「雑多な世に居場所を求める魂が震える名作」コット、はじまりの夏 ガジュマルさんの映画レビュー(感想・評価)
雑多な世に居場所を求める魂が震える名作
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この映画は、観客に徐々にコットの人物像を想像させながら、彼女の世界に好奇心を引き出していく素晴らしい展開があります。
物語の冒頭で、コットが家出してベッド下に隠れた際、マットレスのおねしょの跡がうっすらと見える描写に、監督の手法の優れたものを感じました。
静かで寡黙な主人公が、環境が変わることで原石のダイヤモンドのように輝く姿を描くことで、観客は彼女の内面に共感を覚えるでしょう。言葉以上に多くの感情が存在し、それが静寂の中で語られることがあります。コットの大家族や親戚のキンセラ家との夏休みは、静かながらも心を揺さぶるものでした。
のとやがな農場で過ごす時間は、若い男の子を失ったアイリンとショーンの温かな愛情が重要な要素となり、お互いの心を開き、心の空白を埋め合い、生きる喜びを共有します。この映画は、家族の付き合いにつまづく人々に日常の尊さを教えてくれるものです。
監督のコルム・バレードは、アイルランドの田舎町を繊細に描写し、自然な風景を美しい撮影技法で表現しています。特に、コットが井戸水を汲むシーンは、おぼれる緊張感を伴いながらも無事である結果を伝える脚本はうまく、エンディングでは涙が溢れました。静かな雰囲気の中、胸が熱くなります。
物語にはアイルランドらしい哀愁が漂い、感情が収まらなくなります。
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