「どう解釈したら良いか悩む宗教映画なので、心して鑑賞した方が良いかもしれません」FEAST 狂宴 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
どう解釈したら良いか悩む宗教映画なので、心して鑑賞した方が良いかもしれません
2024.3.7 字幕 アップリンク京都
2022年の香港映画(104分、G)
フィリピンのマニラ郊外カパンパンガンを舞台にした「交通事故」を巡る加害者家族と被害者遺族の交流を描いたヒューマンドラマ
監督はブリランテ・メンドーサ
脚本はアリアナ・マルティネス
原題は「hapag Kainan」の略語でもある「Apag」で「食卓」という意味
物語は、カパンパンガンにて「高級レストラン」を経営しているアルフレッド(リト・ラピッド)と、その息子・ラファエル(ココ・マルティン)が市場で買い物をしている様子が描かれて始まる
そこには、貧乏家族の主人マティアス(カルロス・キャンラス)と娘・キャット(フランゼン・ジェルロ・トレンティーノ)も来ていたが、高騰する価格から満足に買えていなかった
その後、マティアスはバイクで家に向かい、その後ろからラファエルが車で店へと向かっていく
ラファエルには離婚した妻・シェリー(シャイナ・マグダヤヨ)との間に娘・アデリーヌ(ラブリー・エンリケズ)を授かっていたが、今はほとんど会えない状況になっていた
運転中にシャリーから電話を受けたアルフレッドは、娘の声を聞かせるためにスマホを渡そうとするが、その瞬間、前を走っていたマティアスが急転回し、ブレーキをかける間もなく衝突してしまう
バイクは大破し、二人は道路に投げ出されて大怪我を負っていた
ラファエルはパニックになり、あろうことにもアルフレッドが運転を変わって、その場から逃走してしまうのである
物語は、アルフレッドが妻エリース(ジャクリン・ホセ)に打ち明け、弁護士を介して話をつけようとするところから動き出す
弁護士は「自首して、被害者にできるだけのことをしてから来い」と門前払いをし、ラファエルは彼らの治療費を払いに病院に向かうことになった
娘の方は無事だったが、マティアスの方は意識不明の重体で、治療費を払えない妻ニータ(グラティス・レイエス)は、やむなく生命維持装置を外す決断を強いられてしまうのである
映画は、アルフレッドがラファエルの身代わりをして出頭し服役する様子が描かれ、そんな中で被害者遺族への補償として、レストランで雇い入れる様子が描かれていく
ニータは従業員たちと打ち解けあい、仕事も勤勉にこなしていくので、エリースとの関係も良好になっている
だが、身代わり出頭をさせて、罪と向き合っていないラファエルは精神的に追い詰められ、教会に行って懺悔をしたりしても、何一つ心が晴れない
そうして、ラファエルはニータに本当のことを話すことになるのである
映画は合計4つの章に分かれていて、第1章は「ローマ人の手紙 14:21」、第2章は「詩篇 147:9」、第3章は「箴言 15:17」、そして第4章は「ルカ 14:13」となっていて、最後に「ルカ 12:23」で締められている
英語と字幕が画面いっぱいに登場し、読んでいる間もなく通り過ぎ去っていくのだが、いわゆる寓話として映画は構成されているようだった
贖罪をいかにして果たすかという命題の中、神に告白してもダメという内容になっていて、直接言葉をかけて償う以外に方法がない
そんな中で、アルフレッドの出所祝いのパーティーが開かれるのだが、その食べ物に「毒が入っているんじゃないか」と思わせるような雰囲気を醸し出している
そういった経緯を踏まえた上での「いのちは食物よりまさり、からだは着物にまさっている」という言葉が示されているので、ラファエルの罪は赦されたというふうに解釈しても良いのかな、と感じた
いずれにせよ、ポスタービジュアルだけの情報だったので、ホラー映画なのかなと思って観てしまっていた
ホラーというよりはスリラーのノリに近いのだが、本質的には宗教映画であると思う
パンフレットもないので劇中引用の文言の解説がないのが辛いところで、その方面に詳しい人なら本質に切り込めるのではないだろうか
あとは思いっきりフィリピンが舞台なのに香港映画というところがよくわからなかったが、その解説を探すのも難航しそうな映画のように思えた