劇場公開日 2024年1月26日

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「語り過ぎないことの大切さ」コット、はじまりの夏 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5語り過ぎないことの大切さ

2024年1月29日
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「The Quiet Girl」という英語のタイトルのとおり、静かで、穏やかな映画である。
説明過多をあえて回避しようとするかのようなこの映画のスタイルは、叔父のショーンによる「沈黙の機会を逸すると、多くのことを失ってしまう」といった台詞に集約されているように思う。
様々なシーンや台詞が省略され、脳内補完を迫られる中で、この台詞が語られる月夜の海辺のシーンが比較的じっくりと描かれるのは、そうした理由があるからだろう。
自分に真摯に接してくれる大人と出会い、生き生きとした表情になっていくコットの姿を見ていると、人間の成長にとって、「愛される」ということがいかに大切かということに気付かされる。
ただ、それ以上に、コットが、叔父と叔母の仲睦まじい様子を覗き見るシーンが、短いながらも強く印象に残った。
彼女は、自分の実の両親とは明らかに異なる夫婦の関係性に衝撃を受けたはずで、そのシーンは、ラストに彼女が疾走する場面でも、フラッシュバックとして蘇ってくる。
最後の最後に、抑制していた感情を爆発させるコットの姿には胸が熱くなるのだが、それと同時に、「両親の仲が良い」ということが子供にとっての幸せで、そういう両親のもとで暮らしたいというのが子供の願いなのだということを、改めて思い知らされた。
コットが走り出したのは、実の両親からネグレクトされているからだけでなく、叔父と叔母の夫婦が愛し合っているからだと思えるのである。

tomato
tomatoさんのコメント
2024年2月17日

ありがとうございます。
「愛」は「言葉」ではないということを思い知らされた映画でした。

tomato
トミーさんのコメント
2024年2月17日

仰る通り! 交わす言葉は少なくともしっかり寄り添う伴侶の姿をコットが目にしたのは、彼女にとって強い印象を残したでしょう。

トミー