「自ら学ぶ姿勢を育むことの大切さを再認識できる」型破りな教室 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
自ら学ぶ姿勢を育むことの大切さを再認識できる
天才を育てるための特別な教育法を提示するような映画なのかと思ったが、主人公の教師が実践しているのは、自発的に「学びたい」と思わせるように子供達を導くことで、その至極真っ当な教育姿勢には納得できる一方で、何だか当たり前のこと過ぎて、やや肩透かしを食ってしまった。
ただ、主人公がスーパー・ティーチャーではなく、過去に失敗した経験を持つ普通の人間で、しかも、彼の型破りな教育法も、インターネットの動画サイトからヒントを得ているところなどには親近感が持てる。
最初はモブキャラと思われた校長も、主人公の一番の理解者として彼を支えるという重要な役割を担うようになり、思いがけず良い味を出している。
そんな主人公と校長が、ビールを飲みなから初めて心を通わせるシーンでは、「自分もあんな先生になりたい」と思えるような恩師がいるということが、万国共通の「教師になった理由」なのだということが分かって、思わずニヤリとしてしまった。
だが、この映画で最も心に突き刺さるのは、やはり、生徒達が置かれている過酷な環境で、学ぶことの楽しさや知識を得ることの喜びを知った子供達の生き生きとした表情が印象的なだけに、貧困のせいや治安の悪さのために学ぶことを断念せざるを得なくなる彼ら、彼女らの姿には、胸を締め付けられるような理不尽さを覚えた。
特に、不良グループから抜け出そうとする少年を待ち受ける運命は過酷で衝撃的だが、ここでも、主人公を立ち直らせようとする校長の友情にはジンと来たし、2人で少年のボートを海に押し出すシーンでは、思わず胸が熱くなった。
試験の結果、全国1位の成績を収めた天才少女に脚光が当てられるハッピーエンドは心地よいのだが、その一方で、哲学に対する興味が芽生えたにも関わらず家庭の事情で進学できなかった少女のその後や、車を売り払ってまでして手に入れたパソコンで主人公がやりたかったことなど、気になることもある。
また、ラストでは、卒業式で、多くの生徒が主人公のところにお礼にやってくるというエピソードを回収してもらいたかったと、少し残念に思ってしまった。