ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのレビュー・感想・評価
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ファイブ・イージー・ピーセス、ネブラスカ
演出と芝居の技術が確かな作品です。
美術、装飾、小道具もしっかりしていて、
舞台となる学校にも歴史を感じさせる要素が随所に散りばめられています。
降雪、積雪の作業も大変な作業です。
多くの映画の定番の設定である、
クリスマスと年明けというのも、
とってつけた感は最低限で、
観客を引き込み、
満足させるパフォーマンスの一要素として
うまく取り込んでいます。
あらゆる技術の調和が安定している本作、
その完成度の高さは多くの賞の候補になるでしょう。
更に印象的なのは、
劇中で2回、スピーディなズームバック!
ズームバック!
ほとんど世界遺産の域です。
ラスト、
1971年の「ファイブ・イージー・ピーセス」の、
アラスカへ向かうジャック・ニコルソンや、
ネブラスカのブルース・ダーンと、
主人公を出会わせたいのかと、、、
もし出会っていたら、
1時間で意気投合、2時間後には大ゲンカ・・・勝手に妄想、
歴史は繰り返す。
このポール・ジアマッティを主演男優賞を受賞させられないアカデミー賞
第96回アカデミー賞において作品賞など5部門でノミネートされた本作品ですが、TOHOシネマズ日本橋は平日(会員サービスデイ)午前中の回としては客入り多め。さすがに注目される作品だけあります。
物語の世界は1970から71年にかけての冬休み、当時よく聴かれていたと思われるポップスがレコードのノイズ込みで流れるオープニングから、全般懐かしさが感じられるルックと王道のストーリーに大変好感が持てます。勿論、細部はきちんと現代的にアップデートされており、例えば裕福な白人家庭に育つ少年に対して、彼の言動にどこか「間抜け味」を漂わせたりをサラッと演出したりなどは決して個人攻撃に見せずに優しさが感じられますし、作中における血の気が多い若者たちの度々ドタバタに対しても、やり過ぎずどこか微笑ましさがあって最後まで穏やかに観続けられます。
キャストの皆さんもれなく素晴らしい演技でそれぞれの役に感情移入しやすく、また言うまでもないですが助演女優賞を受賞したダバイン・ジョイ・ランドルフに納得です。ただ、だからこそ「このポール・ジアマッティを主演男優賞を受賞させられないアカデミー賞」に少々ガッカリするくらい素晴らしい演技と表情で、彼が演じるポール・ハナムという教え子からしたら「ア〇ホールな教師」を物語の進行とともに段々と憎めない存在に思わせ、最終的には慈愛に満ちた人柄にしか見えないハナムに対して胸が熱くなります。
必ずしも「映画館で是非」という作品性ではありませんが、普段この手の作品を敬遠気味の方に対しも「配信でもいいから」観ていただければ納得いただける良作だと思います。私もまた年末頃に深く浸りたい一作でした。
素晴らしかった
映像の質感が、アメリカンニューシネマの時代そのもので、当時作られた幻の名作が発掘されました、と言われたら信じてしまう。『スケアクロウ』と同時上映されていても違和感がない。
はぐれ者の教師と生徒と給食のおばちゃんの3人が寄り添って年末年始を学校で過ごす。お互い仲がいいわけではなく、生徒と先生は決定的に仲が悪い。特にクリスマスは日本とは意味が違って、何がなんでも家族と過ごす重要な日だ。僕が若いころは彼女と過ごすのが当たり前だとされていて、一人で過ごすことがとても惨めに感じたものだけど、その何倍も彼らは心を苛まれていることだろう。
生徒の男の子が本当に世間知らずの甘ったれで、イライラする。彼が同級生と言い合いになるのだけど罵倒がすごい。イギリス映画かと思うほど口が悪い。
そうして過ごすうちにトラブルがあったりしてお互いに気心が知れていく。それがとても丁寧に描かれている。気心が知れすぎて、さらなるトラブルに発展して最終的に先生は職を失う。そんなにクビになるほどの失点ではないと思うが元々校長先生に嫌われていたので、これ幸いとクビにする口実にされたのかもしれない。
その先生がスケートリンクで大学の同級生と会って、つい見栄を張ってしまう場面が見ていて本当に心が苦しくなる。極力等身大であろうと心がけているのだけど、自分ももしあんなふうについ背伸びをしてしまったら、その後何日もベッドで眠れずに叫ぶことになる。
古本市で話しかける売春婦が絶妙で、ぱっと見ないわ~と思うのだけど話しているうちにもしかしてありかな、あれれ?みたいな感じだ。
一体なぜこんな映画を今の時代に作ろうとしたのか意図が分からない。他にも全体像として把握しきれていない感じがする。ただ、誰とも友達になりたいと思えなかったので、また見たい気持ちは今はあまりない。
家族によって傷ついた人たち
物語の主人公は生徒にも同僚にも嫌われている偏屈者の高校教師ポール、その言動で誰をも不快にさせる高校生のアンガス、そして酷く肥満した寄宿舎の料理長の黒人女性メアリー(一人息子を亡くした悲しみ、ストレスで肥満になったのかなあ)の三人。誰もが家族と共に過ごすであろうクリスマスから年明けにかけての10日間ほどをひと気の失くなった広々とした寄宿舎で3人は生活を共にする。そしてこの3人が付かず離れずの関係を保ちながらも互いの心の傷の深さや大きさを認識しその原因を理解していくなかで距離を詰めていく(その過程は決してべたべたしたものではない)。
結局、心の傷の原因は家族にある(わかるだけに沁みる)。自分を理解して欲しくて、そして頼りたくて…。そういう存在が家族であり、その家族に裏切られたと思ったり、頼ることができなくなったと思ったとき、人は本当に深く傷つく。その理由なんて考える余裕もなく。深く傷ついた人は溺れているのだから、もがきながら頼れると思った人にしがみつこうとするんだから仕方ないんだよ。
最後に、家族のいないポールはアンガスを救うことで、自分自身を救ったんだと思う。
※日本でも大ヒットした pop music ヴィーナス、嵐の恋、ノックは三回の3連発で、物語のあった1970年にタイムスリップして僕はこの映画を観てました。途中で流れたキャット・スティーブンスのウインドも懐かしかった(これは日本ではヒットしなかったな)。この時、僕の脳内で快感ホルモンが分泌されました。キャット・スティーブンスの歌は心が癒される。
傑作
単純な様だったが…?!
あったけぇよお。
近頃は切なかったり辛辣だったりする物語に入り浸っていたので、久かたぶりのハートウォーミングストーリー。
よかったよ~。
久しぶりに周りにお勧めできる作品だぁ~。
そうなんだあ〜こういう映画、好きなんだよなァ。
古いけど「アバウト・ア・ボーイ」を思い出しました。
短期間ながら、欧米ホリデーシーズンにまさかの学校居残りというシチュエーションはある種の密室劇のようであり、だからこそ所々の「外出」は観ているこちらもお出かけ気分というか主人公達と共にウキウキした気持ちになる。
そして当然のように起こる”何か”を経て、寮生活に戻るたび、何だかホッとしてしまう感覚は正に「我が家=ホーム」のそれ。起こるべく何かを恐れずに共有して、結果的な喜びも痛みも分かち合う。本作はそういった、まるで家族の正しい、あるべき姿をそれぞれの登場人物に分け与えていくのだ。聖なる季節であるからゆえの最高のプレゼント。
そりゃこの映画の観客だって嬉しくもなるさ。
家庭環境からヤサグレ盛りだったアンガスくん。序盤の校内追いかけっこは、?
はい…それ、私です…(^^;;
お恥ずかし過ぎて多くは語りませんが、個人的に物凄く彼の気持ちが理解できてしまって。年甲斐も無く追いかけてくるポール先生を見る彼の眼差しはすごく楽しそうでしたでしょう?本気で向き合ってくれる存在を渇望していたんだよね。そういう心の機微も上手に描いていたと思う。
劇場内では結構きちんと(?)笑い声が起きていたなあ。観客がこの物語にほぐされているようで嬉しかった。
「いやあ!映画って本当にいいもんですね」
って言いたいー!!(言ってるけど)
映画の感想書いてて、 『暫く泣き続けた』くらいのことをよく、 『号...
映画の感想書いてて、
『暫く泣き続けた』くらいのことをよく、
『号泣した』って書いちゃうことは正直あるけど、
これは、言葉の意味通り本当に『嗚咽』した
声が出そうになるのを抑えるのが大変だった
いや、少し漏れ出てた
「こっち側の目を見て話して」(うろ覚え)の台詞からその後、
泣きっぱなしでところどころ嗚咽
予告からある程度は読めちゃうストーリーだけど、
ここまでぐっとくるとは思わなかった
ストーリーは、
切なすぎるから好きなタイプじゃないけど、
でも作品としては良い内容だった
「The Holdovers」翻訳すると 残留者 みたいな感じ。 ...
「The Holdovers」翻訳すると 残留者 みたいな感じ。
邦題で「置いてけぼりのホリディ」と表現されてますが・・クリスマスに、置いてけぼりを喰らって ボッチクリスマスになってしまった人達のお話し。
いい映画でした。配信待つか、迷ったが・・鑑賞してよかった♪ただ、季節的にはクリスマスシーズンに鑑賞できれば理想的でした・・。
誰一人知っている俳優が出演していませんが・・こういう、出演俳優の名前に頼らない映画に名作は少なくない♪ これもそんな一作♪
私は、ポールであり、アンガスであり、メアリーでもある・・世にはそんな人も少なくないのかもしれない・。
1970年代・・まだ、理性と理想が現実と対峙できて、人の心が現実を動かすことができ時代だったのかもしれない・・。今はどうだろう???・・ポールは?アンガスは?メアリーが救われる世界になっているのか・・。1970年代が、現代、2024年はどうだ???と投げかけた映画なのかもしれない・・。
ポール、アンガス、メアリーが、自らを失わず、幸せにくらせる世界でありたいものです。
他人ばかりが恵まれて見える
教師は重要!
今教員不足が社会問題になっているが、過剰な責任と長時間労働を負わされて、その上やりがいを感じにくいとしたら、だれがやりたいと思うのだろうか。でも、人生を振り返れば、大事なところに、先生が居た。もし、あの先生に出会えなければというのは、映画ならずとも、実人生で誰もが経験しているのではないだろうか。かく申す私にもあった。でも、その機会が実にまれなことも事実。自分にとり、良い先生に巡り合えるか否かは、その人の人生を実りのあるものにするかどうかにかかる実にコアな問題だと思う。そして、良い先生とは、シンプルに生徒をわかろうとし、そのために、状況において、自分の弱さをさらけ出すー期せずしてかもしれないがーことのできる先生。そのメッセージを単純なメロドラマや喜劇に仕立てず、伝えてきれていることが、この映画の成功じゃないだろうか。役者も良い。最後の、「君ならできる!」がすべてを言い現わしている。時間的には少し長い映画だが、良い映画は時を感じさせない。まさしく、この映画がそれである。This is it!
正解は右目。
1970年代マサチューセッツ州の寄宿学校の教師ポール、問題児生徒アンガス、寄宿舎料理長メアリーの話。
クリスマス休暇となり他の生徒達は一時帰宅、最終的に残った教師ポールと、ボストンへ行く予定だったが中止で居残る事になったアンガス、一人息子を戦争で亡くしてるメアリーがクリスマス休暇2週間を共に過ごす。
本作の感想よりも平日の1回目の回なのに鑑賞者(年配者)がかなりいて驚いた。監督ファン?主演のポール・ジアマッティさんのファン?私はこの監督さんも知らないし主演の方も初見でした。
ポールとメアリーはコメディタッチな壁はありながらも親しく食事や会話を見せるも、ポールとアンガスの間にはガチな壁ありで、絡めばぶつかり合ってた教師と生徒だったけど…、アンガスが肩脱臼したあたりからポールとの距離が縮まり始めた感じですかね。
周りの鑑賞者が作品観て笑ってるなか、正直作品の笑いツボが分からなかったけど中盤過ぎ辺りからこのシュールな笑いって言い方であっているかは分からないけど、ツボが解ってからは笑えました。
このシュールな笑いの感じは監督特有?
エリザベス・リードの追憶
「吊り橋効果」ではないのだけれど
あり得ない状況下に置かれると人は相手の事を実際よりも高く評価してしまい、その結果燃え上がるが、その先は……、或いはスキー場や登山中に出逢った相手が物凄く美形に見えたが下野してみるとなんてことない。
それとは違うけれど、ある意味逃げ場のないシチュエーションに閉じ込められた面々が時間を掛けながら心を溶かし合い、深く関わっていくようになる。
1970年という通信手段が限られた時代だからこそできた年齢を超えた交流だったのかもしれませんね、かといって「あぁ、あの時代は良かったよ」なんてノスタルジックになることもなく、現代を否定している訳でもありません。
きっと今は今で他人と深いところで繋がる手段はあるはずですから。
話しを本作に戻すと、登場する主要3人が心根の優しい人であるのが素晴らしい!物語に彩を与えてくれています。
そして本音と建て前、嘘とまことを上手に使い分け、どんどん善き方へ回転して行く様が心地好かったです。
アメリカは大戦の後もベトナム戦争もあり、心に傷を負った人々が多くて、平静を保つことが難しかったのでしょうが、それでも凍てついた心を溶かすのは優しさなんだと気づかされてくれる作品でした。
冒頭の古いユニバーサルのロゴの時点で5億点だけど、雪景色や空気感、...
最高だったので、語りすぎました
これは…本当に素敵な作品でした。
嫌われ者の他人同士のクリスマス休暇、ですが、ここに理想の親子の関わり方を感じて、とても勉強になりました。
ポール・ジアマッティさんが素晴らしいのは言わずもがなですが、アンガス役の新人のドミニク・セッサさんがとても良かったです。
見た目は大人っぽい高校生ながら、やんちゃで繊細で、まなざしが少し寂しげで、親の年代の私から見ると、本当にかわいらしいのです。
台詞も多いし、ベテランのポール・ジアマッティと対等にやり合って遜色なく、逸材っているのだなぁと驚きました。
こんな息子がいたら、めっちゃ可愛がるのに〜。しかも頭が良くて優秀なんですよ、最高。
しかし彼は、心に満たされないものを抱えていて、教師のポールもまた複雑さを抱えています。
そこに息子をベトナム戦争で亡くしたメアリーも加わり、凸凹で不思議なクリスマス休暇を過ごすわけです。
一見、ありがちなハートウォーミングな物語かと思いきや、人間関係、信頼関係の構築を丹念に描いていて、人生の機微やほろ苦さも秘めているお話。
アンガスはまだ心の中に幼さを抱えていて、父親がいるものの、頼れる、導いてくれる存在ではないために、不安定な状態。
ポールは持ち前の真面目さ、厳しさでアンガスに接して、当然反発を受けるわけですが、素晴らしいと思うのは、どんなに彼が荒れても、一切見捨てないところにあります。
これが愛のある厳しさです。皆から嫌われている? すごくいい先生じゃないかと思いました。
くだらないことでもたくさん会話する、ダメなものはダメと言う、秘密の共有もする、時に多少のルール違反も目をつぶってやる。
こんな普通のやりとりをして、同じ時間を過ごすことで(なんと寝る場所も一緒!)、子どもは自分が認められていると感じるようになるのでしょうね。
ポールに器用さが全くないところが微笑ましく、かえってそれも彼の一生懸命さが伝わって良かったのかもしれません。
アンガスの求めていた父性が、ポールによって少しずつ満たされ、信頼関係ができていく様子が、とても巧みに自然に描かれていて、これは上手いなぁ〜と感心しました。
なんか完璧で、うますぎないか!? と思うほどよくできています。
文句のつけようがない、美しく丸められた映画で、今年は今のところ80本くらい見ていますが、お気に入りの上位数本に入る作品となりました。
しいて言えば、台詞でみっちり埋められていて、あれこれ想像する余白が少なく、見たままで完結してしまっているところでしょうか。
気に入った割には、余韻があまりないのは、そのせいかもしれませんが、とにかく良かったので余韻とかどうでもいいや!と思いました!
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