劇場公開日 2024年5月24日

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「【さらば】してカムバックしても許されてる空気なのは流石アブデカ」帰ってきた あぶない刑事 木神さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 【さらば】してカムバックしても許されてる空気なのは流石アブデカ

2025年7月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

単純

U-NEXTで鑑賞。
正直『さらば宇宙戦艦ヤマト』の前例がある以上、カムバックしそうとは思ってたが実際に「帰ってきた」らやっぱツッコミたくなる。でもそれ含めて“アブデカ”らしさでありシリーズを通して貫いてきたあの軽妙な空気とハードボイルドの絶妙なバランスが、今回もちゃんと息づいていた。

OPでは昭和と令和、二つのスタイルが流れ、時代を超えたカッコよさが交差する。テレビ版でお馴染みのBGMが流れると世代ではないが作品が築いてきた“空気”に一気に引き込まれる。

前作でニュージーランドに移住したのに現地で暴れすぎて出戻るのは“らしくて”笑えるし二人を追って現地まで来た薫(浅野温子)をほったらかしなのも“相変わらずで安定”のギャグ要員だがそこがいい。ところで横浜に居を構えたオシャレすぎる探偵事務所、金どこから出てんだ問題はあるが、まぁ退職金か海外稼業がうまくいったんだろうと好意的に解釈。

敵役は、映画第3作『もっともあぶない刑事』で登場した銀星会の組長の息子。権力に固執し、神経質で危なげな雰囲気がしっかりと遺伝していた。意外にも本作はアブデカ映画で初の過去作とリンクするのだが、まぁ見てなくても大丈夫。

70代にして走って殴るタカ&ユージ。流石に動きにキレはなく、若くてガタイのいい敵の傭兵にボコボコにされてしまうが無理もない。でもその姿が自然であるし、だからこそ探偵という立場ゆえに発砲できない状況が続いてから満を持してシャンデリアを撃ち落として新米刑事を救うイケジイぶりが一層カッコよく見えるのだろう、銃をぶっ放せばまだまだ暴れられる爺さん二人であった。

本作で一番の盛り上がり所は刑事時代のリボルバーやショットガンでフル武装し愛車レパードで決戦の場へ乗り込む二人の一連シーン。お約束のハーレーに乗りながらのショットガン連射もしっかりこなしファンの期待へ応え、 立ち込める煙の中から走り抜けつつのタカと排莢され宙を舞う薬莢が同時に映るスローシーンはまさに"あぶない刑事らしいカッコよさ"を体現していた。

ただしアクションは全体的に抑えめ。カーアクションも序盤と終盤に限られ、ドンパチもラストでようやくといった塩梅。この辺りは令和の映画としての落としどころを意識したのだろう。それでも、控えめながら見せ場はきっちり押さえてくるあたり、やっぱり心得ている。

今作のヒロインは「二人のうち、どちらの娘なのか?」に焦点があてられていたが、結局は明かされず。それが逆に、作品らしい余韻を残してくれる。若い頃の再現シーンはハリウッド技術を用いたVFXで再現され、違和感なく仕上がっていたのも評価点。

後輩のトオル(仲村トオル)も、今やベテラン俳優だけに風格がある。けれどこのシリーズに戻ると急にお茶目な一面を見せてくれて、あの頃の空気感が一気に蘇る。彼の「近藤課長のモノマネ」にビビるタカ&ユージというレアな構図には、かつて二人に憧れていた若者が責任ある立場に就きそれに見合う貫禄を備え、彼らとはまた別の“カッコよさ”を確立したように見える。

そして最後は、テレビ放送時代と同様に薫の一言で締める。都合よすぎる舞台装置と思いつつも“らしさと定番”はアブデカの強みだろう。

前作まではもう出ないと思っていたが今は違う。何故ならあぶない刑事は主役2人にとってライフワークであり若さの秘訣なのだろう。もう動けなくなるその時まで、やり続けてほしい。一度「帰ってきた」のなら何度でも迎えてしまう心構えは出来てしまった。

木神
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