「実家に留まるかぎり「はじまらない」のでは?」コット、はじまりの夏 くーさんの映画レビュー(感想・評価)
実家に留まるかぎり「はじまらない」のでは?
映像が美しかった。
きれいに終わらせようとしないのも良かった。
最後の2回のDad...
一度目が本当の父、二度目がショーンを指してるとハッキリわかった。
あの二言ですごい女優さんと思った。
コットは内向的という設定のようで、実際そうだとも思うけれど、きちんと自分の言葉で語れるし、それは夫妻の元に預けられてから身についた資質、という感じでもなかった。
ただ、彼女の言葉をまともに取り合う人がいなかったから、あえて口にしなかったという感じ。
近所のお爺さんの通夜あと、性悪ババアに根掘り葉掘り聞かれたことを確認されて「バターかマーガリンか聞かれた」と答えるあたり、思いやりも分別もある。
この映画は、夫妻に預けられてコットが成長する、のではなく、
夫妻に預けられて初めて尊重されたコットが、初めて素の自分を出せる、物語だ。
だけどそれは、あの実家に戻れば継続できるものではない。
実家にコットを送り返して、明らかにこの家庭環境ではコットは幸せでないとすぐにアイリンもショーンもわかったはずだけど、波風立てないためなのか、牛の世話を理由に帰るとこからも、二人にとってコットは家族ではなく「預かった子」だったんだなと軽く失望してしまった。
赤ちゃんもいて大変だろうからしばらく預ろうか?くらいのこと言ってほしかった。
夫妻の元で初めて一人の人間として尊重され安心感を得た面はあるだろうけれど、
実家に戻れば、コットと向き合い、ありのままのコットを慈しんでくれる人はいない。
夫妻はそんなことすぐにわかったはずなのに…
はじまりの夏って邦題は良いのかな?
一瞬映った原題は失念してしまったが、そっちの方が良かったように思う。