「どこか懐かしい記憶を呼び覚ます、愛おしい作品」コット、はじまりの夏 humさんの映画レビュー(感想・評価)
どこか懐かしい記憶を呼び覚ます、愛おしい作品
ブルーグレーがかったようなアイルランドの広大な風景。
澄む空気に映し出される光がその時々を伝え、冒頭の生い茂る草の場面からふと息を吸いこみ鼻の奥で感じてみたくなる何かがある。
いつも自分の存在を消していたようなコットは、母の出産を理由に親戚に預けられることに。
それはショーンとアイリン夫妻の元で自然光のようにやさしく寄り添う家庭を知っていく特別な時間だった。
そこには陽気な友人たちとの交流、周りの人々を惜しみなく助ける姿、夫妻が支え合い哀しみを越え現実に向き合う様子があった。
そして、アイリンが柔和なゲール語とまなざしで教える〝自分を慈しむこと〟。
ショーンがどこか自分に似たコットの不器用さや寡黙さを対話で肯定し、行動で教えてくれたこと。
自分では選びようもない9歳のこどもの生活環境から初めての感情に触れた体験でコットには笑顔がうまれ、雨粒のきらめきに目を止め、ことりのさえずり、家畜の声に心躍り、川のせせらぎに安らげるようになるのだ。
ラスト、別れのシーンのコットの疾走と放つ〝daddy〟の2つの意味に胸がつまる。
変わらない日常を丁寧に過ごし、愛をもって接することを知った今までとは違うコットが確かにそこにいた。
片方だけではない。
両方を知ったコットは誰よりも強くやさしくなれる。
あの柔らかな響きなカウントを耳の奥にこだまさせてきっと彼女の人生は今始まる。
開かない扉の前に立つようなコットの憂い、夫妻に出会って愛を知り瑞々しくほころんでいく様子をキャサリン・クリンチがピュアな素質のままで魅せ、夫妻を演じる2人が苦悩を秘めながらも寛大な人間性で接する姿が温かくずっしりと心に沁み込む。
成長のなかで感じたことのある機微は人それぞれだ。
その記憶のかけらがじんわりとどこかに重なるときこんなふうに切なく胸が疼くのだろう。
コメントありがとうございました。
そうですよね、まあ多分どうしようもない子ってのもいるとは思うんですけど(笑)、出だしからコットは実はしっかり人の目を見て話を聞ける子で、ゆっくりだけど何かを考えている子だったので、周り次第でどんどん幸せに、賢くなれる子なんだろうと僕も思いました。
コメントありがとうございます☺️
夫婦の温かさにじーんと来るものがありますよね〜。どうか幸せを掴んでくれ!映画を見てこんなにも手を合わせて願ったのは、初めての経験でした😌
コメントありがとうございます。確かに懐かしい記憶を呼び起こしてくれる映画でした。自分の子供の頃の記憶や自分の子供が幼い頃の思い出とか。こういう映画を観たあとは優しい気持ちになれます。
共感&コメントありがとうございます。
夜尿症もいつしか治っていたし、走って体を動かす習慣もついて、コットにとって色々得るものの多かった夏だったと思います。一番は夫婦の愛情を感じられた事でしょうが、夏休みはいつまでもは続かない。最後抱きついたのも、以前の彼女では出来なかった事なんだろうと思いました。
コメントありがとうございます。
humさんのレビューを読むと、じっくり丁寧にこの映画を鑑賞されたんだなあ、と思いました。そうした価値のある映画だったと思います。時々は、こんな静かで美しい映画に、出会えたいものです。