「あなたもいつかは、誰かのあまろっくになるのだと思います」あまろっく Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
あなたもいつかは、誰かのあまろっくになるのだと思います
2024.4.20 MOVIX京都
2024年の日本映画(119分、G)
尼崎を舞台に、65歳の父と20歳の再婚相手の結婚生活に振り回される39歳の娘を描いたヒューマンドラマ
監督は中村和宏
脚本は西井文子
物語の舞台は、兵庫県尼崎市
そこで鉄工所の娘として生まれた優子(江口のりこ、幼少期:後野夏陽)は、ぐうたらで働かない父・竜太郎(笑福亭鶴瓶、若年期:松尾諭)を反面教師として、京都大学を卒業し、東京の企業への就職を果たした
そこでも優秀な成績を収め、社長(浜村淳)から表彰を受けるほどになったが、ある日突然リストラを宣告されてしまう
優子がやむを得ずに実家に戻ると、父は「祝・リストラ」の横断幕で出迎え、「人生で起こることはなんでも楽しまなあかん」と言い切った
それから数年後、優子は働きもせずに脛をかじる生活をしていて、幼馴染の太一(駿河太郎、幼少期:宇治本竜ノ介)からも苦言を呈されてしまう
ある日、父から「再婚する」と聞かされた優子は、「この家にいても良いなら構わない」というものの、20歳の女性・早希(中条あゆみ)との結婚として困惑してしまう
自分の半分くらいしか生きていない年下がいきなり母親ということになり、早希の望む朝夕の団欒をブッチし、太一のおでん屋で時間を過ごすハメになる
だが、太一から「邪魔者はお前のほうなんやぞ」と言われてしまい、現実を直視せざるを得なくなるのである
物語は、歳の差結婚に困惑する行き遅れが描かれ、早希のお節介でお見合い話が起きて、さらにややこしい展開を迎えることになる
だが、そのお見合い相手の南雲(中林大樹)は、優子と同じ大学に通っていて、彼はその時から優子に興味を持っていた
そこで南雲は、彼女の思い出のうどん屋で接近を図り、そこからデートをするまでに漕ぎ着ける
南雲は「優秀な人と話すと自分の至らないところが見える」と恐縮し、優子も話の通じる南雲との会話を楽しむようになってくるのである
映画は、前半のギスギスした関係が、中盤に起こるある事件によって、変化する様子を描き、優子自身が「家族とは何か」を考えるように動いていく
そして、竜太郎の言葉「人生に起こることは何でも楽しまなきゃあかん」の真の意味が描かれていく
このシーンで真相を語る鉄工所のベテラン社員・高橋鉄蔵を演じる佐川満男は映画公開を控えて急逝されたのだが、彼がこの言葉を伝えることで、映画はメタ的な構造へと進化していく
そのネタバレは控えさせていただくが、中盤のある事件などのネタバレもない状態で鑑賞した方が感慨深いので、興味のある方は「ネタバレ封印」で臨んでほしいと思う
なので、ネタバレレビューではあるものの、作品への敬意を表し、これぐらいで結ばせていただくとする
いずれにせよ、映画の予告編で「関西の人は絶対見にきてな」と言っていた鶴瓶の言葉もメタ的なものになっていて、その言葉の真意を汲み取ることもできる
その上で、家族とは何かとか、人生とは何かを考えるきっかけになると思うので、そう言った意味において、とても貴重な映画になっていると思った
この映画は尼崎が舞台になっているが、他の地域でも同じことを感じられるのが日本という国なので、関西弁に抵抗があっても、そこは脳内変換をして鑑賞していただければ良いのではないだろうか