「フェルメールの絵が優れていることが、ほぼすべて。」フェルメール The Greatest Exhibition アート・オン・スクリーン特別編 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 フェルメールの絵が優れていることが、ほぼすべて。

2025年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

唯一の難点は、知っている絵が多い人は、眠くなることぐらいか。
23年にアムステルダム国立美術館で開かれた大回顧展の機会に製作された。何しろ、偽作疑いも含め世界に37点のみのところ28点が集められたというからすごい。その絵の前で、美術館の部門責任者やら評論家やらが、一点ずつ判りやすい英語で説明してくれる。
映画を観て、新たに知ったこと:
・17世紀のオランダでも少数派であったカトリック、特にイエズス会との結びつきが強かったこと
・比較的若い頃から、裕福なパトロンの夫妻がいて、絵も買い上げられていたらしいこと
・描いた絵画の数自体が少なく、その8割前後が、残されているらしいこと、しかし、スケッチ等は全く残っておらず、絵をみて判断せざるをえない、それだけフェルメールを再発見した人は偉かったことになる
・彼にとっての晩年は、当時のオランダの経済状況を反映して困窮だったようだ
絵を観ていて教えられたこと
・十分な製作期間を与えられたこともあるのだろう、構図などを考え抜いて、後から加筆していた
・同じ構図、モチーフが使われていたことは知っていたが、同じ毛皮付きの豪華な衣装が何度も出てきた
触れられなかったこと
・最初期の宗教画や歴史画、あるいは、最晩年の教訓が多い絵を除くと、遠近法の中心と、実際に目が行くポイントが、微妙にずれていることを教えられてきた。しかも、ソフト・フォーカス。例えばルーブルにある「レースを編む女性」では、私たちの視線は、最初、女性の眼に行くが、絵としての中心はレース針の先、絵を見ている人の視線は、女性の眼からレース針の先に移り、それだけ絵の内側に入り込むことができる。それは出てこなかった。一部の絵にしかあてはまらないためか。
日本で開かれた展覧会では、人に押されて絵の前を行き過ぎるだけだったところ、絵の前で、心行くまで楽しめる喜び。

詠み人知らず