「かくほ長き不在の、言い訳を!!」瞳をとじて 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
かくほ長き不在の、言い訳を!!
寡作・・・そして、
31年ぶりの新作映画は169分の長編。
確かに長い。
凄く退屈したか?と言われるとそうでもないが、
5回に小分けして30分毎に小休止を入れていたので、
映画館で観てたらどうだったのかは、分かりません。
ただ主役のミゲル役のマノロ・ソロさんが、素敵な初老の男性で、
役所広司を3時間見ていても苦痛でないと同様に、イイ男。
あとは詩的なフレーズや装置・音楽が80歳過ぎの監督、
ヴィクトル・エリセさんにしては若々しくて、
小洒落てるんですね。
最初に描かれる未完の映画「別れのまなざし」
この映画のテーマである、主演俳優のフリオが完成を待たずに
失踪したことにより頓挫。
ミゲルの監督キャリアも終わってしまう。
このたった2本の映画を撮って、引退したミゲルは、
ヴィクトル・エリセ監督の分身で、このミゲルに、
撮れなかった長い言い訳を担当させて、
「それから・・・執筆、釣り、野菜園、やってました的に、」
失踪したフリオも監督の分身ですね。
ただ惜しいと思ったのは、ミステリー仕立てなのに、
フリオが失踪した理由が結局は有耶無耶。
(実は、政治的にスペインは弾圧とかもあったけど、
スペインから積極的には出ない道を選んだのでしょうね)
もうひとつ、これも非常に残念なのですが、
フリオ役のホセ・コロナドの容姿が冴えない。
女がほっとかない美男で、女が振り返る男・・・何でしょ!!
最初のフィルム「別れのまなざし」のどの人なのか?
わかんなかったもの。
ユダヤ人富豪を特殊メイクで演じてるのか?
とか、まさか冴えない「娘探し」を頼まれる中年男‼️
だとは思いもしなかった。
その位冴えない男です。
(ルッキズムだけど、俳優なら仕方ないのでは、)
最初と最後に「別れのまなざし」を持ってきた。
これは監督が一番に観せたかったんでしょうね。
ラストの映像には、ユダヤ人の富豪の娘が登場して、
かなりセンチな演技を見せるけれど、私的には好きなシーン。
チャオ・シュー(ベネシア・フランスコ)可愛かった。
「ミツバチのささやき」のアナ・トレントの出演。
ミゲルのギターと歌、
お留守番してる黒犬のカリ。
エンディングのヤヌスの二面像
(過去と未来をそれぞれ見てるとか、)
どれもなかなか。
政治色が皆無なのも、意図したことでしょうか?
映像での遺言状とでも言いましょうか、
そんな作品を残せるのも幸せにことですね。