「京都の実在のカフェを舞台にしたヒューマンエンタメドラマ」事実無根 nadさんの映画レビュー(感想・評価)
京都の実在のカフェを舞台にしたヒューマンエンタメドラマ
場内からクスクスと忍び笑いや鼻をすする音が聞こえるような誰もが楽しめるエンタメ映画です。物語の中心となるバイト役の東茉凜さんの演技にとても好感を持ちました。謎が紐解かれるにつれ登場人物の関係性が劇的に変わっていくところが見どころの一つなのですが、彼女が見せるバイト初期のかしこまった(バース並みの大型新人)態度から、最後の慣れたというより少しスンとした態度の変化に(ありえないような展開なのに)リアリティを感じました。
少しネタバレになります。「大豆田とわ子と三人の元夫」を彷彿とさせる群像劇にストーリーは展開していきます。大豆田とわ子〜は妻が世界の中心なのに対して、本作は娘が中心なのですね。だからなのかは分からないのですが、さっぱりとした描き方・後味の良さにも関わらずなんとなく居心地の悪さを私は感じてしまいました。
妻(母)の心象描写が(主要なテーマではないのでしょうが無いですが)不十分な一方、2人の夫(父)の心象描写を丹念になぞっていました。しかし、ここに「一方的さ」というか、妻子不在の「都合の良さ」を感じてしまったのです。監督・脚本家が理想とする情けないけど憎めない男性目線の父親像を押し付けられているような。。。穿った見方で申し訳ないです。
とはいえこれは私がもともと「日常から思うようにならない小さな心の変化に気づく等身大の物語」なのだろうと勝手に想像していたからなのであって、実は笑いあり涙ありのヒューマンエンタメドラマだと考えれば設定にいちゃもんをつけるのも野暮というものでしょう。
さて、映画館に来ていたお客さんはシニアの方々がほとんどでした。おそらく新聞や雑誌が周知の役割を担っていたからなのかなと想像しました。若いお客さんが多いであろう「そのうちcafe」に今後しばらくはシニアの方の来店が増えるかもしれませんね。