「これは目が離せない!」梟 フクロウ humさんの映画レビュー(感想・評価)
これは目が離せない!
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さすがは韓国映画だ。
テンポのよさと美しい映像。
ふと笑わせ次の恐怖で襲う。
予測を超える展開でみるみる引きずりこむ。
想像だけで鼻腔に張り付く薬草の混じる香り。
仄暗い空気は緊張を引き立てる。
その芯の部分をすいすいと渡る研ぎ澄まされた感覚が極まり人間の心の内を見抜く眼力となったのだろうか。
盲目のギョンスに備わっているものを役者、カメラ、照明、音楽が一体となって観客に体感させる。
腕を見込まれ宮廷内医院に引き抜かれたはずのはり師の彼が巻き込まれる陰謀の世界。
その勘はすぐに秘められた悪意に気づく。
何としても病の弟を助けるために生きて帰ろうとしながらのまれていくギョンス。
そんななか弟と同い年の若殿(世子の息子)の運命を動かすことになるギョンスと世子とのやりとり、胸を突く会話がある。
そこでみえる二人の人柄、身分は違えど重なるのは選べぬ運命、近しい人に見くびられ裏切られる悲しみ。
裏切りの全貌が見え始めるとようやく反撃の時を睨むギョンス。
そして度々のピンチに揺らぐ時、杖に結ばれた兄弟の絆が彼を奮い立たせる。
鳥肌級に訪れる渋いラストに貧しい盲目のはり師が問う〝人〟としての言葉。
誠意なしには必ずしも頂点は万能に見通せる場所ではないのだと、安穏と権力に君臨する者へのとどめが静かに響いていた気がする。
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