クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件のレビュー・感想・評価
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脅威の名画
画面が暗い。しかし、その闇の深さに吸い込まれる。誰が喋っているのか視認しづらいほどの遠景ショットの多用に加え、暗くてそもそも顔が見えない、そしてエピソードが線でつながっておらず、点の集積であるようなこの作品は分かりづらいが、観るたびに初めて観るような感動を覚える。なぜ少年は少女を殺してしまったのか、明確な裏切りを知ったわけではない、若さゆえの勇み足もある、しかし、その不明瞭な動機は、当時の台湾の不透明さを背負っているようでもある。本作は中国から渡ってきた外省人の家族を描くが、本省人と外省人の争いではなく、外省人の若者たちの争いが描かれている。大人たちは本土に帰れるか不安に感じ、しかし子供世代はすでにアメリカ社会への憧れが芽生えている。世代によって向いている方向が全く逆であるのは興味深い。台湾の置かれた国際情勢がその親子関係にも現れているように思える。理不尽が理不尽を呼ぶ展開だが、確かに世界はこうなっていると納得させられる。何回観ても圧倒される、とてつもなくすごい作品だ。
もっと「衝撃」を感じたかった
最近ではそんなことはなくなってしまったが、数十年前は未成年者の殺人といえば衝撃的な出来事だった。今の感覚では、「殺人犯は3歳児」と似たようなものと思えばいい。
この衝撃を本作の監督も受けたわけで、それを映画にして同じような衝撃を観る者に与えようとした。
しかし、十代後半の犯行ではもう当時ほどの衝撃はなく、時代の変化による影響で物足りなく感じる。
その一方で「変化」という意味では、台湾にとって大きく変化し続けている時代であり、未成年者による凶行もその一部で、そのことに衝撃を受けなくなってしまったこともまた、続いている変化の一部なのかと思う。
多くの人物が自分の利益しか考えず、不正、不義を平気で働く。誠実さや高潔さなんてものは欠片も存在しない。
権力を持てば好き放題に振る舞える。力を持った者の責任なんてものもない。
どこかの国と国民性を暗喩しているように見える。
それが批評家などにウケている理由かなと思うけれど、台湾事情に詳しいわけでもなく、ましてや過去のことともなると更に分からないので、個人的にはもう少し踏み込んだものが観たかった。
せっかく4時間もある大作なのだからビンビンにドラマチックで仰け反るような衝撃を殺人以外のところで感じたかった。
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 【凄い映画】初めはバラバラに見えたピースが後半に一つの画となる様に息を呑む。こんな映画は初めて観た気がする。4時間という長尺だがケツの痛さを我慢しても観るべき。
①ピーツが合わさって浮かび上がってくるのは、一人の少年を中心にして、1950年に中華民国政府が台湾に移ってから間もない1960年代初頭の台湾社会・家族・学校・少年少女達の有り様が重層的に描かれた画。
②
一体どこが面白いのか?
236分の4Kレストア・デジタルリマスター版、を映画館で観賞。
長すぎ…退屈…どこが名作?
名作だと言われてるから期待して観たら、何これ(笑)
タイトルからミステリーっぽいサスペンスっぽいのを想像するけど、
コッポラの『アウトサイダー』に寄せたような青春映画。
薄味ぎみに、けっこう淡々と、進んでいくので、眠い眠い(笑)
台湾で実際に起きた事件を描いてるみたいなので、
台湾や中国の人だったら感じ方が違って面白いのかも…
僕はダメでした。
平均点である50点以下、30~40点ぐらい。
約4時間この映画に耐えるのはキツかった(笑)
飽きずには観られたが
正直、何が面白くて観ているのか
途中から迷子になっていた
勿論、各所の演出には惹かれるものがありつつも
ストーリー展開として夢中になれたかと言われると
全くそうではなかった
しかし面白かったのが、
劇場にいる日本人と中国人の笑う箇所が
全くもって違かった点。
おそらく、字幕だけじゃ伝わらなかったり、
むしろ字幕で面白さを伝えたり、
その違いだったのだと思うけど、不思議な感覚だった
どんなもんかちょっと見てみようかな、 くらいで見た映画は、ここ最近...
どんなもんかちょっと見てみようかな、
くらいで見た映画は、ここ最近、
高評価したくなるものばかりだった
青春群像ものは苦手だけど、
それもここ最近、
良い意味で予想外のことが多かった
どこから入っていかれるかな?、そろそろかな?
と思いながら、結局4時間経ってしまった
それと、これは感想とは違うんだけど、映画の冒頭で、
そろそろ本土へ戻れないと思い始めた大人たち、
みたいな表現があったけど、
蔣介石は新しい国を築いたつもりでも、
国民党の人たちはみんながみんなそうではなく、
いつか戻るつもりだったのですか?
ちょっと調べてみたけど、
そんなようなこと書いてあるところ見つかりません。
影の魔術師
光の魔術師という褒め言葉があるが、この作品ではむしろ陰の魔術師。
夜間学校なので南国台湾でありながらも
煙った柔らかな日差しの光で引きでの画も
特徴ではあるのだけど、
盗んだ懐中電灯で襲撃時に照らされる
限られた部分の切り取り方が秀逸。
魔性の女が微妙な感じの容姿なのは少し残念だが、
憐れを誘う境遇や佇まいである点も上手い。
実はタチが悪いのはわかりやすいビッチでなく
こういうタイプなのだ・・・ハマったら抜け出せない系。
魔性のヒロインも主人公も常にあるのは
どこに行っても自分は馴染めてない異邦人感だろう。
思春期は自分は浮いてると思いがちではあるが、
この作品の場合は実際に情勢背景の面からも
彼らは浮いてるのである。
大人達はそこをどうにか折り合いをつけていこうと
試みたり妥協してみたりできるが、
子供たちはどうか。
新天地を求めて台湾へ来たら世界が変わる、と
必死でやって来たのに努力はいつ実るのか。
鬱屈した思いをヒロインは吐露する。
女は諦めてそんな中でも己の生き残る道を
図太く探る方向へ目を向けるのだが、
男は己の理想から目を離せずに現実との齟齬に
苦しんで爆発してしまう。
単に実際にあった事件を元にしただけでなく
台湾が内包している問題もリンクさせた
複雑で面白い作品だった。
しかし長い・・・・・・せめてあと1時間短くならないか。
台湾の歴史
私が10代の時、ミニシアターブームの時にとても話題になった作品。やはり、劇場で鑑賞しないとダメだと思ったしリアルタイムで観た方が良かった。ただ長く感じて台湾の歴史をほぼ知らない私にとっては、楽しめるとは言えなかった。これは自分の問題なのかもしれない。
1961年の台湾の匂いと、若さの危うさが眩しい
ほぼ4時間の濃厚なストーリー。映画3本分くらいの要素が詰まってそう。
1961 年の台湾はまだ随分不穏で、戦車が走っていたり、日本兵の残した日本刀が屋根裏から出てきたり、そして大人たちの世界も殺伐としてる。それに影響されるように子供たちも徒党を組んで抗争を繰り返していたりで、そんな当時の台湾のにおいが画面上からぷんぷんと漂い、それだけでも惹きつけられる。
小四が通う夜間中学で築くことになる新たな危なっかしい世界、そしてボスの女である小明との関係、このあたりが、彼を取り巻く社会環境とミックスして描かれ、どこか危うい魅力がある。若さは焦りを、激情を、止められないのかなって懐かしさとやるせなさと。
男性が描くファムファタルには毎回ちょっと引っかかるんだけどその点はこれも同じ。
執着のない人生なんてと思ってはいるのだけど、執着しすぎは身を滅ぼす。でも若い彼らにそんな言葉が届くわけない、それが若さなんだし。危うい世界の眩しさにくらくらさせられる作品。主役のチャン・チェン、俳優として大活躍中なのは嬉しい。
【”僕は全部知っている!”と”小四少年”は”少女、小明”に言った。1960年代の台湾の置かれた時代背景の中、少女・女性の強かさ、少年・男性の危うさ、脆さを描いた作品。】
ー 236分ヴァージョンを鑑賞。ー
◆感想
・小明は、小四や、ハニーたち少年にとっては、ファム・ファタールだったのであろうか。
・”僕は全部知っている!君は駄目な奴だ!”と小四に夜道で言われた際に、小明が言い返した言葉。
”私は変わらない。社会が変わらないのと同じようにね”
ー 当時の台湾を暗喩しているのが、少女、小明であったのではないか?ー
・少年たちが憧れるプレスリー。
・大陸からやって来た、小四家の立ち位置。役人の父親の苦悩。
<固定カメラで、長廻しショットが多く、作品の全体像を理解するのに時間がかかる。
この作品は、映画館でしっかりと観ないと、監督の真意は分かりにくいかな、と思いつつも、魅入られた作品。>
映画「花束みたいな恋をした」に出てくる映画で、ちょうどスクリーンで...
映画「花束みたいな恋をした」に出てくる映画で、ちょうどスクリーンでやるとのことで見てきました。
つい先日観た「返校」や名作「悲情城市」と並ぶ白色テロ時代を扱った作品。全体的に画面が暗く、また登場人物が多く、場面もいろいろ切り替わるので最初は理解が追いつきませんでしたが、パンフレットで補習。もう一度じっくり観たいですね。
映像の素晴らしさ、それだけの映画なのでしょうか? 違う、とても政治的な映画であった 政治的なメッセージを強力に発信していると感じました
映像の没入感は物凄い次元で、まるでその場にいたかのように感じられるでしょう
特に終盤の薄暗い通りでの刺殺の犯行の一部始終
それはその背後での人々の動きが感嘆すべき演出と撮影、照明なのです
しかし、映像の素晴らしさ、それだけの映画なのでしょうか?
違う、とても政治的な映画であった
政治的なメッセージを強力に発信していると感じました
今日は2021年4月18日です
日米の首脳会談が昨日あったばかり
台湾という文言が共同声明に約半世紀ぶりにつかわれたとして世界中に衝撃が駆け巡りました
本作をこのタイミングで観る意義は大きく新しい視点をもたらしてくれました
本作は1961年の台湾を舞台にしています
ちょうど今から60年前のお話
本作を観るにはまず台湾とは何か?を知らねばなりません
台湾は1895年から1945年までの50年間は日本領でした
日本の敗戦後、台湾は元の中国に返還されました
でも、それは今の中国のことではありません
その時の中国とは、中国大陸を支配していた民主主義の国民党政府の中華民国が中国だったのです
しかし太平洋戦争が終わると国民党政府軍と中国共産党の八路軍との内戦が激しく起こります
最終的に中国共産党が大陸全土を制覇して、国民党の中華民国政府は台湾に逃れました
その結果、中国大陸には中華人民共和国という新しい国が1949年にでき、戦前は中国大陸を支配していた中華民国は台湾を支配するだけの国になってしまったのです
もともとの台湾の住民から見れば、日本人が去り台湾の人々だけになった島に今度は大陸から大勢の人々が1949年以降逃れて来て支配層に収まったのですから、支配層が入れ替わっただけみたいな案配です
もともとの台湾の人々を内省人、大陸からまるで落下傘のようにやってきて政府の幹部に収まったのが外省人という訳です
やがて、中国共産党は「一つの中国」論で台湾は国ではないと言い出します
今からちょうど50年前、台湾は国連の常連理事国の座を中華人民共和国に奪われ国連を脱退する羽目になりました
遂には台湾は国ではないとされ、日本も米国も世界中のほとんどの国が国交を正式には断絶したのです
だから半世紀ぶりに「台湾」の文言が日米首脳会談の共同声明にでたことが大変な意味を持つのです
こういうことを、本作を観るに当たっては最低限理解した上で観ないと何もわからないし、伝わらないと思います
本作はそんな複雑な台湾の成り立ちが大きく反映されています
日本式の家屋、軍刀や短刀
外省人の父
内省人の庶民の人々
これらは全て台湾はどんなところなのかを説明しているのです
軍の戦車や軍人が多く画面に現れるのは、1958年にあった中国共産党政府が台湾への侵攻を試みた金門島砲撃事件から間もない頃の時代だからです
そして本作公開は1991年
今からちょうど30年前
それは1989年の天安門事件の2年後のこと
1989年とは中国共産党が中国大陸を制覇して中華人民共和国という国を作った年からちょうど40年の節目の年のことでした
その年に中国共産党は民主化改革を要求した若者たち数千人を戦車で轢き殺したのです
調べれば「人間せんべい」という凄惨な画像が見られることでしょう
本作で戦車が何台も少女の前を通り過ぎるシーンはなぜ存在するのでしょうか?
そして2021年の今年
台湾海峡は戦争が近いような雲行きです
美しい台湾の少女は、お前を一番分かっているという大陸から来た人々の息子に殺されてしまうのです
台湾の声にならない悲鳴が聞こえてくるような気がします
心に残る
淡々と当時の台湾の人々を描く。
その中で、少年たちの不安であったり、純粋さ、それ故の残酷さが見えるが、現代にも通じるものがあると思った。
光の使い方が印象的で、美しいシーンも多く、面白かったぁとは思わなかったけどなんとなく心に残る。
それとリトルプレスリーが良いキャラしてたね。
後、これインターバルなかったけど、映画館で見た人キツいんじゃないかなと思った。
すいません私にはわからない。
人物設定もいまいちで受け入れられませんでした。登場人物が多いせいもあるのかな、誰にも感情移入できなかった。
茶器や小物が素敵で、家のつくりが日本式なのも興味深かった。それから台湾の必需品であるバイクもこの時代はまだ無かったんだな、なんてことを考えならが最後まで見終えました。
私が時代背景を知らなすぎるから楽しめなかったのだと思い映画好きの台湾人の友達に聞きました。撮影の勉強をしていた人なので映画にも精通している人です。
どうしてこれが有名なのか?これはおもしろいのか?と聞いたら
なんと台湾人でもよく意味はわからないというではないですか。
「ただの少年少女のもつれ話。日本でも、わかるようでわからない一味変わった映画が評価されるのと同じ。なんかかっこよくて意味あり気にみえるでしょ。ただこの映画が撮られた時代は台湾で殺人事件をテーマに取り扱うこと自体が珍しくセンセーショナルで話題になった。」らしいです。なるほど。
小さな町のほんの僅かな時間の物語
この物語の4時間は、そのほとんどが些細でだれにでもある日常を切り取っている。だから、だれにでも共感できることもあるが、生きた時代のせいで如何様にも人生そのものが変わってしまうことを示唆しているとも感じた。
★これからこの作品を見る方は、ぜひ1950年代の中国・台湾の歴史(政治・教育)をすこしでもいいので下地として理解しておくといいかと思います。★
それは、とても小さな町の中で起きた、ほんの僅かなあっという間の時間の中にあるロードムービーのような少年の人生の物語。
冒頭のシーンから、少年の人生に影響しないものはないと言っているようなありきたりな日常が映し出され、延々繰り返されるわずかな変化の中の日常や、どこにでもあるケンカやデートやお祭りやイベントやすこしアングラな時間が、時代のせいか大きな罪を生んでいく。
その中で生きていく少年は、様々な人と接点を持ちながら、自分とはなにかを考えていく。そして見出した彼女への想い。しかし、それは儚く、無残に鋭く切られる薄く脆い紙きれのような気持ちだったのか、それとも彼女のほんのすこし大人な想いが、少年を苦しめたのか。
だれにでもそんなようなことが起き、誰もが通り過ぎてきた気がするささやかなシーンだが、大きく人生を変化させてしまうこともあると感じたし、自分自身も少なからずその傷を負いながらこれまで来ていることも思い起こさせてくれた。
本作品は、時代背景が分からないと置いてけぼりになりやすい。それでも少年少女の感覚などは、懐かしさを感じつつ見ていられた。
少年が恋する彼女は、作中も魅力的な女性として描かれるが、見ていてもやはり魅力的な女の子だなと思った。それは、可愛らしいという一面的な描き方ではなく、どこか儚く見えるところ、素直でまじめなところ、時として妖艶なところ、大人びた発言や可哀そうな感じもあれば、元気で陽気な面もあり、多面的な描き方をしている。それは、誰かに見せるときに変えているとこもあれば、時として変わってしまうところやそうせざるを得ないときもあったりだが、しかしそれは彼女にすべてある本当の姿でもある。だからこそ、少年は自分の想いに耐え切れなかったのかもしれない。多面的な彼女の演技と監督の手腕はとても素晴らしい。
称賛されるに値する映画で、見れてよかった。
台湾を知る。
噂は聞いてた名作。
ただ長いと聞いて、なんとなく敬遠してたんだけど、
やっと拝見。
重苦しい事件を巡る話しかと思いきや、
閉鎖的で排他的な社会情勢と台湾の街を舞台に、
見習うべき大人たちは下を向き、
そんな時はどこの国でも不良が主人公になるうるのだな
と思いました。
昔、台湾人の人と一緒に仕事してる時、
日本の暴走族は可愛い、
台湾の暴走族は青龍刀を振り回してると聞いて、
冗談だと思ってたけど、本当かもしれないなと思いました。
題名の事件はいつ起こるのか?
主人公の鬱屈した気持ちはどこで爆発して
その怒りが何故彼女に向くのか?
と観てるのに、当時の台湾の情勢、
「外省人」と呼ばれる、蒋介石率いる中国国民党が、
毛沢東率いる中国共産党に敗れたあと台湾に移住してきた、中国系の民族の情勢も少年たちの目線で分かる。
何故彼は彼女を殺したのか?
10代の衝動的な行動のように見えたけど、
やはり社会や環境のせいでもあるし、
一番彼が憎んでた世界と、自分は同じ事を彼女にしてた
のだと気付いてしまったからのようにも思える。
しかし、長い。180分バージョンで観たかったと言うのが
正直な感想。
主人公の眼差しが良い
やたらと評価の高いエドワード・ヤン監督のこの映画。デマンドで。
まず長い4時間。必然があったかということならあった、だが長い。
役の名前と顔が一致せず。暗い画面も多く、どういう関係のどういう誰が何してるのか理解するのに一苦労。これは物語としては欠点でしかない。あと当時の台湾の情勢をある程度知っていなければ分からない点も多い。予習と解説ありきの映画ではなぁ。
ただ、各ショットの決まり具合、効果的な音響、ヒリヒリとした緊張感など見所は多々あり。
しかし敢えて言うと、思春期の少年が群れてあだこだ言う姿には共感しなかったし、こじらせボーイがテンパってやった犯罪話でしかない。やたらめったらな高評価には?です。
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