「メキシコの国内事情を背景に描かれる実話ベースのお話です。どうしようもないやるせなさを感じると同時に、子供たちの将来への希望も熱く伝わってくるお話です。」型破りな教室 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
メキシコの国内事情を背景に描かれる実話ベースのお話です。どうしようもないやるせなさを感じると同時に、子供たちの将来への希望も熱く伝わってくるお話です。
作品紹介を読んで気になった作品です。
メキシコの映画を観るのも初めて(多分)な事もあり
鑑賞してきました。・_・
お話はというと…。
◆アウトラインは
貧困と暴力、そして格差。
画面に映し出されるのは、メキシコという国の実態。
老婆の座った車椅子を押す少年。
近づいてきたバイクの少年が「隠れていろ」と言い
そのすぐ後を、手を縛られた男が車に繋がれて
どこかへと引き立てられていく。んー
日本なら、戦後の混乱期でも見ることのないような光景かも。
「MADMAX」の世界感を持った作品なのかと錯覚しかけた。
だが、メキシコでは良く見かける光景のようだ。@_@;
多くの子供は小学校を卒業すると働き始める。いや
かなりの割合で、小学校を卒業できない子供もいるらしい。
子供は家庭内の貴重な労働力になっているのだ。
明治、大正、そして昭和と。
戦前の日本の農村部なども、子供の立場は似たようなモノだった
のでしょう。しかし、この作品の時代は今から数十年前などでは
ない。2011年。
今からほんの10数年前に起きた実話がベースになっている。
◆あらすじ的な内容は
舞台となったのは、マタモロスというアメリカとの国境近くの町。
その町の小学校に、一人の教師がやってきます。
そこから始まる、教師と生徒たちとの交流のお話です。
教師の教え方は、恐らく「指導要領」とはかけ離れたモノです。
最初は当然、とまどう生徒たち。(それはそうかも ・_・;)
けれども、この教師が生徒に教えようとしているのは「考える力」
であったり「積極的な行動」だったりします。
この教師、校長先生をも巻き込みながら、時には強引に、時には
一歩下がりながらも自分の考える方法で子供たちに接して行くのです。
(この校長、好きです♡)
次第に「考える楽しさ」が分かってきて、画面に映る子供たちの姿に
「明るさ」が見えるようになっていくのが印象的でした。
けれども、順調に進んでいくばかりではなく… あら
・そんな教師を快く思わない「旧態依然」な教師たちの反発
・本来学ぶべき学習項目がほとんど進んでいない
・全国学力テストの「不正」への参加強要
・卒業後には現実が待ち受ける子供に「夢を見せるだけ」との反発
そして、天才女子生徒に仄かな恋心を寄せるようになった男子生徒。
彼には、不良組織に加わっている兄がいる。
自分も手伝い的な行動をしていたのだが、組織に入らないと伝えると
それを許さない不良組織の手が、その女子生徒に伸びてしまい…。
あああ…
◇
と、まあ
メキシコの抱える 光と闇、それを描きながら未来への希望をも描き
出した作品。ひと言で言えば、そんな作品に思えました。
単純に面白いとか悲しいとか、それだけの内容では無いです。
くすっと笑ってしまう場面も多々あるのですが、終始表面には出て
こない奥のほうで、何か穏やかならざるものを感じてしまう…。
複雑な感情が交錯しながらの鑑賞でした。 …・_・;;
けれど、 観て良かった。
それは間違いないです。
◇あれこれ(登場人物に寄せて)
■フアレス先生
迷える導師。
生徒を導きたい想いに溢れているが、時には自分も導かれたいヒト。
校長室に乗り込んで何を言うのかと思ったら
” 君は正しい と言って下さい ”
” …… ”
” 君は意味不明だ ”
うーん そうなりますよね。・_・;
■ルペ
悩める哲学者。
現実を見ながら未来への扉を探す君のコトだから
回り道したとしても、学びたい気持ち揺らがない。きっと。
産まれたばかりの妹を抱きかかえ見つめる表情には、家族
への愛が感じられるただけではありませんでした。
きっと数年先の進学と、それまでに学べることを模索して実践
し続けるのではないだろうか。そう思います。
■バロマ
優しき天才。
学びたい。けれど目立ちたくない。
父を見捨てるなど考えられない。
ならば夢を諦めることは…できる? できない?
手作りの望遠鏡を作りながら将来への夢を観ていた少女の前に
現れた一人の教師が、希望の扉を開くきっかけをくれました。
■ニコ
悲しき不良(…の予備軍)
” どうすれば女の子の気を引けるの?…センセイ ”
気を引くどころか、パロマの永遠の記憶として心にに残りました。
間違いなく、君はパロマのヒーローだ。
■チュチョ(校長センセ)
この人を忘れてはいけません。・_・
最初はアタマの固い、古い考えの先生かと思わせておいて
次第にフアレスの影響をうけ、自分も変わり始める人。
もしかしたらこの先生も昔は、熱き志を抱いていたのかも。
◇最後に
作品を通して振り返ったとき、印象に残っているのが
「 子供たちのキラキラした瞳と笑顔の表情」です。
ルペもパロマも、他の子供たちもみんな輝いてました。
この子たちの将来が、より良いものになりますように。
そう願わずにはいられません。
◇おまけ ・_・ あら?
フアレス先生の中の人(?)
” フアレス先生、巻き舌の発音を教えて下さい ”
” 来る作品が違うようだが、まあ良い …こーだ ”
「あいのうた」でも熱血指導の教師でした。・_・♪
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。