劇場公開日 2024年4月19日

「人情物語として良作」あまろっく おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人情物語として良作

2024年4月21日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

今週の本命作品「陰陽師0」と「ブルーロック」は、舞台挨拶中継のある2日目の上映回で鑑賞することにして、公開初日は本作を鑑賞してきました。フライヤーから地味な印象を受け、さほど期待はしていなかったのですが、笑って泣いてほっこりする素敵な作品でした。鑑賞後の満足感はかなり高く、観てよかったです。

ストーリーは、子どもの頃から負けず嫌いで、会社でも有能な人材であった近松優子は、その厳しすぎる言動が不興を買ってリストラされ、実家の尼崎に戻って父との二人暮らしを始めるが、そこに父が再婚相手として20歳の早希を連れてきたことから始まる新たな生活の中で、自分よりずっと年下の母に反発する優子と、家族団欒を夢みる早希の二人の姿を通して、家族のあり方や大切なものを描くというもの。

タイトルの「あまろっく」は、”甘酒のロック”かと思ったのですが、全然違いました。尼崎市を水害から守るための尼崎閘門の通称らしいです。水量・水位の調節をする水門の中でも、水位の高低差の大きい運河や河川などで船舶を通過させるために水を調節する役割をもつものを閘門と呼ぶようです。勉強になりました。

その“あまろっく”を自称する父・竜太郎が、本作のキーマンです。竜太郎は“そこに動かず存在している”ことを自身と重ねていましたが、実際にはそれだけではありません。その笑顔と明るさと人に寄り添える優しさで、家族や工場や従業員をしっかり守り、大切な人たちの仲をとりもっています。あれほど年齢差と温度差のあった優子と早希を出会わせ、結びつけて家族とした竜太郎は、まさに“あまろっく”です。

また、一見するととっつきにくく、こじらせ気味の優子ですが、自分に素直で心根の優しい大人に成長できたのも、竜太郎の子育ての賜物でしょう。母の死には無骨なおにぎりを差し出し、リストラされた時には横断幕とケーキでお祝いをする、常に相手の心を察して接する竜太郎だからこそ、優子は父の深い愛を感じながら何でもぶつけきたのではないかと思います。子育ては何かをしつけたり教え込んだりすることではなく、親としての接し方そのものなのではないかと思わされます。

物語は、娘・優子と父の再婚相手・早希との関係の変化が主軸となります。かなりの年齢差のある二人なのに、年下の母に反発する優子が子供のように見え、それを受け止める早希は余裕ある大人に見えるのが不思議なほどです。二人の演技力が、突然家族が増えた優子の戸惑いと早希の喜びを見事に醸し出しているように思います。

そんな二人を中心に、周囲の人物と交わす会話がとにかく楽しいです。キレのある関西弁でまくし立てるスピードと間が抜群で、おもしろさとともにテンポのよい流れを生み出しています。主要キャストを関西出身者で固めたからこそ生まれる雰囲気が、演者全員を家族のように包み込み、作品テーマに通じているように感じます。

全体的にとても満足度の高い作品ではありますが、欲を言えば、優子の心情の変化やそのきっかけがもう少し丁寧に描かれていたらと思います。気がついたら早希のことをすっかり家族認定しているように感じました。とはいえ、自宅と工場の売却を切り出しながら“赤の他人だ”と悪態をつく優子に、もはや早希が大好きじゃん!こんなん泣くわ!って感じで胸が熱くなりました。ラストのオチもほっこりしましたし、工場の新人もナイスでした。下町人情ものとしては申し分ない出来栄えです。

主演は江口のりこさんで、彼女の魅力と演技力が遺憾なく発揮されています。共演の中条あやみさんも、一皮むけた演技がよかったです。また、笑福亭鶴瓶さん、息子の駿河太郎さんも、役にピタリとハマる好演を見せています。他に、中村ゆりさん、松尾諭さん、中林大樹さん、久保田磨希さんらが脇を固めます。

おじゃる
トミーさんのコメント
2024年4月22日

共感&コメントありがとうございます。
ちょっと気になったのが、ぎくしゃくを解消するきっかけになったのが台風だった事。自分たちのトラブル以上のものが来るとそれどころじゃない! と和解するのか。結構そういう作品、展開多いですね。今のトラブルを超えるトラブルはチャンス?

トミー
トミーさんのコメント
2024年4月21日

最初は中条さんの方がお母さん! みたいな感じでしたが、妊娠発覚してからは年の功? 夫代わり? で江口さんがフォローしていたのが面白かったですね。泣ーけ、泣ーけとコブラ返りが最高でした。

トミー