劇場公開日 2024年12月20日

「子供が家で勉強していると親が止めさせようとする世界の話」型破りな教室 おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5子供が家で勉強していると親が止めさせようとする世界の話

2024年12月24日
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2011年、当時のメキシコにおける治安の悪さを象徴するかのように、本編のドラマとは関係なくずっと銃声や悲鳴が聞こえている作りで、今年公開の『関心領域』みたいと思ったが、『関心領域』と違うのは、この構造が物語後半の展開に直接関わってくるところ。

先生や生徒の台詞の中に、人生の教訓になりそうな哲学的な内容が多かった印象。
納得できることもあれば、それはどうかなと思うこともあった。

個人的に一番同意した部分は、学校の教師が「生徒に舐められたらダメ」というのに対し、主人公の教師・セルヒアが「僕とは正反対の意見ですね」みたいなことを言う場面。
昔あったCMの台詞で「教師は嫌われるのが仕事」というのがあったが、個人的にこの意見には反対で、まず教師は生徒から好かれて尊敬されることを目指すべきだと思う。
その方が教師の伝えたいメッセージが生徒に浸透しやすいと思うのだが。

やる気のない生徒が、セルヒア先生の型破りなやり方で授業に夢中になっていく場面は、2021年公開のデンマーク映画『アナザーラウンド』の授業シーンと比べると、説得力が弱かったように感じた。
というか、『アナザーラウンド』の授業シーンは、映画史に残る名授業だと個人的には思ってる。

両作共通のメッセージは「教師は生徒が興味を持つような授業をしろ」ということで、そこを否定する教師はいないと思うが、それって実はものすごく難しいことなのでは?
たぶん、そこそこ儲かっているお笑い芸人ぐらいの人を惹きつける能力が必要で、日本全国数万人の教師全員にそれを求めるのは厳しいものがあると思う。
努力すべきだとは思うけど。

本作のような映画でありがちなのは「通常の授業のやり方を全否定して、こっちのやり方が正しい」という見せ方。
子供は多様で、勉強のやり方の合う・合わないは人それぞれだ思う。
「セルヒア先生の型破りな授業」より「定番の授業」の方がやりやすい子供もいると思うので、今までのやり方を全否定するのではなく、こういうやり方もあるよ、ぐらいの描き方の方が良かったように思う。

この映画で不幸だと思ったのは、親が子供の勉強を否定してしまうこと。
子供が家で勉強していたら、日本だったら泣いて喜ぶ親ばかりだと思う。
親が子供を自分の所有物と思っているから、こういうことが起きるのかなと思った。
でも、自分の将来を楽にするために子供を作る親は、日本にも多い印象。

おきらく