梟 フクロウのレビュー・感想・評価
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見えないものが見える
人の心はかくも弱く、強いのか。
そしてそれは人の行動の細部に現れ、視覚を必要とはしない。
そう思えた映画だった。
人の五感の中でも意識的に記憶に残るものを
インプットしやすい ”視覚”
キリスト教では視覚が五感の中で優劣をつけると一番重要とされる
それがない世界で、人はどのようにものを感じ取るのか。
主人公は盲人である特性を生かしつつ、
見えないけれども”見える”ものを基に、謎を解き明かし、
時に危険な橋を渡り、そして罪を着せられつつも
生き延びて、最後にその集大成ともいえる行動を行う。
全てが繋がり、最後をみた時に、
それが「幸せな答え」ではなくても
「納得のいく答え」になる映画だなと思った。
言い訳の仕方を心得ている者
予想とは違っていたものの…
事前情報は、舞台が李氏朝鮮時代の話らしいということと、ポスターのインパクトあるビジュアルのみ。だから、てっきり「春琴抄」的な宮廷の悲恋物語か、「仕掛人藤枝梅安」の韓国版的なものと思っていたら全く違っていた。史実に残された不可思議な死に対する歴史ミステリ+特殊設定サスペンスといった風情なのだ。
盲目の天才鍼師ギョンスは、病気の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。しかし、ある夜、王の子の死を“目撃”し、恐ろしくもおぞましい真実に直面する。権力争いに巻き込まれ、追われる身となったギョンスは、それでも謎めいた死の真相を暴くために奔走する。
この秘密というのが、全盲ではなく“明るい所では見えないが、暗い所ではうっすらと見える”という特殊性。思いっきりネタ晴らししてるじゃないかと思われそうだが、この仕掛けがメイントリックというわけではない。むしろ周囲から盲目と思いこまれているが故に嫌疑を逃れたり、自分だけ夜目が利くことから危機を脱したりと、サスペンスを盛り上げるのに一役買っている。だからネタを知っていても面白さが損なわれることはない。「梟」というタイトルはそういう意味だったのか、と唸らされることだろう。
前半はギョンスが如何にして宮廷に呼ばれ、鍼師として重用されていくかという、いわば昼の世界。それが王の子の死を目撃してからは、ほとんどが夜の描写となり、観る者もギョンス同様サスペンスフルな闇の世界を体験することになる(暗闇だが、見せるべき所はちゃんと写すカメラワーク)。この明暗の使い分けがとても上手い。途中、真犯人の残した証拠品を拾おうと焦る場面も、ヒッチコックの「見知らぬ乗客」を彷彿させ、なかなかスリリングだ。
もちろんストーリーも、犯人の濡れ衣を着せられたり、善人と思われていた者が悪人だったり、誰が敵か味方か分からない裏切りと謀略の連続で二転三転。そして、クライマックスにおけるギョンスがとった行動と因果応報的ラスト。史実だけに覆らない部分は好き嫌いが別れそうだが、それでも上質のエンターテインメントであることは間違いない。
最初のエンドタイトル
の勇壮な感じと、柄本佑似の主人公の仲々踏み込めない感じがそぐわない。もう少し後日談をちゃんと描いてほしかったし、視えると解ってから結構ぐだぐだ。まぁ“卑しい者だから”と二の足を踏む感じは、珍しくて悪くなかったです。
面白い!
登場人物の区別がつかず、諦めて
これぞ韓国映画!
設定が見事!!!!
ナイスな設定、なるほどなーって。
こういうアイデアすごいよなぁ、韓国映画。
お話が秀逸。とっても面白いです。
「え?そんなことある?
後出しジャンケンじゃん?」
って思わなくもないですが、それを言ったら
つまらないです。そーいうことなんです!
ってことで観ないと楽しめません。
この設定が生むエアポケットを巧みに生かした
物語が絶妙なスリルを生み、予想できない
結末に導いてくれます。
ただ、ラストに向けては盛り上がるというより
バタバタと手早く店じまいしていくかのような
展開に物足りなさを感じた点と、THE 韓国映画
って感じのベタなラストの締めは残念。
ですが、そんなマイナスに感じた点には
目を瞑りたくなる快作でした!
おもしろい!
何故4年後?
一寸の虫にも五分の魂
「仁祖実録」の記述を元にしたサスペンス。
映画の始めに出てくる世子の死に関わる記載はものすごく陰謀臭い話で、これでサスペンス映画撮れそう、という発想が分かる。
韓国の時代劇を見たのは初めて。
衣装や調度、豪華でお金をかけたんだろうと思う。
主人公を盲人にしたアイデアが良く、それを上手く使っていた。
冒頭の、子供を背負って走る男性の描写がどこにつながるのかと思った。主人公は盲目ではなかったか? あんなに走っているのは別の男なのか、または盲人ではなかったのか。
冒頭からサスペンスの様相で引き込まれる。
主人公は病気の弟を抱えた天才鍼医で、前半は彼の出世物語風だが、宮廷に入ってからは陰謀渦巻くドロドロの権力抗争、ギョンスはなまじ腕が良かったために奥の一族に気に入られ、世子の人間性に触れて、傍観者でいればいられたのに敢えて渦中の当事者になってしまう。その恩に報いるために。
十分自分の「分をわきまえている」ギョンスは、絶えず葛藤するが、結局、自身の良心に従って行動する。自分と弟の身が一番可愛いのは当たり前だが見捨てられない。
誰が味方で誰が敵か、ギョンスがどう切り抜けるのか、伏線もありハラハラどきどきで、知らず知らず力を入れてしまい肩が凝りました。
盲人を「目撃者」としてどう信用させるかという面白さもある。
不審死するのがわかっているので、世子の人徳者ぶりが悲しくなる。
王が自分の地位を脅かすからといって実の息子を謀殺しようとする感覚に大きく違和感。主に中国に対する方針で意見が対立していたからというより、王の地位への執着がそうさせたよう。りっぱな後継者候補はライバルでしかないようだ。
私が日本人、というか家の存続第一という徳川家の統治に慣らされているからでしょうか。
命をかけた告発が握りつぶされ手を貸した世子の妃は汚名を着せられたまま処刑、残された皇子も島流し。そしてギョンス自身も、という騒動の結末がもやもやしたが、それで終わらせないからこそ、史実に出ないところを創作して見せるフィクションの意義あり。
仕事人だよね。韓国の梅安。
悲劇を未然に防げず、起きた後の復讐のみで結局もやもやが残るところも「仕事人」です。
偉い人たちには一庶民など虫けらのような存在だろうが、虫けらにもヒトとしての魂がある。侮るなかれ。
タイトルの「梟」、なるほどと思いました。
ぎょっとするようなキービジュアルで鑑賞に二の足を踏むにはもったいない一作
李氏朝鮮時代の政争を扱ったドラマ…、という内容以前に、名作ホラー映画『オペラ座 血の喝采』(1987)を連想するようなキービジュアルが強烈な作品です。しかし本編でこの場面は一瞬しか出てこないし、ホラー要素もかなり弱め(「ない」とは言わないけど)。「うわっ、怖そう(痛そう)…」という第一印象で鑑賞を見送ってしまうとちょっともったいないかも。というのも、本作は宮廷の政争を扱ったドラマとしても、盲目の主人公が限られた時間内で危機を潜り抜けていくタイムサスペンス劇としても、十分に楽しめる内容に仕上がっているためです。
物語の主筋は、17世紀の史実に基づいているため、その帰結は明らか…、というか冒頭でいきなり作中の重要人物の命運がわかっちゃうんで、「すでにゴールがわかっている物語の過程をなぞっていく」形で鑑賞を進めていくことになります。
しかし主人公は無名の鍼灸師で、しかも盲目のギョンス(リュ・ジョンヨル)であるため、ギョンスが降りかかる危機にどう対処していくのか、ギョンスと同様観客も手探り状態で状況に放り込まれた感覚を味わいます。ある程度帰結はわかっていても、サスペンスとしての緊張感は決して緩みません。
じゃあ鑑賞中は緊張しっぱなしかというと、特に前半部はちょっと滑り気味のギャグも含んでいて、劇場で笑いが起きるほどでした。こうした緩急の使い分けが実に見事な作品でもあります。
韓国の宮廷ドラマといえば壮麗な王宮やきらびやかな衣装の印象が強いですが、本作は夜陰に沈む御殿やかがり火に浮かび上がる貴族など、独特の映像美があり、それもまた本作を楽しむポイントとなっています。
シリーズ化を期待!
面白かった! 良質エンタメ
韓国宮廷もののドラマの雰囲気に興味がなかったので見る気しなかったが、レビューがよかったので鑑賞。レビュー通り面白かった!!
柄本さんにそっくりの主人公の盲人演技にまずグッと掴まれた。その後ちょっと滑稽なシーンだったり同僚の先輩がコミカルだったりくすっと笑える要素あり。緊迫だけでなくバランスが良い。音楽も良いし暗めの映像も綺麗。朝鮮の歴史をあまり知らなかったので勉強になった。やはり中国の属国で王位につくためには人民よりも中国を気にしないと生けなかった国なんだなと。ソ連の後ろ建てあっての北朝鮮とよく似てる。朝鮮の歴代の権力者で徳がある人はいないと言われる背景を垣間見た。日本は島で良かった。
物語の後半過ぎてタイトルの意味を理解。冒頭の描写もやっと繋がる。とにかく飽きる場面が一切なかった。
光と闇
仁祖王朝時代の世子怪死事件。
盲目の鍼師ギョンスが宮廷内の陰謀に
巻き込まれていく。
王朝内で仕える人々は見てみぬふりを
せざるおえない権力者の象徴と裏切り。
史実サスペンスながら疾走感溢れる映像美。
光と闇に翻弄されるギョンス。
暗闇の静けさの中駆け巡る姿は梟、そのもの。
最後、故郷の弟の姿を天に想像する
ギョンスの表情は切なかったが良かった。
涙腺も緩む。
凄まじい緊迫感があり、視聴者側も五感に
針を刺されたような麻痺状態に陥る。
見応えあるサスペンスキラー映画でした。
朝鮮王朝の闇に舞う一羽の梟
実際に起きた史実の中で架空の主人公が一人窮地に立たされ奔走する。17世紀、明清交替の時代、朝鮮王朝は清の軍による侵攻を受け(丙子の乱)降伏した後、人質となっていた世子が帰国するところから物語は始まる。
いまだその地位に固執する時の王仁祖は清の属国になり下がったことが受け入れられない。しかし朝鮮王朝が生き延びるには清に従うほかはない。息子であるソヒョン世子のそんな意見に耳を貸すどころか、自分の意に沿わぬ息子を毛嫌いした王は彼の暗殺を命じる。それは感染症を装って秘密裏に行われたはずだった。しかし、その暗殺を間近で目撃した一人の鍼医がいた。
ギョンスは優秀な鍼医ゆえに宮廷で仕えることができた。そして彼は盲人であった。だが、盲人といっても全盲ではなく、闇の中のかすかな光を頼りにものを見ることができる昼盲症であった。しかし周りはそれを知る由もなく、またそれはギョンスにとっても都合がよかった。
盲人であることから周囲は彼を蔑み、そして侮る。それはこの絶対君主制の時代において身分の低い者にはハンディでありつつも利点でもあった。盲人は権力者にとってはけして脅威にはならない、それ故に目を付けられることもない。卑しい身分の者がこの世界で生きていくそんな処世術をギョンスは肌で感じ取り身に着けていた。
実際、彼は女官の施術まで任された。盲人ゆえに女官も彼の前では躊躇なく肌をさらす。だからこそ彼は暗殺の片棒まで担がされることになる。
御医による暗殺を目の前で目撃したギョンスは世子嬪に真犯人を告発するが、王に刺した鍼の震えから黒幕が王であることを悟り、窮地に立たされることとなる。王がすべての黒幕であるならば、たとえ真実を訴えたところで黙殺され逆に抹殺されてしまう。絶対君主制の世ではそれは自明の理であった。
今までうまく立ち回ってきたギョンスは決断を迫られる。今まで通り見えないふりをしてやり過ごすのかあるいは。そして彼は生き残りをかけてそして王の陰謀を暴くために戦うことを決意する。
証拠となる王直筆の書面を手に入れたギョンスであったが、頼みの綱だった領相に裏切られてしまう。絶望の中、彼は王の面前で王の陰謀を暴露する。
結局、陰謀はもみ消され、世子嬪は自害を強いられ、子は島流しに。ギョンスもまた斬首の刑となる。しかし、なぜか彼は生き延びる。そしてその四年後、彼は王に復讐を果たす。
朝鮮王朝で起きた世子の謎の死。その史実に架空の人物である盲目の鍼医を創造し、見事な歴史サスペンスを創り上げた。
主人公ギョンスは架空の存在であるがゆえにその扱いはご都合主義的だ。だが、それでいいのだと思う。本来ならば彼が斬首されて終わるのが筋だ。しかし、そうとはせず彼を生かし、王に復讐を果たさせる。ここに作り手の強い思いが感じられた。
現実社会では今でも時の権力者に逆らい事実を告発することは難しい。人事権を握られた役人たち、忖度を強いられるマスコミ。みなが見て見ぬふりを強いられる社会。権力者は言う、有権者は眠っていろと、盲人であり続けろと。
それでも勇気をもって真実を伝えようとする人々がいる。昼盲症のギョンスは完全な暗闇の中では見ることはできない。暗闇の中のかすかな光を頼りにものを見る。現実社会社において勇気をもって真実を伝えようとする人々はこの世の闇を照らすかすかな光だ。そのかすかな光を頼りに盲人に成り下がってるこの世界の住人たちがものを見ることができるようになればいいと、そんな願いがこの作品から感じられた。
殺されるはずだった唯一の目撃者をあえて生かした作り手の意図はそんなところにあったんだと思う。
ちなみに本作の前日譚にあたる丙子の乱を描いた「天命の城」は韓国時代劇の中でも出色の出来で鑑賞を強くお勧めしたい。
2時間ヒヤヒヤしていました
予告を観て「面白そ〜」とも思い「韓国の歴史全然は知らないから、分かるかな〜」とも思いました。少し不安でしたがいざ観てみると歴史を知らなくても全然楽しめました!
前半の方は宮廷の日常のような感じで、それぞれのキャラクターの関係性が分かりました。前半の終盤ぐらいから、「あれ?なかなか面白い部分が始まらないな」と思ってきたぐらいで、一気に緊張感MAXに。
そこからはとても面白かったです。
特にポスターのシーンはめちゃくちゃ良かった!
ラストの終わり方もとても好きでした!
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