白日青春 生きてこそのレビュー・感想・評価
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香港の名優アンソニー・ウォンを堪能する
香港の街を舞台に、孤独なタクシー運転手と難民の少年の心の交流を描いたヒューマンドラマです。その初老のタクシー運転手バクヤッを香港の名優アンソニー・ウォンが演じています。アクション映画「ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌」(1992)、ホラー映画「八仙飯店之人肉饅頭」(1993)、傑作「インファナル・アフェア」(2002)、そしてジョニー・トー監督「エグザイル 絆」(2006)などの数々の作品で、アクの強い独特な存在感を放ってきたウォン。近年は「淪落の人」(2018)で半身不随となり人生に絶望した中年男性を演じるなど、円熟味を増した演技を披露しています。
バクヤッは乱暴で無知で、自分勝手であり、衝動的で本能的に行動し、善意から悪いことをしてしまう男。ですが、悪人ではなく、多くの後悔を抱えて償いたいと思っており、そんな人間をウォンがリアルにユーモアを交えて演じています。ラストにバクヤッが下す決断は深い余韻を残し、新世代監督による第2の香港ニューウェーブの到来を決定づける1本ではないでしょうか。
変わりゆく香港を見つめて
変わりゆく香港で、変化を受け入れる気のないバクヤッ。息子から呆れられるのも頷けてしまう厄介さだが、ある事故を通してパキスタン難民の少年ハッサンを放って置けなくなる。孤独で不器用な2人のの交流は、分かり合える可能性を指し示す一方で過酷な現実も映し出す。
アンソニー・ウォンの男気
中国本土から違法移入して来た男が、パキスタンから香港へ来た難民を助けてカナダへ送ろうとするという、日本で暮らす僕には想像もつかない複雑な社会を彼らは生きている。『淪落の人』ではフィリピン人家政婦に手を差し伸べたアンソニー・ウォンが今回も主演というのも印象深い。
タクシー運転手と難民が出会って…
タクシー運転手と難民の話なんですが、
日本も他人事じゃない難民や移民の事を考えさせられます。
難民や移民の方の大変さが、ある程度は分かった気がする。
脚本が見事で、どうなる?どうなる?とハラハラさせられ、すっかり引き込まれて観賞。
あと、香港の街並みや裏路地など、香港の風景が好きなのですが、その点でも楽しめました。
予想の何倍も良かった。
多くの人に観られる事を願います。
それだけの価値がある映画だと思う。
白日おじさんとハッサン=青春くん
アンソニー・ウォンを見るためと、(話せないし文法も語彙も知らないけれど)広東語の響きを聞くのを楽しみにしていた映画。パキスタンからの違法移民と労働許可を得て働ける移民。移民の間にも格差がある。
ウォンの表情、セリフ、演技に10才のハッサンくんも負けていなかった。白フレームの水中メガネ、本当は近眼なのに。ハッサンは学校で青春という名前をつけて貰った。白日青春という詩があることを初めて知った:「日のあたらないところにも 生命力あふれる春は訪れる」
香港まで泳いで移民として入国した過去があり家族との辛い別れがあった男が、父母と別れ香港からカナダへ向かう少年の背中を優しく押す。アンソニー・ウォンが若い映画監督に映画の未来を託すように。
「白日不到處、青春恰自來。 苔花如米小、也學牡丹開」をググってから観よう
2023.3.19 字幕 京都シネマ
2022年の香港&シンガポール合作の映画(111分、PG12)
香港を舞台にして、不法移民と難民の衝突を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はラウ・コックルイ
原題は『白日青春』で袁枚の詩篇『苔』の一節、英題は『The Sunny Side of the Street』で「日の当たる表通り」という意味
物語の舞台は、香港のとある街
1970年代に中国から不法入国したチェン・バクヤッ(アンソニー・ウォン)は、息子・ホン(エンディ・チョウ)の結婚式に招かれていたが、その道中でシンガポール難民のアフメド(インダージート・シン)と交通事故を起こしてしまう
なんとか手続きを終えて式に来たものの、ホンは冷ややかな目線で父を見て、バクヤッは居た堪れずに会場を途中で抜け出した
ホンは警察官として勤務し、警視(ルイ・インジョン)の娘スー・ウェン(ツァオ・ユエン)と結婚していた
一方その頃、アフメドも友人ヌマンの結婚式に招かれていて、そちらもなんとか体裁を繕うことができていた
物語は、中国からの不法入国の際に親子関係が壊れたバクヤッ親子と、シンガポールからの難民一家が描かれていて、その起点が交通事故ということになっている
不法移民だけど親族が警察なのでお咎めなしになるバクヤッと、難民申請の絡みで動きが封じられているのに感情的になって全てを失ってしまうアフマド一家を描いていく
アフマドの事故死によって、妻ファティマ(キランギート・ジル)は、息子ハッサン(サハル・ザマン)を置いてカナダへ向かうことになる
そして、ファティマはハッサンをバクヤッに託すことになる
ハッサンは父を殺した相手とは知らないのだが、元々の盗み癖と後がない状況から、警官から拳銃を奪ってしまう
これによって、バクヤッも追われる身となってしまい、どうするのかという物語になっていた
映画は、袁枚の詩篇『苔』の一節から引用され、全文は「白日不到處、青春恰自來。
苔花如米小、也學牡丹開。」というものになっている
意味は「日の当たらないところにも生命力溢れる春は訪れ、米粒のように小さな苔の花も高貴な牡丹を真似て咲く」というもので、バクヤッ(白日)とハッサンの香港名「青春」が詩篇の中にある
ハッサンは希望で、バクヤッは彼がいる場所を示していて、希望を日のあたるところに届けるのが彼の役割となっている
バクヤッがどのような気持ちでハッサンに向き合っているかは何とも言えないところがあるが、事故死させたことに対する贖罪であると思う
彼は人生の道程において、もう先がないのだが、その最後の瞬間の光をハッサンのために使おうと考える
それは同時に息子の心を砕く結果になってしまい、ひとつの別れというものが描かれていく切ないものになっていたように感じた
いずれにせよ、本作の本懐を知るためにタイトルの由来である詩篇を知っている方がよく、しかも主要人物の名前に使われていることも知っておいた方が良いだろう
映画の冒頭、人物が登場する段階でそれがわかるようになっているが、集中していないと見逃してしまうかもしれない
白日はそれだけで「日が当たる」という意味になり、青春はそれだけで「春」という意味を帯びている
これだけを見ると物凄く明るくて優しい物語になりそうだが、本編はどちらかと言えばダークである
詩篇には「不」という言葉があって、それをどのようにして無くすかという物語になっているので、この「不」というものが物語の何にあたるのかを考えることが有意義であるように思えた
救われたのは誰か
孤独なタクシー運転手、アル中で息子との関係もギクシャクしていた。荒れた生活の中でおこしてしまった交通事故により1人の不法滞在の男が死んだ。事故の原因も完全に自分の保身のため。
けれど、亡くなった男の家族をみて自分のしでかしたことの大きさを知るのだ。1人でグレているだけなら誰にも迷惑はかからないが、自分のせいで不幸になる家族を目の当たりにして、助けようと動き出す。
その家の男の子は,たくましく生きていたけれど,当たり前のように悪い組織のに使われていた。救い出し,外国に送り出すまでの過程で,彼は人としての心を取り戻していく。少年を救っているようで,救われたのは彼だ。
話はここで終わるけれど、彼はこのあと,自分の息子や過去と向き合っていくだろう。身体はお酒でボロボロになっているけれど、豊かな最後になると思った。
これからの香港映画はどうなるのだろう?
香港を舞台にした三世代にわたる移民・難民の相克を描いた物語
主人公のバクヤッは、70年代に本土から海を泳いで香港に渡境してきて、今は初老のタクシー運転手。
一人息子のホンは警察官だが、父親にかつては本土に置き去りにされたこともあり、折り合いは悪い。同年代のパキスタンからの難民、アフメドは祖国では弁護士だったが、香港では10年待っても、正式な移民の許可は下りず、悶々とするうちバクヤッの車と接触し、事故に巻き込まれる。
アフメドの子、10歳のハッサンは、もはや香港に将来を見出すことはできないので、カナダへの渡航を夢見るが、現実は、窃盗団の一人として盗品を扱う日々。
この映画の良いところは何だろう。何と言っても、バクヤッを演ずる名優アンソニー・ウォンの存在感に尽きる。その源泉は、彼自身が香港民主化デモを支持したことから、大きな騒動に巻き込まれたことと無関係ではないだろう。
この映画のストーリー自体は頼りない。バクヤッは身勝手で、自分の息子やアフメドとも全く折り合うことはできなかったのに、なぜかハッサンは受け入れ、彼の渡航のために奔走する。いくら、ハッサンの父、アメフドの事故にかかわったとは言え。しかも、バクヤッは血清の肝酵素AST値が2,000で肝不全状態、再び息子の生体肝移植が必要だと言われ、消化管の出血もあるみたいだけど、平気でビールを飲んでいる。生きている間に、罪滅ぼしをしたいのか。
冒頭に、バクヤッの息子ホンが警察の高官の娘と結婚するところが出て来るけど、同じ時期に、アフメドの仲間のパキスタン移民が、インドネシアからの移民の娘と非合法で結婚する(この映画の監督も、マレーシア出身の香港移民とか、彼らは皆、イスラム教徒だ)。ただ、劇中、彼らの消息は聞かない。
97年に中国に復帰した香港や彼らの映画に将来はあるのだろうか。土地が狭く、労働力も限られていた香港では、移民・難民こそが活動力の源泉だった面がある。自由を失った香港からは、旧宗主国の英国や、英連邦のカナダやオーストラリアへ、多くの移住者があると聞く。移民第三世代であるハッサンたちには、香港はもはや北米等への移民中継地に過ぎないのかも知れない。映画にとっては、異文化と接することこそがエネルギーの源であることを忘れずに、あの素晴らしい香港映画を作り続けてほしい。
腹が立って仕方がなかった
取り返しのつかないこと、というのは確実にあって、後からどんなに反省したり後悔しても、どうにもならないものだと思う。
世の中にはあまり知られていない名作がまだたくさんあるんだろうな。
最近、以前は見なかったような映画を見る機会が増えて、心が豊かになっているような気がする。映画は偉大だ。
常時回送中?
香港のタクシー運転手とカナダへの移住を夢みる難民申請中のパキスタン人家族の話。
傍若無人に振る舞うタクシー運転手のおっさんが、命の危険を感じて移住してきた元弁護士のパキスタン人パパとトラブルになり巻き起こっていくストーリー。
序盤、アンソニー・ウォンで赤いタクシーで傍若無人ということでタクシーハンターを思い浮かべてしまったのは自分だけ?
あらすじ紹介には交通事故で亡くなるしか書いていないけれど、いやいやこれって…。
日本人の自分からしたら登場人物達みんな倫理観がずれていて引っ掛かるし、その後の主人公の行動にしても、相手への思いやりより自分の罪悪感を軽くしたいという思いを強く感じる。まあそこがスタートラインで割合は変化するけれど。
ハッサンにしても、育っている環境の悪さはあるにせよ、同情出来る感じがない振る舞いばかりで…。
そのおっさんもかなり胡散臭いとか余計なことが頭に浮かびつつも、ラストはまあ良い締め方だったかな。
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