる。
そして候補者の“愚痴”も丁寧に拾って、陣営内部の本音と本音のぶつかり合いも隠さず明かす。
選挙結果は判っているが、勝利が確定した瞬間はやはり感動的だ。
私はかつて、選挙で当選した共産党候補の事務所で万歳三唱をしている光景をネットで見て違和感を覚えたことがあったが、岸本陣営の「バンザーイなしよ」は当然といえば当然ながら清々しくて心地よい。
187票差の勝利。民主政治の要諦は「敵とともに統治すること」とはいえ、そうしたあり方を脅かす勢力もおり、岸本効果で杉並区議会は男女同数を実現させながらも順風満帆とは言い切れないようだ。
立候補を「出馬」と言って選挙戦を競馬のようなレースに見立てたり、候補者を「神輿」に例えたりする言説は、すべての人が当事者である民主主義を担保すべき選挙本来の姿を見えにくくしている。
本作は、この国の選挙が総じて民主主義のための選挙であることを今更ながらに思い出させてくれて、元気が出て勇気と希望が湧いてくるお薦めのドキュメンタリーだ。
こういう戦はステキだ
選挙のこととか、政治のこととかよくわからないけれど、自分たちの住んでる街を守りたいんだという、地域の人たちの情熱は伝わった。
願って、行動していけば、必ずついてきてくれる人がいて、その人たちの輪を広げていけば、また、戦にも勝てるんだということが分かった。それに、政治ってそういうもんだと思った。
そこに生きる住民たちの思いに応えていくのが、政治家の役目だと思う。
政党とかよく分からないけど、党を超えて、区長を支えたいんだと考える人たちが区議となったことは、すごいことだと思った。
ぜひ、頑張ってほしいと心から思う。
中高校生こそ観るべきドキュメント
選挙の結果を知ってはいても、当選シーンはとても感動的。“今回は落選だろう”と次回を見据えていた当人のあっけらかんさが印象的でした。
そして何と言っても区長選後の区議選結果が圧巻で、今後、旧態依然とした選挙運動へも様々な変化をもたらすのだろう。
しかし本当に大事なのは“岸本聡子”を選択するまでの道程なのではないだろうか。
まだまだ低い投票率ではあるが、旧態然とした御輿ではなく希望を担ぎ上げた陣営を支持した杉並区民には感謝したい。
時系列通りなのだろうが、希望や興奮の共有でカタルシスに導く監督の編集能力はかなり凄まじい。カタルシスに満足する訳にはいかないが。
普通の人が動かす地域政治
公共政策の研究者が杉並区長選に立候補して当選を果たすまでを追ったドキュメンタリーです。もともと政治活動をしているわけではない普通の人が選挙活動に参加していくところが興味深かったです。いろんな人の意見をまとめるということの難しさを感じました。結果はわかっているのに当選が決まるまでは見ているこちらもドキドキしました。不安定なカメラ、たびたび登場する監督のペット、駅名を連呼する微妙な曲など、随所に素人っぽさがあふれているのですが、地域政治に希望を感じさせてくれる作品でした。
一般人の目線での草の根活動の素晴らしさ
杉並区長選挙の結果も知らずに見ました。そもそも、監督が一般人の視点で将来、立退の事を知り杉並区政を知り、岸本さんと出会い 草の根運動に関わり まさか最後 187票差で現職に勝利、ご本人も 本当は当選するとは思わなかったと話してるのも本音だと見てる自分も感じるくらい入り込んでしまいました。ずーと満席の意味がわかりました。1つになれば政治に風穴を開けることができることを証明された映画です。
ドラマチックなドキュメンタリーに涙する
2022年6月に行われた杉並区長選挙に立候補した岸本聡子現杉並区長の出馬から当選までに密着したドキュメンタリーでした。昨年来、「劇場版 センキョナンデス」や「NO 選挙,NO LIFE」、「ハマのドン」など、政治や選挙関連のドキュメンタリーをちょくちょく観るようになりましたが、選挙に出馬したご本人にスポットを当てた作品は本作が初めてでした。そのため、候補者及びその支持者の生の声がふんだんに聞けて、非常に興味深かったです。特に岸本聡子氏は、投票日の僅か3か月ほど前にベルギーから帰国したばかりであり、市民団体が招聘したため、特定の政党が丸抱えで応援した訳でもなく、かつ出身も横浜で杉並には縁のない方だったこともあり、選挙戦は試行錯誤の連続で、陣営内部でも意見の対立が頻繁に発生していたことが描かれていました。本作はそういった内幕も余すところなく伝えており、それでも投票日に向かって選挙戦を戦っていく”素人集団”の姿は神々しくもあり、終盤に行くに従って観客の感情をも盛り上げていく創りになっていたのは、ペヤンヌマキ監督の手腕のなせる業だったと感じられました。
そして迎えた投票日翌日の開票日。現職区長だった田中良氏との大接戦を伝える終盤は、ドキュメンタリーと言うよりドラマそのもの。刻々と発表される中間集計では、岸本、田中両氏が同数で並走。最終的に187票の差で岸本氏が勝利したシーンでは、映画を観る前から岸本勝利という結果は分かっているにも関わらず、感動してもらい泣きしてしまいました。
最後に岸本氏の政治に対するスタンスについて拙い考察を。彼女は元々欧州の国際的なNGOで環境問題などに取り組んでおられたようですが、政治に関しては未経験。そんな人が、誘いがあったとはいえ何故突然区長選挙に出馬したのか?作中いくつかコメントがありましたが、一番の理由は「日本を民主化したい」という動機が最も印象的でした。ここだけ切り取ると、日本はとっくに民主主義じゃんと思いがちですが、例えば本作の舞台となった杉並区では、住民が知らぬ間に道路建設の計画が進められ、いずれ住民が立ち退かねばならぬような事態に陥っている箇所が複数あったそうです。
勿論行政側は合法的な手続きによって都市計画を遂行しようとしているのですが、民主主義、特に地方自治の本来的な原則を踏まえれば、住民の意思が反映されていない行政行為は、民主的な行政とは言えないということではないでしょうか。そういった危機意識を持った市民団体が岸本氏を招聘し、岸本氏側も祖国である日本の”民主化”のために働きたいという意思を持っていたことから、出馬に至ったというのが動機であり経緯のようです。この辺りの話、身近でありながら具体的に何をしているのか分からない基礎的な自治体の行政について、住民一人一人が関心を持つことこそ、真の民主化の第一歩なのではないかと思った次第です。
また、本作のキーワードともなった「ミュニシパリズム」についても触れておきます。「ミュニシパリズム」とは、「地域に根付いた自治的な民主主義や合意形成を重視する考え方」のことと説明されており、まさに上記のような都市計画が、住民合意の下に民主的に決定されることということになります。概念的には私も大いに同意するところなのですが、如何せん耳に全く馴染みのない言葉であり、これが日本に根付くためには、適切な翻訳語が必要なのではないかと思ったところでした。
最後にテーマソングについて。杉並区民であり、後の統一地方選挙の杉並区議会選で区議会議員になられたブランシャー明日香さんが作詞・作曲した「ミュニシパリズム」という唄を、黒猫同盟(上田ケンジと小泉今日子のユニット)が「黒猫同盟のミュニシパリズム」と題して唄っています。まさかキョンキョンの唄が聞けるとは思っていなかったので、望外のプレゼントでしたが、やはり「ミュニシパリズム」と言う言葉が今ひとつピンと来なかったのがチト残念なところでした。。。
そんな訳で、ピンと来ない部分はあったものの、ドキュメンタリーでありながら非常にドラマチックなストーリーになっていた本作の評価は、★4とします。
ミュニシパリズムとは何かを問う映画
今年初映画「○月○日、区長になる女」をポレポレ東中野で見てきました。昨日ロードショーで当面満席とのこと。私が住む杉並区は人口57万人、有権者数47万人なのですが、2022年6月の区長選挙はわずか187票という僅差で、もともとオランダに本拠がある国際NGO団体にいて選挙のわずか2ヶ月前に帰国した岸本聡子さんが現職で4期目を目指す田中良さんを破りました。爾来杉並区は市民運動が盛んな土地柄でかつ田中区長が2021年の緊急事態宣言下に群馬県に支持者とゴルフ旅行に行っていたなど言動・区政に批判があったとはいえ奇跡的な結果でした。この映画は以前は政治に無関心だったがたまたま都道の延長計画の区画整理地に住んでいた脚本家が区政や岸本聡子さんに興味を持ち、撮り貯めた映像をまとめたものです。途中の岸本さんと活動歴ン十年の市民運動家との軋轢・葛藤・昇華がリアルに小気味良く描かれていました。当選確定時のシーンは感涙もの。上映後のトークも勉強になりました。
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