「本作が作られた意義」型破りな教室 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
本作が作られた意義
IMDb、RottenTomatoesで評価がとても高い本作。やはりサンダンス映画祭における観客賞受賞は伊達じゃないのでしょう。これは必見だと言うことでヒューマントラストシネマ有楽町へ。会員割引を使って鑑賞です。公開初日の11時20分からの回はまぁまぁな客入り。
本作、「学校を舞台にした生徒と教師の物語」という古典中の古典であり、昨今においてこのジャンルにおける「実話ベース」というのも特に珍しいわけではありません。と言うことで、それなりに感動も期待できるだろうとは思っていましたが、観終わった感想は「低く見積もり過ぎていた」と思うほど心を動かされました。
なお、『型破りな教室(原題:Radical)』というタイトルも決して大袈裟には感じません。エウヘニオ・デルベスが演じるセルヒオ先生は「型破り」どころか「型を一切無視した」ユニークな教育方法を採用しつつ、常に生徒目線で考えて「大人の事情」を理由にすることが一切ありません。むしろ出来ることなら何でも実践しようとする熱意でいっぱい。とは言え、教師にとって学校は勤め先であり組織。当然、孤軍奮闘では限界があるのですが、就任早々、巧みな話術と強引すぎるくらいの行動力でチュチョ校長(ダニエル・ハダッド)を巻き込みます。勿論、チュチョ校長も始めは戸惑い、そして修正させようともするのですが、次第にセルヒオの本気と生徒たちの反応を目の当たりにし、遂には一番の理解者となっていっていきます。そんな二人のバディ感は最高で、見た目のデコボコ感も微笑ましい。
そして何と言っても、すべての子供たちの反応が本当に素晴らしい。セルヒオの突拍子もない授業に半信半疑で付き合い始めますが、間違えることに恐れず、自分で考えることで興味が広がり、どんどんと目が輝いていく感じが尊くて神々しい。特にメインキャラクターであるパロマ(ジェニファー・トレホ)、ルペ(ミア・フェルナンダ・ソリス)、ニコ(ダニーロ・グアルディオラ)が三者三様に「学業に集中できない事情」を抱え、そしてそれぞれの人生が待っています。そんな彼らが学ぶことに目覚めていく姿を観ていると、彼らの可能性を奪う環境に本気で強いもどかしさを感じますし、だからこそ、本作が作られた意義を深く理解することが出来ます。監督・脚本を務めるクリストファー・ザラ、素晴らしい仕事だと思います。
と言うことで、観る前の予想を大幅に上回った本作。今年は現時点で92作品目の劇場鑑賞となりましたが、その中でも上位の評価となりそう。傑作です。